12th.血まみれ日記
その夜。
「ここです。」
白石は法堂とG-クラス全員を引き連れて、問題の呪いの洋館へとやってきた。
G-クラスのメンバー全員、かばんのような物を持っている。
恐らく、中には自分達が所持している武器が入っているのだろう。
「確かに、なんか呪われてるって感じの洋館だね。」
洋館を見るなり、数葉は第一印象を述べた。
「不気味な所ですわね。」
歌音もありのままの印象を述べた。
まあ確かに不気味ではあるが、この洋館自体は呪われてはいないだろう。おそらく原因は他にある。
法堂は洋館を見るなり、そんな推測を立てた。
「とりあえず、中に入るわよ。」
因幡はライトを持って、洋館の入り口へと入っていった。
法堂たちもそれに続いて中へ入った。
「なんか、中に入ったら一層不気味さが増してるよね。」
数葉はゆっくり進みながら、そんな事を言った。
「近所の人に聞いた話なんですけど、ここは昔家族が住んでたみたいなんです。」
白石はゆっくり進みながら、ここの洋館について説明した。
「けど、ここの一家は、ある事件に巻き込まれて、全員殺害されてしまったそうなんです。」
「ある事件?」
法堂は白石にそう聞き返した。
「事件の夜、この洋館に強盗が入ったみたいなんです。そして家族全員殺害された…。」
法堂は黙って白石の話を聞いていた。
そしてあることを考えていた。
これって、もしかして…。
「先生。」
法堂の後ろを歩いていた百合子は、法堂に声をかけた。
「どうした、千野。」
「これって、この洋館の呪いと思われている現象と関係があるんじゃないでしょうか。」
百合子は小さな声でそう言った。
「ああ、俺もそう思う。」
法堂は百合子の意見に賛同した。
「その事件とどう関係してるかは分からないけど、この洋館を調べてみる必要はあるな。」
「それなら、私がやります。」
「けど一人は危険すぎる。」
「大丈夫です。もう一人連れて行きますから。」
そう言うと、百合子は急に立ち止まった。
「どうしたの百合子?」
数葉は急に立ち止まった百合子を見てそう聞いた。
「私、ちょっとこの洋館の事を調べてみます。」
「いいけど、でも一人は危険じゃ…。」
因幡は百合子を心配してそう言った。
「大丈夫です。ちゃんと一人連れを連れて行きますので。」
「そう。」
「では行きますよ、潤。」
「ってちょっと待て!!なんであたしなの?」
潤は百合子に腕を引っ張られながらそう言った。
「ずべこべ言わず、一緒に行きますよ。」
「人の質問に答えろー。」
潤は百合子に引っ張られながらそう叫んだ。
二人は洋館の奥へと消えていった。
「それじゃ、こっちはこっちで中を詮索するか。」
二人が居なくなった後、法堂はそう言った。
「そうね。とりあえず、問題の部屋にいってみましょう。」
因幡はそう言うと、因幡を筆頭に、残ったメンバー全員歩き始めた。
法堂達は、二階の1番奥の部屋の前にいた。
「それじゃ、開けるよ。」
法堂は準備はいい?と全員に聞いた。全員首をゆっくりと縦に振った。
そして、せーのと言いながら法堂は部屋の中へと突入した。
部屋の中は、広々としていて、窓側にベッドが置かれていた。
「随分と広い部屋だな。」
法堂は部屋の中に入るなりそんな感想を漏らした。
「何言ってんの?全然狭い部屋じゃない。」
はっ?と因幡の言葉に目が点になる。
「私の部屋の三分の一にも満たないわね。」
どんだけ広い部屋なんだと、隣にいる超金持ちのお嬢様にそう(心の中で)ツッコミを入れた。
価値観の違いを感じつつも、法堂は部屋の中を探り始めた。
部屋の中からはこれといった気配は感じられない。
法堂は部屋のあちこちをいじりながら、そんな事を考えていた。
そして、ふと机の上に置いてあるノートが目に止まった。
法堂はノートを手に取った。
日記…みたいだな。
法堂はパラパラっと日記をめくって見た。
ちゃっかり毎日書いてたみたいだな。文面からして、女性が書いたのか?
そう考えながら、法堂はさらにページをめくった。
そして次のページをめくった瞬間。
「!!」
法堂は思わずノートから手を離した。
「どうしたの?先生。」
法堂の突然の行動を見て、因幡は法堂に近づいてきた。
「血だ…。」
「血?」
因幡は法堂が見ている先に視線を動かした。
「!!」
因幡は法堂と同じく、自分の見ている光景に言葉を失った。
法堂が開いたページには、血がたくさんついていたのだ。
「これは一体…。」
法堂はノートを見て愕然としながらも、ページの日付を確認した。
ページには、2008年10月10日という文字が刻まれていた。
「2008年…。一昨年か。」
「なんでこんなに血がべっとりと…。」
法堂と因幡は、日記についた血の意味について考えていた。
もしかして…。
「白石!!」
「はい!?」
法堂は後ろにいる白石を呼んだ。
「さっきの強盗の事件、起きたのがいつ頃か聞いたか?」
「はい!!えっと確か…。」
白石は何とか思い出そうと、顎に手を当てた。
「ちょっと、何よいきなり…。」
「いいから!!」
因幡は何が何だか分からずにいた。
「確か、一昨年の秋ぐらいだったと思います。」
「やっぱり…。」
法堂は何かがわかったのか、ふっとほくそ笑んだ。
「一昨年の秋って、この血がついてるページの日付と同じぐらいなんじゃない?」
法堂の隣にいる因幡は、日記を見ながらそう言った。
「えっ何?どういうこと?」
数葉は何が何だか分からず、二人にそう聞いた。
「恐らく、白石が言ってた強盗事件ってのは、この血が付いたページに書かれている、この日に起こったんだと思う。」
法堂は、血の付いたページをみんなに見せながらそう説明した。
「まだ推測に過ぎないけど、この日記の持ち主は、この部屋で日記を書いていて、その際に背後を襲われ、殺害された…。」
全員黙って法堂の話を聞いていた。
「確かにつじつまの合う話だけど、どうして強盗はその人がこの部屋にいるって分かったのかしら?」
因幡は法堂の話を聞いて疑問を抱いた。
「俺もそれだけは分からないんだ。強盗が入ったんなら、当然家の中は大騒ぎで、嫌でも気付くし、日記なんか書いてる暇はないと思うんだけど。」
法堂は因幡と同じ疑問を抱いた。
「それって、その時この部屋に明かりがついてたからじゃないですか?外から見て、この部屋に明かりがついてれば誰かいるって思いますし。」
白石は法堂と因幡の疑問に答えるかのように言った。
「それはないと思うよ。」
隣にいた数葉は白石の意見を否定した。
「どうしてですか?」
「机の上にスタンドがあるでしょ。たぶん日記を書く際につけてたんだと思う。スタンドを使ってるのに、わざわざ部屋の明かりは点けないと思う。」
数葉は机に置いてあるスタンドを見て、そう推測した。
「確かにそうですね。」
白石は数葉の話を聞いて納得した。
「どうやら、また新たな謎が増えてしまったようですわね。」
歌音は冷静にそう言った。
「そうね。一体、この呪いと呼ばれる現象とどう関係してるのかしら?」
因幡は両手を腰に当てながらそう言った。
「なんか面白くなってきた!!」
数葉は能天気な声でそう言った。
おいおい…と法堂は数葉の言動に内心呆れていた。
「どうやら、色々と調べてみる必要がありそうね。」
因幡はそう言うと、ポケットから携帯を出して、どこかに電話をかけ始めた。