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7th.幸福の光(ブリス・ライト)

外に出た法堂達は、かなり走ったのか(潤以外)全員息を切らしていた。



「何だよ、みんなだらし無いなぁ。」



潤は法堂達を見てそう言った。



「あっあのですね、陸上部の潤はともかく、他は文化部と、帰宅部なんですから、当たり前ですわ。」



息を切らしながら、歌音は潤に反論した。



「そっそうだけど…、ってか先生まで息切らしてるし。しっかりしてよ先生。」


「おっ俺は、忙しいから、運動する、暇なんか、ないんだ。」



息を切らしながら法堂も反論した。



「そんな事より、あの女の子をどうにかしないといけないんじゃないのか?」



「それは分かってる。けど、あいつを倒すなら、あいつの正体を見破らなきゃいけないのよ。」



因幡は法堂を見ながらそう言った。



「ああ、それなら…。」



と、法堂は途中で言うのを止めた。



ズズッと、邪悪な気配を察知したからだ。



『やっと見つけたぞ。』



全員声のした方を振り向いた。



そこには、法堂達を探し回っていたせいか、息を切らしながら少女が突っ立っていた。


「もう追いかけてきたの。」



数葉は顔を青ざめながらそう言った。



『貴様ら、絶対に許さない!!我をまいた事を後悔させてやる!!』



そう叫んだ後、少女はさっきより大量の魚を出してきた。



「また魚ぁー。」


数葉は降り注ぐ魚の中、涙目になりながらそう叫んだ。



「ちょっと待ってて下さい。」



百合子は、制服のブレザーの懐から、札をいくつか出した。


「はっ!!」



そう叫ぶと同時に、百合子は上に札をばらまいた。



すると、法堂達がいる場所に結界のようなものが張り巡らされた。



『なっ!?』



少女は、突然自分が出した魚が弾かれるのをみて絶句した。


「ナイス百合子。これなら魚が防げる!!」



潤は張り巡らされた結界を見てそう言った。



『くそっ!!』



自分の攻撃が聞かない事に対して、段々苛立ちを募らせていた。



「喜んでばかりではいられませんよ。この結界は、もつとしても2分いくかどうかぐらいです。その間に、何か策を練らねばなりません。」


百合子は冷静に説明をした。



「策っていったって、あいつの正体を見破らないと。」


因幡は少女の方を見てそう言った。



「魚だ。」



「えっ!?」



法堂が突然そう言ったので、全員法堂の方を振り向いた。



「魚って、あれが?」



潤は、少女の方をちらっと見ながら法堂にそう聞いた。



「そう。あの子は、元々生物室にいた。生物室は、当然生物の授業の時に使われるだろ。」



「そうだけど…。」


数葉はそう答える。


「生物の授業の時、魚を使った実験が行われる。」


「それって…。」



「魚の解剖ですわね。」



歌音は落ち着いた口調でそう答えた。



「そう。恐らく、魚の解剖をし終えた後、粗末に捨てられた事に対しての怨念が具現化したのが、あの子の正体だ。」



全員、法堂の話を聞いて、唖然としていた。いろんな意味で…。



「じゃああの子は、魚の怨念のカタマリって事?」



法堂の話を一通り聞いた数葉は、顔を少し青ざめながら、法堂にそう聞き返した。



「そういうこと。」


「なるほど…。それなら話は簡単ね。あいつの中に潜んでいる怨念を浄化すれば、あいつは消えるわ。」



「そんな事できるのか?」



法堂は因幡の話を聞いて、驚きながらそう尋ねた。



「ええ、あいつに幸福のブリス・ライトっていう光をを当てれば…。」



そういうと、どっから取り出してきたのか、白いカートリッジのような物を手に持っていた。



そして、何やら銃から似たようなカートリッジを取り出して、新たに白いカートリッジをセットした。



「もうすぐ結界が切れてしまいます。」


百合子は、消えかかっている結界をみながらそう叫んだ。



「ヤバイよ!!」



数葉は百合子の言葉を聞いてあたふたしていた。



『やっと出てきたか。我怨みと共に、貴様らを魚の生き埋めにしてやる。』



そう言うと、少女は両手を頭上に上げた。



「ちょっと、あの子さっきより大量の魚を出してくるんじゃない。」



数葉は少女の事を見ながらそう言った。


「あの子は俺がなんとかする。俺が合図をした時に、君はその銃であの子の顔を撃ってくれ。」



「何で顔なのよ。」


「いいから。」



「っ、分かったわ。」



因幡はそう了承すると、一歩引いた所でスタンバイしていた。



「先生、そういう事ならあたしも手伝うよ。」



潤は法堂にそう言うと、一歩前に出た。


「あんた、魚の怨念だか何だか知らないけどな、勝手にあたしらを怨みの対象にすんじゃないよ!!」



潤は怒りながら少女にそう言った。



『うるさい。貴様に何が分かる…。食べる訳でもなく、使い終わったらゴミと一緒に捨てられ、それを何回も繰り返す。我だって生きてるのだ!!粗末に捨てられる気持ちを、貴様らごときに理解できるものか!!』


