かまいたち
夜、草も眠る丑三つ時。
生暖かい風が肌を撫で、木々が不気味にせせりわらう。
追い詰められているのだろう。
仕切りに辺りを見渡しては、風の音かと安堵する。
そんなことを五度、六度繰り返す若者がいた。
欲の張った面を見せ、震える身体を叱咤する。
その時、一陣の風が吹く。
思わず目を瞑るほどの突風、だがそれが命取り。
目を開ければすってんころりん。今生の別れを告げている。
その時になって気づくのだ、鎌鼬の真相に。
「お、お前が……鎌鼬?」
そう言い遺し、事切れていく死体を、長い銀髪からのぞく真っ赤な瞳が、無機質に見下ろす。
「………また、間違えた?」
そう言い残し、夜の闇へと溶けていった。
♧♧♧♧
「おい、またやっただろ」
とある酒場で、対面に座る少女にそう詰め寄る。
が、暖簾に腕押し。
興味ないといった感じで、うつらうつらと船を漕いでいる。
「これで100件目だぞ」
そう言って掲示板のとあるスレを見せつけた。
怪異、鎌鼬というスレで最新更新日は昨日。もう既に10個目となるこのスレは未だに活発に稼働している。
「………だから?」
心底鬱陶しそうに、吐き捨てるように呟かれたそのセリフには困惑の色さえ見えてくる。
開き直りでもなんでもなく、純粋になぜ詰められているのか疑問に思っているんだ。
このやり取りも、十数回目なんだけどな……
「お前、PKしたんだろ?」
「した」
端的な返事。
サッカー用語がなんかと勘違いしてんなら、救いもあんのにな。
プレイヤーキル、略してPK。
MMORPGにおいて、まあまあ嫌われてる行為。
プレイヤーを殺しても経験値効率はあまりよくないが、普通のモンスターと違いお金やアイテムもドロップするので旨味はある。
ただ目に見える形で、それを大幅に超えるデメリットがまとわりつくので、好き好んでするような奴は少ない。
そして、それは目の前のこいつも例外ではない。
ビュー
場所外れの、急な突風が吹いた。
思わず瞑った目を、恐る恐る開ける。
酒場へと足を踏み入れた哀れな犠牲者2人の、首無し死体がドア付近に転がっている。入店と同時にやられたのだろう。
そして加害者はというと、首を傾げ不思議そうにこう呟いた。
「…………人違いだったかな?」