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輝く彼女と星間飛行(スタートラベル)  作者: 鋼我
第一章 星の世界へ
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バリー奮戦

「やべえ……敵がいねえ」


 スケさんカクさん、覇獣大王国出身者。その他戦闘員は元気に戦っている。パイは有限で、公平には分けられない。自分から取りに行かねば分け前はない。臆していては、手に入らない。


 そのような状況であるため、彼は煙幕を抜けて収集所の内部に侵入していた。ドローンにより情報は取得できている。だが完ぺきではない。スーツの性能が頼りだった。


「くそ、くそ……やべえ、やべえ」


 悪態をつきながら、今まで兵士として生活してきた全てを使って前進していく。彼は優秀な兵士ではなかったが、何度も戦場に出ては生還できる程度には能力があった。己は英雄でもエリートでもない。無理も無茶もしない。装備を適切に使い、できることを確実にこなす。


 体に叩き込んだ近接戦闘の技術を駆使し通路や部屋、物陰にいるであろう敵を索敵していく。丁寧に、確実に。しかし雑念は混じる。何でこんなことになってしまったんだ。どうして俺はこんな最前線に立っているのだと。


 決まっている。評価の為だ。保身のためだ。ここで前に出て、索敵をしていくだけで全体としてはプラスになる。敵を倒すだけが兵士の仕事ではない。そんなのは一部だ。移動と偵察の方が役割としては多い。それをやっているのだから評価に繋がらないはずがない。そう己に言い聞かせる。


 そしてその場に遭遇する。数名のラヴェジャーと、それより多い捕虜。この状況に対処せねばならないという、極限のストレス。ここまでの間、ずっと追い込まれていた精神状態。バリーの思考は、一瞬真っ白になった。


「……ッ!」


 ここで、アキラも、カメリアも、バリー本人も予測できなかった事態が起きる。彼の着ているパワードスーツは、操作の補助として思考制御システムが採用されていた。思い考えるだけで内部システムとやり取りができる。特段、珍しい技術ではない。従来品よりレスポンスが良いのが特徴だが、それだけだった。


 が。その思考制御システムと搭載されたAI、そして雑念の消えたバリーが見事にかみ合った。バリーの兵士としての経験と思考をAIが読み取り、最適の行動を即座に行う。スーツの補助腕が作動し、スタングレネードを投擲。同時に強化された脚力で大きく跳躍する。


 唐突に跳ね飛んだバリーに、ラヴェジャー達は反応しきれない。そこに、音と閃光が炸裂する。


「「「ああああああああ!?」」」


 悲鳴が重なる中、バリーは正確に射撃を行った。スーツのヘルメットは、スタングレネードの効果を完ぺきにシャットアウトした。撃ち下ろされたレーザーが、ラヴェジャーへ的確に命中する。シールドがそれを阻むが、負荷は確実に重ねられる。


「フッ!」


 なので、踏みつけるような蹴りを叩き込んだ。スーツにより強化されたバリーのキックは、シールドの限界を超える。そのままラヴェジャーを捕らえ、その軽い身体を吹き飛ばした。お手本のように着地した兵士は、再度レーザーを撃ち込み止めを刺した。


 格闘戦が有効であるとバリーは判断。折り畳み式バトンを展開してすぐ近くのラヴェジャーに殴りかかる。たった二度のスイングでシールドは損壊。三度目が対環境スーツごしに、頭部を破損させた。ラヴェジャーの目玉が飛び出たが、バリーの意識は3体目へ向けられている。


 対環境スーツが働き、使用者の不調に調整を入れる。スタングレネードから無理やり復帰させられたラヴェジャーは、襲撃者をぼやけた視界で視認した。が、バリーは止まらなかった。


「フンッ!」

「ぐぼぉ」


 スーツのパワーアシストを最大限発揮させたタックルを仕掛ける。互いのシールドが干渉し合い、すぐに無力化が起きる。そうなれば、種族的に小柄なラヴェジャーが耐えられるわけがなかった。


