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17th.Blanc Pierre

「はあっくしゅん!!」


法堂は突然大きなくしゃみをした。


「どうした先生。風邪か?」


隣にいる体育教師・井森は、法堂の事を心配した。


「いえっ、ちょっとむずっとしただけです。」


そういうと、法堂は鼻をさすった。


2-Cから急いで戻ってきた法堂は、自分の椅子にだらりと腰掛けていた。


次の時間…4時間目は授業がないため、こうしてだらりとしてるわけである。


「ところで法堂先生、白石から貰ったっていう“お礼の品”ってのは見たのか?」


井森は机の下においてある紙袋を、ちらっとみながらそう尋ねた。


「いや、それがまだ見てないんですよ。」


ハハッと笑いながらそう答えた。


「そうなのか。なら、今見たらどうだ?」


井森の言葉にビクッと驚いた。


「なっななな何を言ってるんですか。今仕事中ですよ!!」


「そんな事は分かってる。ただ中身を確認するだけなんだし、なっ先生☆」


法堂はどうなっても知りませんよと言うと、紙袋を膝の上に置いた。


中を覗くと、ケーキを入れるような箱が入っていた。


「どうやら、中はケーキの類のものみたいです。」


「ケーキか。一体どこのケーキ屋だ?」


そう言うと、井森は紙袋から勝手にケーキの箱を取り出した。


箱には、“Blanc Pierre”と書かれていた。


二人はその文字を見た途端、絶句した。


「ブ…ブランピエールって、あの超有名洋菓子店か!?」


井森はなんとかして言葉を発した。


Blanc Pierre (ブランピエール)。世界洋菓子コンクールで優勝した白石糖子しらいしとうこが店長を勤める、超有名洋菓子店である。味はもちろんのこと、値段も一級品で、多くのセレブ達にも愛されている。それがBlanc Pierre である。


「確か…白石の母親って、パティシェールって言ってたような…。」


ガチガチの言葉でそう言った。


自分の母親が作ったケーキをお礼にくれたのか。まさか、Blanc Pierreのケーキを味わえる日が来るとは…。


法堂は心の中で感激した。


「ちょっと、何をしてらっしゃるんですの?」


後ろから、とっても聞き覚えのある声が聞こえてきた。


そぉーっと後ろを振り返ると、浅見がギラリと眼鏡を光らせて二人を睨んでいた。


「あっ浅見先生…。」


二人は冷や汗をダラリとかいていた。


そうだ、浅見先生がいたんだっけ…。


法堂は浅見の事を思い出し、余計に冷や汗をかいていた。


「全く、勤務中だと言うのに何を…って、それ、Blanc Pierreじゃございません?」


法堂の机の上に置いてある箱の文字を見た途端、怒りのトーンではなくなった。


二人はホッと胸を撫で下ろした。


「あっ実は、さっき生徒からそれを頂いたんです。」


法堂は完全に浅見の怒りを逸らすために、そう説明をした。


「生徒から…それはまた随分と立派なものを…。っで、一体誰に頂いたんです?」


「2-Cの白石です。」


「ああ、白石さん。どうりで…。」


浅見も白石の事は知っているようで、納得した。


「それで浅見先生。この“Blanc Pierre”ってどういう意味なんですか?」


井森はふとそんな事を聞いた。


「“Blanc Pierre”は、フランス語で“白い石”という意味ですが…。」


白い石?白い…石、白…石、白石!!


