9th.G-クラスの真実
法堂は理事長室へと向かっていた。
俺、理事長に呼ばれるような、悪いことしたっけ?
法堂は、ずっとそんなことを考えていた。
他の先生からは、
「素直に謝ったほうがいいですよ。」
なんて言われる始末。
浅見先生には睨まれるし…。
法堂の不安は段々と募っていった。
“理事長室”
法堂は扉の前に立つと、体中に緊張が走った。
ひとつ間をおくと、法堂はコンコンッとノックした。
中から、どうぞという男の声が聞こえてきた。
法堂は、ガチャンっと理事長室の扉を開いた。
「失礼します。」
そう言うと、法堂はゆっくりと部屋に入った。
「遅い。」
と、聞き覚えのある女の声が聞こえてきた。
「えっ君たちは…。」
法堂の視線の先には、G-クラスのメンバー全員が並んで立っていた。
ちなみに、さっきの声は因幡である。
「やっと来ましたね。」
法堂は、声のしたほうを振り向いた。
大きい窓の前に、長身の男が外を眺めて立っていた。
「理事長。」
法堂は男の姿を捉えると、その男を理事長と呼んだ。
彼こそが、ここ鷺森学園の理事長・鷺森翔一。
見た目は30歳前半ぐらいだが、実際は42歳。
まるで神父さんのように暖かい笑顔でいつも生徒を見守っている。
特徴は丸眼鏡をかけている。
「あの、俺、なんか呼び出されるような悪いことをしたでしょうか。」
法堂はおずおずと鷺森にそう聞いた。
「いえ、別に。」
鷺森はさらりとそう言った。
それを聞いて、ほっと胸を撫で下ろした。
「ただ、あなたには、昨日は彼女たちが大変お世話になったそうで。」
「えっあっいや…。」
「実は、あなたとはいつかゆっくりお話をしたいと思っていたんですよ。」
「えっ!?」
鷺森は、窓の前から、机の前にあるソファに腰掛けた。
「あの、それってどういう…。」
法堂は鷺森の言ってる意味が理解できなかった。
「その前に、あなたにはいろいろと説明せねばならないことがありますね。みなさん、こっちに来てください。」
鷺森は、因幡達を見てこっちに来るように促した。
「あの、それって、もしかして昨日の…。」
「そう。先生も、私たちにいろいろと聞きたいことがあるんでしょ。」
因幡は法堂の顔を見てそう言った。
「あっああ。君たちが一体何者なのか…。」
「私としては、先生が何者なのか知りたいですわ。」
歌音は法堂にそう言った。
「まあ、最初に彼女たちの話をするとしましょう。」
鷺森はそう言うと、ひとつ間をおいて、口を開いた。
「彼女達が生徒会クラスだということは存知あげてると思います。ですが、それは表の姿でしかありません。」
「表の姿?」
「彼女たちの真の姿は、幽霊退治をする、ゴーストクラス。略してG-クラスな訳です。」
法堂は鷺森の話を聞いて唖然としていた。
前々から気になってはいた。なぜSクラスみたいな名前じゃなくて、Gなのか。
「彼女たちは主に夜に活動をしています。昼間だと生徒達に見られてしまいますし。」
「じゃあ、この学校が夜警備員を雇わないのは、彼女たちが幽霊退治をするため。」
「そうです。ですから、万全なセキュリティとともに、先生方を日替わりで巡回させてるわけです。」
「でもどうして彼女たちに幽霊退治をさせているんです?」
「それは、この学園に代々から伝わっているものなんです。この学校が古い学校というのはご存知ですよね。」
「はい。」
「初代理事長…まあつまり、私のおじいさんということになりますが、元はゴーストスウィーパーだったそうなんです。ですが、その力は石によって封じ込められてしまいました。それと同時に、石は生徒達の中から幽霊を退治するものを選んだ。」
「それが、彼女たちということですか。」
「そうです。祖父は、自分の生徒達にこのような仕事をさせるのをためらいましたが、幽霊たちはしだいに選ばれた生徒達を襲うようになりました。ですから、生徒達には理解のうえでこのようなことをさせているわけです。」
「そうだったんですか。」
「今回はたまたま全員、この学園に寄付してくださる超VIPな方たちの集まりになってしまわれましたけど。それで、大変申し訳ありませんが、このことは他のものには口外しないでいただけますか。」
鷺森は真剣な眼差しで法堂をみた。法堂は一瞬たじろぐが、きちんとした姿勢に直した。
「わかりました。」
「ありがとうございます。じゃあ次は、あなたのことについてなんですが…。」
「はい?」
「彼女たちから聞きましたよ。G-クラスにきたとき、置いてあった石を見て様子がおかしかったそうですが…。それはどうしてです?」
「いや別に、あの石から、ものすごい力を感じたってだけなんですが…。」
「感じた?」
「あっ俺、昔から他人には見えないものが見えたり、感じ取ったりできるんです。幽霊だけでなく、人間のオーラとか、自然に憑いている潜在的なものだとかが。」
法堂の話を聞いた鷺森は、クスッと笑うと、
「知っていますよ。」
と言った。
「えっ!?どうして…。」
法堂は鷺森の言葉に驚いた。別に話したわけでもないのになぜ知っているのだろうと。
「あなたのことは、この学園に赴任してこられたときから目をつけていたんですよ。いつも庭園に水をあげたり、桜の木に出向いていたり。」
「どうして…。」
「あなたが、ものすごい霊力の持ち主だからです。」