 バリーは止まらなかった。3体目を掴んだまま、そのまま4体目へ再び体当たり。バリーのシールドはまだ復旧していない。しかし代わりに掴んだラヴェジャーがある。


「ご、ごぼぼぼ。は、放せぶぐ」

「おおおおっしゃあ!」

「やめ、くる、くるなああああ!?」


 そして玉突き衝突が起きた。半ば潰れた3体目と、シールドが消滅した4体目。まとめて壁まで押し込まれたのだ。ひどく鈍い水音が、バリーと壁の間で起きた。兵士はそれを気にせず、レーザーで冷静にとどめを刺した。


 残ったのは、立っているバリーと呻く捕虜のみ。すぐに応援を要請して、そこでやっとバリーは己を取り戻した。


「……俺が、やったのか。やれたのか、あれを?」


 バリーは、自分の身に起きたことを知っていた。繰り返すが、思考制御システムはこの宇宙でありふれたシステムである。高性能なそれと適切なAI、使用者の意識により機械とひとつとなった操作ができるようになる……という話は界隈では時折聞こえてくる話だった。


 コツを掴めるかどうかは本人次第。だが、そもそも高性能な思考制御システムというのが一般人には高嶺の花。さらに適切なAIとなると、プロフェッショナルによる調整が必要になる。それらが揃っても、本人の意識がそれにマッチングしなければ意味がない。


 一般的には、遠い世界の話とされる。真偽が疑われてもおかしくないが、実例がいくつも記録を残している。なので与太話ではないのだが、自分にそれが起きたのだと確信を持てるほどバリーは己を信じていない。


 だが結果として、ほんの一分程度の時間で4体のラヴェジャーが死体となった。バリーの手で、である。スーツに記録も残っている。そしてシステムと意識を繋げる感覚も、しっかりと脳に刻まれていた。


「俺は、どうすれば。どうしたら……」

『戦闘員バリー、応答願います』


 カメリアの冷たい声が、ヘルメットの中を震わせる。混乱し始めていたバリーの意識を叩くには十分だった。


「こ、こちらバリー! 感度良好!」

『捕虜の確保のためにドローンを送りました。周辺の警戒と、武装解除をお願いします』

「は。了解しました! 作業開始します!」


 通信が切れたことで、大きく息を吐いた。そして意識を切り替える。


「そうだ。ここは戦場、しっかりしろバリー。タフガイだろう」


 捕虜の近くに、いくつか武装が転がっていた。装備させられていたと思われるそれを、バリーは手の届かない所へ移動させる。その作業をしていると、ドローンはすぐにやってきた。


「目が、目が見えない、聞こえない……」

「くそ。ひでえ、あんまりだ」

「助けに来てくれたんじゃないのか……」


 うめき声をあげる捕虜へ、バリーは冷たい視線を送る。


「武器持ってたくせに寝言言ってやがるぜ」


 まだ味方ではない。ラヴェジャーのシンパである可能性もある。自分の立場のために、積極的に協力的な態度を取る捕虜は当然いる。故にこの対処は当然だった。ドローンもまた容赦をしない。そんなものはプログラムされていない。


 捕虜を拘束し、運搬していく。


「痛え! やめろ、放せ!」

「お、おれは何もしていない! していないんだ!」

「地元に連絡させてくれ!」


 喚く捕虜を見送って、バリーは周囲警戒に戻る。そして、意識を再びフラットにするよう努める。感覚は掴んだ。それに近づければいい。すると驚くほど苦労なく、再びシステムとリンクした。パワードスーツが、己の身体のように動かせる。


「よ、よし、でき……たけど、切れた! 喜んでも切れるのか。くそ、難しいなこれ!」


 高揚感が雑念となり、接続が途切れた。しかし確かに、自分が新しいステージに立ったと理解した。


 そのように時間を無駄にしていたせいか、戦術リンクが新しい命令を送ってくる。さらに前進し、索敵領域を広げよと。


「……よし。行ける。大丈夫だ。俺はやれる。このスーツは最高だ。このスーツがあれば、俺は誰にも負けねえ……いやいかん。喜んでると使えねえ。クール。そう、俺はクールなタフガイだ……」


