4th.可愛い娘
「きっ君は…。」
法堂が捉えた姿は…。
「G‐クラスの柏木因幡。」
生徒会副会長である柏木因幡が、木の影に隠れて座り込んでいたのだ。
「なんでここに…。」
予想外の人物がいたため、法堂は驚きを隠せずにいる。
「先生こそ、驚いた顔してどうしたんですか?」
因幡は少し冷や汗をかきながらそう聞き返した。
「いや…。それより、ここにさっき誰かいなかったか?」
「さぁ?私さっきここへ来たばかりなので…。」
「そっそうか。邪魔して悪かったな。」
それじゃっと言うと、法堂は桜の木の方へ戻っていった。
因幡はそんな様子をしばらくじっと見た後、ふぅっと一息ついた。
「危ないとこだった。予想以上に鋭いわね、あいつ。」
法堂は廊下を歩きながら考え事をしていた。
あそこには確かに誰かいたはず…。となると考えられるのは、柏木因幡が俺を見てたってこと。だとしたら、何のために?
法堂は首をブンブンっと横に振った。
教師である俺が、生徒を疑うようなまねをしてどうする。このことはさっさと忘れよう。そう決意する法堂であった。
法堂は職員室に入ると、真っ先に自分の机に座った。
「何だかお疲れのようだな、先生。」
隣に座っていた井森が、法堂の様子を見てそう言った。
「はぁ、ちょっといろいろあって…。」
「大丈夫か?」
「はい、たいしたことじゃないんで。」
「そうか、ならいいんだけど。それより、先生今日の夜暇か?」
井森は突然そんなことを聞いてきた。法堂はとりあえず「はい、一応。」と答えた。
「じゃあ悪いんだけど、 巡回当番代わってくれないかな?」
「えっ、どうしてですか?」
「実は今日、娘の誕生日でな。なるべく早く帰って一緒に祝ってやりたいと思ってな。」
「井森先生、娘さんがいらしたんですか!?」
法堂は井森に娘がいることに驚きを隠せずにいた。
「ああ、今日でめでたく5歳になる可愛い娘だ。写真見せてやるよ。」
井森は自分の鞄から携帯電話を取り出すと、携帯を開いて娘の写真を法堂に見せた。
そこには、ぬいぐるみを抱いた幼い女の子が、ピースをしてかわいらしく写っていた。
「へぇー。可愛いですね。」
「だろ!!名前は華恋っていうんだ。」
井森は自分の娘を自慢げに話していた。
こりゃかなりの親バカだなと、井森の様子を見てそう思った。
「そういう事だったら、喜んでお引き受けしますよ。」
「そうか。ホントにすまないな。それじゃ、俺そろそろ体育の授業の準備しなきゃなんないから。」
じゃあと言うと、井森は職員室から出て行った。
巡回かぁ…。井森先生の分まで頑張らないとな。
法堂はそう意気込んだ。
今回は少なめでしたね。
次回、とうとう彼女達が動き出します。