2:私の皮算用
「ファイア――――ッ!!! ぼうる」
拳サイズの火の玉はふわふわと歩くスピードで漂うと、的の前で横風にヒューと吹かれて消えた。
……。
「……まぁ、掛け声は良いんじゃないかな? 『ファイアー』って所なんか、声の張り具合は大賢者様のようだったし……あ、そうだった。修理に出してた剣を取りに行かないとだった! ごめん! そういうことだから、パーティメンバー探すの頑張れよ――――ッ」
そう言って、私と同い年ぐらいの格闘家っぽい冒険者はギルドの練習場をあとにした……。
街を引っ越して二週間が経ったというのに、未だにパーティメンバー募集中である。
他の冒険者が貼りだす、パーティメンバー募集中の貼り紙は彼が最後だったのに……。
練習場で居合わせた冒険者たちも、私と目を合わせようとしない。
そりゃ……採用しなかった雑魚い魔法使いが、毎日のようにパーティメンバー探してる姿を見ればそうなるよね。
とりあえず……新しい募集が出るまで、適当にクエストこなして食つなぐか。
ギルドの練習場をあとにして、ギルド内の掲示板に向かった。
張り出されたクエストはどれを見ても、魔法少女に変身すれば三分もかからないで終わりそうなものばかり……。
ジャッジアイズボアの討伐がドクロマーク八つの難易度って冗談でしょ……。
あんなのただ牙が生えた豚じゃん。
……あ。でも、駆出し冒険者は緊急じゃない限り、ドクロふたつまでのしか受注できないんだったか。
「……これでいいか。あっ」
取ろうとしたドクロ半分の張り紙が他の人と被ってしまった。
内容は『飼っていたカナリアのぴーちゃんを見つけてください』というもの。
危険度はないが、ほぼ見つかることは無い年中張り出してる系のクエスト。
だいたいが他の生き物のエサになって、この世にはいない……。
だが、飼い主さんはそれでも信じたいのだ。生きて、この世にいることを。
「あ、ごめんね~。被っちゃったね、ごめんごめん。良いよ、あなたにあげるそのクエスト」
「……でも」
私と同い年ぐらいだろうか。身軽な装備は盗賊っぽい。
「いいのいいの! どうせ、アタイには見つけらんないだろうし……今も生きてる保証なんか。あッ、ごめんね変なこと言っちゃって。頑張ってね! 応援してる!」
「…………行っちゃった」
だが、私はこの年中張り出してる系クエストがどんなクエストよりも大好きである。
報酬は金持ちしか依頼に出さないから、ドクロ五つのものと遜色ないし……。最悪、骨の一本でも残っていれば蘇生させられる。
「うひひひひひひひ。新しいローブ買っちゃおうかな……いや、お財布にしようかな……」
手にした依頼書で顔を隠すが、私の皮算用はしばらく湯水のように溢れ出すのだった。