 バリーは高揚する己を諫めながら、仕事に戻った。そして、確かな成果を上げた。システムリンクを習得したバリーは、超人的な活躍を示した。全身を機械に置換した重サイバネ兵士、あるいは高度な強化を施されたバイオテック兵士に匹敵する能力だった。


 しかも戦えば戦うだけ慣れていく。システムからの情報をより的確に処理できるようになる。驚きと衝撃が抜けて、リンク継続時間が長くなる。


 きっかけをつかんだだけで、ここまで活躍できるほど世の中甘くない。カメリアの作り出したパワードスーツと補助AI、その相乗効果によるものである。


 物資収集所の制圧が終わるころには、彼の戦果が今回のナンバーワンとなっていた。船に返ってきたバリーを、誰もが驚きの表情で迎えた。


「見事、あっぱれな戦働き! 覇獣大王国の上位戦士、その末席に匹敵するな!」


 力強く頷く獣人、ジョウの言葉にバリーは思わず苦笑する。


「おい。これだけ戦果あげたのに、末席かよ」

「宇宙の戦士の高みは遠くにあるのだ。精進するがいい。俺もすぐに追いつく」

「上なのか下なのかよくわかんねぇなあオイ」


 疲労もあるが、バリーは自分のメンタルが酷く落ち着いているのを感じていた。達成感は、システムリンクを習得した時に味わった。その高揚が落ち着いてみれば、今まで彼を苛んでいた様々なものが取るに足らなく思えてくる。


 例えば劣等感。獣人系、超人系、虫人系……ヒューマノイドより優れている種族は数多い。どれだけ努力しても越えられない壁がある。他種族を見るたびに、それを意識させられていた。


 例えば閉塞感。田舎の星を出て、宇宙に出たというのにできることはごくわずか。傭兵団に入って戦地を転々としたが、命令に従う事しかできず自由はない。田舎で親類家族と広大な畑を耕していた頃と大して変わらない。命のやり取りが増えただけマイナスとも言えた。


 例えば無力感。敵の捕虜となり、解放されないまま戦争終了。違法な人買いに売られて転々とし、ラヴェジャーの奴隷に落ちた。そこから解放されたが、安心はできぬ逃亡の日々。言われるがまま働くのは、ラヴェジャーの奴隷であった頃と変わらなかった。


 それらが、すべてどうでもよかった。はっきりと、自分のできる事というのを見つけた。自信が付いた。誇れるものが手の中にある。全身に疲れを感じているのに、スーツを着た脚は何処までも軽かった。


『戦闘員バリー、臨時指令所に出頭してください』


 だが、そんな気分に盛大に冷や水をぶっかけるのがカメリアからの呼び出しだった。


「は、はい! 戦闘員バリー、ただいま参ります!」


 足早に、交通事故を起こさないように(スーツを着ているとそういう事故もありうる)彼は指令所に向かった。そこにはアキラと、カメリアの操作するドローンがあった。ほかにも、今回レリック貸与試験を受けていた者たちが居る。その表情はだいぶ暗い。彼らは、目だった戦果をあげられなかったのだろう。


「おつかれさまー! バリー君、すごかったね!」

「は。ありがとうございます!」


 アキラからのねぎらいの言葉に、背筋を伸ばし敬礼をもって答える。今、バリーは人生で最も模範的な兵士として振舞っていた。周囲の視線などどうでもよかった。背中に流れる冷や汗が止まらない。


 アキラが無邪気に笑っている。いつものように、太陽のような笑顔だ。バリーに祈る神はないが、アキラは密やかに信仰していた。故に無様を見せたくなかった。問題は、目の前にあるドローン。頂点種の奉仕種族、ハイ・フェアリーのカメリアだ。


「戦闘員バリー。貴方は私が予測した結果を大きく超えました。一般的知性体の感性で言えば驚嘆すべき出来事だと判断します。その理由は予測できましたが、確認のために質問です。思考制御システムと補助AIによる特殊操作法、俗にいうシステムリンク。貴方はそれを使用しましたね?」

