超短編小説
「みんな、夢をみるんだろうな」
眠った街を背に、公園のベンチに腰掛けた僕はそう呟く。
誰にも届かない、静かなメッセージ。
きっと誰かに、届けたかったメッセージ。
僕は座ったまま、まぶたをそっと閉じる。
夢なんて、見れない。
けれど、それで良かった。
たった一瞬、現実がぼやける。
その感覚だけで、良かったんだ。
淡い夢に、身を委ねる。
家での孤独も、学校での喧騒も。
その一瞬だけは、忘れられた。
ーー目を閉じて、どれくらい経っただろうか。
時間さえ、誰も教えてくれない。
僕は、そっとまぶたを持ち上げた。
夜の街に、目を向ける。
辺りに漂う薄い霧が、光の輪郭をぼかして運ぶ。
数え切れない程の夢が、幻想が、そこにはあった。
見えたわけじゃない。
そんな気がした。
「……そろそろ、帰るか」
静かに、自分自身にそう言い聞かせた。
僕はゆっくりと立ち上がり、歩き出す。
"みんな、夢を見るんだろうな"
きっと、自分に向けたメッセージ。
それでも、たぶん、夢は見れない。
僕はまた、夜の憂いに、溶けていく。