「まんまかい。」


法堂は一人でそうツッコミを入れた。










お昼休み。


法堂はお手製のお弁当をパカッと開いた。


中身はご飯、から揚げ、ミニトマト、卵焼き、マカロニサラダと小学生のお弁当の中身のようである。


「うわぁ。これ全部法堂先生が作られたんですか?」


養護教諭の久本は、法堂の弁当を見てそう聞いた。


「ええっまあ。」


法堂は照れ臭そうにそう言った。


すごーいと久本は感激していた。


カップメンなど不健康なものしか食べてなかったので料理は苦手と思われがちだが、実は料理は大の得意である。


ちなみに、得意料理はビーフシチューらしい。


「あの、このから揚げ頂いてもよろしいですか?」


「ええ、どうぞ。」


ありがとうございますと礼を言うと、久本は自分の箸でから揚げを掴み、それをパクっと口に入れた。


「うわぁ。これスッゴく美味しいです。」


久本は幸せそうにそういった。


法堂はありがとうございますと礼を言った。


「ほぉー。先生にそんな特技が。」


井森は法堂のお弁当を覗いてそういった。


「男で料理ができるなんて、素敵だと思いますよ。」


ニコッとしながら久本は法堂を褒めた。


その言葉に、職員室にいる男子生徒数人が、耳をピクッとさせた。


そして、一斉に法堂を睨んだ。


「…なんか、今ものすごく視線を感じるんですが。」


法堂の言葉に、久本は?を浮かべた。


「井森先生。」


井森は女子生徒に呼ばれたので、椅子をクルッと回して向きを変えた。


あれっ、この声朝聞いたような…。


そーっと見て見ると、そこには潤の姿があった。そして、その隣には男子生徒が立っていた。


背は潤よりも高めで、黒くツンツンな髪が特徴の男子である。


確か、白石と同じ2-Cの呉竹俊一くれたけしゅんいち。陸上部の副部長…だったっけ?


そんなことを考えていると、職員室の出入口に女子がたくさんいることに気がついた。


「相変わらず、人気ですねあの二人。」


後ろから久本がそう囁いた。


「人気って?」


「石崎さんと呉竹くん。まぁ石崎さんはG-クラスの一人ですし、人気が高いのは一目瞭然ですが、呉竹くんもそれに劣らず人気なんですよ。」


「そうなんですか?」


「ええ。運動神経はいいですし、尚且つ成績も優秀。ルックスもかなりいいですしね。」


まさに完璧超人ってか。


法堂は呉竹をみて、すごいなぁと感心した。


とその時、法堂は呉竹と目が合った。


呉竹はじぃーっと法堂のことを見ると、井森の方に目を向けて、「それでは、失礼します。」と頭をペこりと下げた。


そして職員室から出ていった。


「あれ?先生お昼?」


突然声をかけられたので、うわぁと驚いた声を出した。


「石崎、いきなり声をかけるなよ。ビックリするだろ。」


「ゴメンゴメン。って、それもしかして先生が作ったの?」


潤は法堂の弁当を見つけると、そう尋ねた。


「あっああ、まぁな。」


「ふーん。じゃあ、このから揚げ頂き!!」


と、潤はから揚げを摘んで口にひょいと入れた。


法堂は最後の一個を食べられ、口をパクパクさせながら呆然としていた。


「んっ、何これ、めちゃくちゃうまいじゃん!!」


喜んでもらえたのは嬉しいが、俺はから揚げを食い損ねた。


そんな複雑な気分に浸っていた。


「なんだ先生、石崎と随分仲がいいな。」


隣にいる井森が話に割りこんできた。


「いつの間にそんなに仲良くなられたんですか?」


と今度は久本が聞いてきた。


「あっいや…。それより、石崎は井森先生に何の用があって来たんだ?」


法堂は話を逸らすために、潤にそう聞いた。


「来週の大会の事で話があって来たんだ。いろいろと準備もあるしね。」


成る程と潤の話を聞いて納得した。


「石崎も呉竹も棒高跳びに出場するんだもんな。」


井森は潤に続いてそう言った。


呉竹も棒高跳びか。


法堂は呉竹の顔を思い浮かべながらそう思った。


「あれっ?何この紙袋?」


潤は法堂の机の下にある物を見た。


しまった!!と顔を青ざめる。


止める間もなく、潤は紙袋から箱を取り出した。


「これって!!」


終わった…。


法堂は肩をガクンと落とした。

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