「はい! 確証は持てませんし、あれがソレであるという証明もできません。ですが状況を見て、そうであるとしか自分には判断できません!」


 他の連中のどよめきが、バリーにはひどく耳障りだった。お前らの事などどうでもいいんだよ、と心の中で悪態をつく。カメリアの評価だけが問題だ。レリックを強請った結果がこの有様だ。これ以上機嫌を損ねたくはなかった。


「なるほど。貴方の戦闘評価を向上させます。今回の働きには、無事に安全圏に帰還した時に必ず報いると約束しましょう」

「私も約束する!」

「は! ありがとうございます! 光栄です!」


 再び敬礼で答えたバリーを一瞥した後に、カメリアは全体に周知する。


「さて。それではレリック貸与試験の結果を報告します。残念ながら戦闘員バリー以外は、こちらが求めた水準をクリアーできませんでした。各員、訓練で技術を高めて再挑戦してください」


 おそらく、その機会は得られないだろう。集められていた者たちはそう察した。それでよいとも思った。こんな罰ゲームは、一回限りで十分だと。


「次に、戦闘員バリー。貴方は先ほども申し上げたように、こちらが求めた水準を大きく超えた結果を出しました。故に、貴方の希望を叶えるべきであると……」

「失礼します! レリック貸与の希望ですが、取り下げさせていただいてもよろしいでしょうか!」


 ひどく珍しい事に、一瞬カメリアの行動が停止した。電子知性の高速思考に遅延を与えるのはなかなか難しい。再起動した彼女は、真意を確かめたいと思った。


「理由を聞かせていただいてもよろしいですか?」

「はい。私は今回、このスーツの力で目標を達成できました。このスーツは、自分がいままで使用したどれよりも……いえ、その、どれもこれとは比べ物にならないポンコツだったので同列に語るのは間違い……ともかく! このスーツは素晴らしいものです! そして正直、これを使うので自分は精一杯です! これ以上を貸与されても、結果を出せるとは到底思えません! 許されるのであれば、これからもこのスーツをお借りしたいと希望します!」


 嘘偽りなく、バリーの本心だった。今回の戦闘でも、スーツの性能のすべてを発揮できていない。システムリンクとて、できるようになっただけだ。習熟には時間がかかるし、それを応用する方法など考えていかなければならない事は多い。


 そんな状態であるのだから、レリックは身に余る。思い返せば、カイトの使用していたあれは明らかにおかしい代物だった。機械が変形していなかった。素材が変形していた。そんな訳の分からないものなど、どうして使いこなせるだろう。リンクしても混乱するだけだ。


 カメリアはわずかに思考し、そして結論を出した。


「良いでしょう。どちらにしてもそのスーツは試作品。不良や改善点は洗いださなければなりません。戦闘員バリー、貴方をテスターとして採用しましょう。仕事が増えますが、貴方の希望でもあります。過不足なく勤め上げてください」

「は! 了解しました!」


 望みが叶った事に、内心胸をなでおろす。そんなバリーの目の前に、アキラが立った。バリーは身長180cmを超えている。アキラは160cmちょっとである。なので目の高さを合わせるために、アキラは中に浮いていた。立体映像であるから、簡単にできる芸当である。


 唐突な頂点種の振る舞いに目を白黒させるバリー。そんな彼の両肩を、アキラはしっかりつかんだ。念動力テレキネシスも使っているので、確かにバリーには触れられた感覚が伝わった。


「バリー君。一つお願いがあるの」

「は……はい」

「人を貶めるような言葉は、慎んでね」


 バリーは一瞬、心臓が止まるかと思った。しかしアキラの瞳に怒りがない事を見て、気持ちを立て直す。しかし、すぐに落ち着きが無くなった。アキラから伝わってくるのは、彼を労わる感情だったから。


「誰かを貶めれば、その人の立場は悪くなるかもしれない。そうなるかどうかは状況次第だよね? でも、それを言った貴方は確実に『他人を貶めた人』になってしまう。それはバリー君の為にならないと思うの」


