プリンターから出てきた愛
必要な書類を印刷ボタンを押し、プリンターの前に立つ。
なかなか出てこない。
どうしたんだろう?と思いつつ、あと5秒だけ待ってみる。
5秒経とうとしたその時に、何かのデータをプリンターが受信したようだ。
少し待つと、ウィーン!と言い、ボコン!と出てきた。
ボコン?
出てきたそれは、僕が印刷したものではなく、愛だった。
今の時代、愛も印刷できるんだ。
その事実にびっくりしながらも、愛を印刷した人を探す。
「どなたか愛を印刷しました?」
周りから、「何を言っているんだあいつは」という視線を浴びせられる。
見せた方が早いと思った。
「ほら、これですよ。」
それを見た人は、目がハートになった。
漫画でたまに見かける光景をまさかここで見ることになるとは。
そしてものすごい勢いでこちらに駆け込んでくる。
これはまずいと思い、咄嗟に逃げる。
どう考えても足が遅そうな人も、愛の力かなんなのかわからないが、俊足になっていた。
これは逃げられないなと思って、窓の外に愛を投げた。
すると目がハートの方々は、窓を飛び越えてその手に愛をつかみ取ろうとした。
しかし愛は風に飛ばされてどこかへ行った。
翌日のネットニュースで知ったが、愛に飢えている人が今回のような症状になるらしかった。
これを送ってきたのは、AI国家”愛”らしかった。
愛を使って人間を対象に色々な実験を繰り返しているらしい。
よかった。僕に影響が無くて。
今日も僕はプリンターの前で待っていた。
少し待つと、ウィーン!と言い、モサン!と出てきた。
モサン?
出てきたそれは、僕が印刷したものではなく、サツマイモだった。
僕はそこから意識を失っていたが、次の瞬間には焼き芋の皮が机の上に散らばっていた。