少女は、自分の中に貯めてあった思いを、痛切に法堂達に訴えた。



確かに、魚とて生きてる。肺呼吸だエラ呼吸だのは関係ない。どんな生き物だって、粗末に扱われるのは嫌なのだ。



『だから…、だから…。』



とその時、法堂が一歩前に出て、口を開いた。



「確かに君が言ってる事は正しい。魚だって立派な生き物だ。それを粗末にしてはならない。」



『そうだ。だから我はこうして怨みを…。』



「けど、君がやってる事は、魚を粗末にする連中と一緒だ。」



『なっ何を言っている。我が奴らと同じだと…。違う!!我は奴らのように、魚を粗末になど…。』



「じゃあなぜ、俺達を襲うのに魚を使った!!」



ビクッと、法堂の言葉に少女は肩を震わせた。



因幡達は法堂と少女のやり取りを黙って見ていた。



「魚を粗末に扱われるのが嫌だったのなら、どうしてこんなふうに魚を使って攻撃をするんだ。魚は人を攻撃するための道具じゃない。それは君が一番分かっているはずだろ!!」



少女は黙ったままだった。両手は相変わらず頭上にある。



『…さい。…るさい。』



少女は両手を頭上に上げたまま何やら呟き始めた。



『…るさい。うるさい。うるさい。黙れぇー!!』



そう叫ぶと同時に、少女は俯いていた顔をバッと上げた。



「今だ!!」


法堂がそう叫ぶと同時に、因幡は持っている銃を構えて、少女の顔へと向けた。


「はぁぁぁー!!」



そう叫ぶと同時に、銃の引き金をおもいっきり引いた。






バキューンという音と同時に、白い光が少女の顔へと当たった。



『うがぁぁぁぁぁ!!』



かなりの威力があるのか、少女は悲痛な叫び声をあげながら、光をもろにくらっていた。



因幡は少女にずっと白い光を当て続けた。



その時、法堂は少女の体から、どす黒いオーラがだんだん消えていくのが見えた。恐らく、あれが怨念の正体だろう。





「っこいつ…、意外にしぶとい。」



因幡は怨念の浄化に悪戦苦闘していた。



「頑張って、因幡!!」



隣にいる数葉は、因幡に声援を送った。


『アァァァァァー』


「くっ!!」



だんだん因幡の顔は険しくなっていく。


法堂は、少女の方を見た。



さっきより、明らかあの子の怨念が消えつつある。だけど、それに比例して彼女のオーラも減ってきている。これじゃ、あの子の怨念を浄化する前に、彼女がダウンしてしまう。



法堂は少女と因幡を交互に見ながらそんな事を考えていた。


法堂は因幡をちらっと見た。



因幡はもはや肩で息をしている状態だ。


「因幡。しっかりしろ!!」



潤はそんな因幡の様子を見て、声をあげて声援を送った。



このままじゃ、ぶっ倒れる所じゃ済まないぞ。



因幡の事を心配しつつ、法堂は何か手助けできないかと考えていた。



とその時、因幡の体がフラッとふらついた。



その為、光が少女の顔から下にズレてしまった。



「柏木!!」



法堂は思わずそう叫ぶと、因幡の体をがっちりとキャッチした。



「大丈夫か。」




「えっええ。ありがとう。」



因幡は顔に少し汗をかきつつ、法堂に礼を言った。



とその時、



ポォォーっと、因幡の銃が光り出した。


「なっ何これ…。」


因幡は自分の銃を見ながら唖然としていた。



法堂や潤達も、突然の事に目を見開いている。



そして、さっきより光が強まり、因幡や因幡を支えている法堂は目を細めた。




次第に光が弱まり、そして光が完全に消えると、因幡の銃が、黒から白へと色が変わっていた。また、銃口の部分に象られている十字架が赤から青へと変わった。



「なっ何でいきなり…。」



因幡は目の前で起こった事に、目をパチクリさせていた。



それと同時に、因幡は底から力が戻ってくるのを感じていた。



法堂は自分の目でそれを確認した。



「力が戻った…。よし、もう一回!!」



因幡は法堂から離れた。



色が変わった時に当てていた光が消えてしまったので、再び光をしっかりと少女の顔へと解き放った。



すると、さっきよりも強い光が少女へと注がれた。



『ウガァァァァ!!』


少女は、さっきよりも大きな叫び声をあげた。



すごい。さっきよりも、あの子の怨念が弱まるのが早くなってきている。これなら…。



法堂は、色が変わった銃の威力に関心しながらそう考えていた。







そして…。








バンッと、黒い物が弾き出され、少女は叫び声と共に白い光に包まれた。




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