 両肩を掴まれたままの彼は、己の言動を振り返った。他者を貶めるのは、昔から当然のようにやっていた。自分だけでなく、家族も大人も当たり前のように。


 傭兵団に入ってからは、それが苛烈になった。同じ団員、肩を並べて戦う相手といっても他人だ。強い、弱い、イケてる、ダサい。競い合い、貶め合った。ナメられたら、搾取される。故郷でも宇宙でもそういうものだった。


 自分より上のものがあってはいけない。ナメられる前に潰しに行く。だからカイトもペットだと貶めた。


 それを何とも思っていなかったのに、今は恥を感じている。何がタフガイだ。


「戦うのが仕事だから、お上品ではいられない事があるっては私もわかった。でもだからって、バリー君が自分を大事にしなくていいって話にはならないと思うんだ。だから、自分の為に言葉に気を付けてね?」

「は……はい。必ずや」


 そしてそんな己を思ってくれる人を、心底ありがたいと感じた。この人がそういうのならば、従おう。それで喜んでくれるならば、自分にとってもそうだから。


 子供のように言い含められることに不快感はなかった。頂点種の年齢はどれほどかさっぱりわからないが、自分より上の存在であることに間違いはない。


 敬意、心酔、忠誠。そういった感情を向けられる相手を、バリーは初めて得た。


「みんなも今回は残念だったけど、次は頑張ってね! 装備とか、カメリアに言って色々作ってもらうから!」

「はい、アキラ様!」


 バリーに向けられた言葉は、集まっていた者たちにも染み渡っていた。皆が己の浅ましさを理解し恥じた。そして自分たちを労わる頂点種に、改めて恩義を返そうと決意した。


 さて。アキラがこのような行動を取ったのは当然理由がある。きっかけはやはり、カイトに対するバリーの暴言だった。いやな気分には確かになった。しかし同時に疑問も覚えた。どうして彼はこのような発言をするに至ったのか、と。


 船の中で起きる大小さまざまな争い。カメリアのライブラリ。そしてカイトとの雑談。それらを学び観察した結果、聡明なる頂点種は理解した。


 有機知性は、争う事を本能に刻まれている。生存欲求は己と子孫を優先する。理性は本能を土台に立っている。故に争うし、間違いを犯す。法を破るし、罪を重ねる。生存のための環境が整っていれば、それらの行いはだいたい抑制できる。


 だいたい、というあたりが有機知性の度し難く愉快な所である。ライブラリから己の兄にして姉である光輝宝珠こうきほうじゅのコメントを見たが、アキラはまだそこまで理解できなかった。


 ともあれそのような生態であるならば、こちらの振る舞いも考えねばならない。アキラはカイトへの暴言を止めさせたい。ただ止めろ、というだけでは解決しない。考えに考えた結果が今回の振る舞いだった。


 アキラはバリーが嫌いではない。暴乱細胞レイジセルを求める所は嫌だったが、些細な事でもあった。他の者達も同様だ。彼女が嫌う対象は、ラヴェジャーや暴乱城塞レイジフォートレスくらいである。


 自分の船にいるのならば、元気で仲良くやってほしい。彼女はそう思っていた。


 以上が彼女の思いである。そしてそれに仕えるカメリアは、今回の事態を学習した。彼女は、単純にバリーを晒し者にすればよいと考えていた。しかし主は、それ以上の答えを示した。大きな成長を見せる彼女に驚き、喜びを抱いた。


 そして己の計画と基準に修正を施した。乗員たちをより活用する方へシフトした。ヒトという労働力を運用するには、命令だけでは足りない。環境が必要なのだ。


 こうしてアキラは、求心力というものを発揮し始めた。ただの頂点種には不要の能力である。しかしこの船には必要な能力だった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 負の感情を昇華する頂点種の懐の広さ。 [一言] 環境が整っていても駄目な奴もいますからね。 バリーの性根が腐って無くて良かったです。
[良い点] バリー君よく頑張った、 そしてよい気付きを得られた。いいぞぉ!こいつはいい兵士になれる。 [気になる点] 一昨日の分を読んだときは今回ドラゴンシェルが出るものかと思ってましたが、よく考えて…
[良い点] バリーがただの身の程知らずで終わらずタフガイに向けて一歩を踏み出したのいいね!
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