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光(ビーム)の英雄  作者: 村中助介
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光(ビーム)の英雄

 第一次人魔対戦。

 俺が初めて参加した戦争だ。

 今でも昨日のように思い出す。

 空から禍々しいオーラを纏って降臨した魔神。

 突拍子もなく現れては、人類に対して宣戦布告をしたんだ。

 その三日後には魔神の軍勢が王国に攻めてきた。人型の怪物からキメラまで、この世界にい存在しない生物たちが図鑑が作れてしまうくらい揃っていた。

 しかも、戦争を始めた当の本人はおらず、代わりに魔将軍と名乗る幹部の一人が指揮を執りながら、前線で暴れていたな。

 俺は魔術師だったので、第一陣の後方支援部隊に配属されていた。

 迫ってくる怪物たちの軍勢に、とにかく、必死に、全力で魔法を打ち込んでいた。

 それでも、劣勢だった。

 わかっていたことだ。

 鍛え抜かれた兵士たちの肉体と武具があっても、見たこともない怪物たちは一振りで蹴散らして行く。

 魔将軍は、後方にいる俺でもはっきりと、見える距離にまで前線を上げていた。

 当時の俺は基礎中の魔法しか使えない、無属性の魔術師だった。

 まわりは一つでも属性を習得して行く中、俺だけはなぜなら習得できなかった。

 どんなにがんばっても空回りし、同時に自己肯定感もなくなっていた。

 だから抵抗しても無駄だと、死ぬのは怖かったが、すぐに諦めがついたんだ。

 あと数秒で俺は死ぬんだろうな、と。

 人型で、武人のように猛々しい魔将軍の槍が、俺の首を刎ねる直前。

 死は直前なのに、その1分1秒がとても長く感じた。

「……じいちゃん」

 もうこの世にいない尊敬する人。

 家族を思いながら逝くのも悪くないな、と思っていた。

 思い出も駆け巡って行く。

 幼い頃、じいちゃんの魔法に憧れて、魔術師を目指した事。

 それを思い出した俺はー


 死に抵抗をした。


 先ほどとは一変、生きるのに必死になった。

 頭は真っ白で、しかし体の内は熱かった。

 魔術師だと言うのに、俺は杖から造り出した魔法の剣で受け止めたのだ。

 これができたのは、おそらくこの世で、じいちゃんに続いて二人目だ。

 イメージした武器を魔法で造り上げ、それを維持し続けるのは困難だ。

 それ故に、じいちゃんは魔術師の近接の弱さを補うために開発したのだが、複雑すぎる上に、熟練であればあるほど、近づかさせないのがセオリーとなるために、普及しなかった。

 実際、俺にもできなかった。

 じいちゃんから直接指導してもらったことがあるにも関わらず、形すらできなかった。あまりにも複雑すぎて。

 しかし、死の淵に立たされてようやく、ようやく完成した。

 熱量を持った光とか、粒子の集まりとか、訳のわからないことを言ってたおじいちゃんだが、ここで理解したよ。

 魔将軍の槍を押し返し、出力を全開、大剣に形を変えて切り返す。

 魔法で造った武器は、質量を持った重量のない武器になる。

 魔将軍も見た目に惑わされたのか、受け止めようと構えたものの、短刀のように振った魔術の大剣に胴体を真っ二つに。

 戦争は終わったように見えたが、敵軍も止まる気配がなく、俺も止まらなかった。

 初の戦争、初の死に際を体験し、アドレナリンが出まくっていた俺は、怒りと恐怖が入り混じったような感情と興奮に任せて、残党を狩り続けた。

 人間の勝利である。

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