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第19話 ゴーレムとオアシス

 1日の休息を挟み、俺とマホロはオアシスへ向かう準備を始めた。


「ガンジョーさん、水を入れる水瓶(みずがめ)はいくつ持って行きますか?」


「1つさ。俺が背中に巨大な水瓶を背負う。いや、背負うというよりは作り出すかな?」


「それは……どういうことですか!?」


 徹夜明けのマホロが寝ている間、俺は暇を持て余していたわけじゃない。

 たくさんの水を安定して運ぶための方法をずっと考えていたんだ。

 そして……新たな力を生み出した!


「ガイアさん、形状変化(フォームチェンジ)だ」


形状変化(フォームチェンジ)、了解〉


 俺の体を構成する岩石の形状を変化させて、背中に大きな石のコンテナを作り出す。

 コンテナを作るのに体の石を使った分、手足や胴体が多少細くなるが問題はない。


 瓦礫で新しく水の入れ物を作って背負うよりは、こっちの方が総重量を減らすことが出来る。

 そして、総重量を減らせば移動速度もそれだけ上がる。


 それにしても、形状変化(フォームチェンジ)はいろいろ応用が利きそうだ。

 右腕に石を集めれば右腕だけを巨大に出来るし、脚に石を集めれば足長ゴーレムが出来上がる……というのはほんの一例で、これからもっと有効な活用方法を探していこうじゃないか。


「ガンジョーさんのおっきな背中と同じくらいおっきな水瓶なら、たくさん水を運べそうですね!」


「ああ! しばらくは生活に困らないくらいの水を運ぶつもりさ」


 地平線から太陽が昇り、荒野を白く照らし始める。

 出発の時がやって来た。


「ガンジョー様、この西の門を出て真っすぐに進めばオアシスに着きます。目印は大地を真っすぐに走る亀裂です。これに沿って歩いて行けば、確実にたどり着けるはずです」


「ありがとうございます、メルフィさん」


 今回はお留守番のメルフィさんが防壁の門を開けてくれる。

 目印は大地を走る亀裂。そして、俺の中の方位磁石(コンパス)だ。


 そもそもコンパスとは地磁気を利用して方位を知る道具。

 地の磁気……つまりは大地の力なので、ガイアさんも利用することが出来る。


 この世界が元いた世界と同じく惑星なのか、地磁気の仕組みも同じなのかはわからない。

 ただ、今の俺はこの世界の東西南北を完璧に把握することが出来ている。


 オアシスが瓦礫の街から真っすぐ西にあるなら、目印がなくともたどり着けるはずだ。

 とはいえ、流石に今回は初めてのことなので、メルフィさんに言われた通り地面の亀裂を一番の道標(みちしるべ)にして移動する。

 同時に方位磁石(コンパス)も利用してオアシスの正確な位置を記録しておこう。


「くれぐれもお気をつけて行ってらっしゃいませ」


 防壁の外へ出た俺たちにメルフィさんが深くお辞儀をする。


「必ず無事に帰って来ます」


「行ってきますっ!」


 こうして俺とマホロは亀裂に沿って荒野を進み始めた。


 ◇ ◇ ◇


 瓦礫の街を出て数時間後――


「はぁ……はぁ……」


 自分の足で歩き続けていたマホロに疲れが見え始めた。


「マホロ、無理はしちゃダメだよ」


「うぅ……そうですね、ガンジョーさん……。メルフィがいつも歩いている道を、自分の足で歩いてみたかったんですが……私では半分の距離も進むことが出来ません……」


 マホロはいつも自分のために危ない橋を渡っているメルフィさんの苦労を、自分の体で感じてみようとしたんだ。


 その気持ちは素晴らしい。

 ただ、無理をして体を壊せば、他でもないメルフィさんが悲しむことを彼女は知っている。


「マホロはよく頑張った。ここからは俺が君をオアシスまで連れていく」


「ガンジョーさんは私の足じゃオアシスにたどり着けないとわかってて、それでもここまで見守ってくれたんですね……」


「これでも元は人間だから、人の気持ちはそれなりにわかるつもりさ」


「流石はガンジョーさんです……!」


 マホロは荒い息をしながらも笑顔を見せた。

 疲れただけで、体に異常は出ていなさそうだ。

 このまま彼女を乗せてオアシスに直行する!


「マホロ、ちょっと嫌かもしれないけど……俺に肩車されてほしいんだ」


「肩車……ですか?」


「そうそう、後ろから手と足でガッチリと俺の頭を抱え込む感じでね」


「……わかりました!」


 昨日は臭いのことを気にして逃げ出したマホロだが、今日は俺の言う通り頭にガッチリと掴まってくれた。

 後頭部に彼女の体温を感じるが、臭いは特に感じない。

 だが、この話題にはそもそも触れないのがベターだろう。


「そこに乗ってもらった理由は、俺が走る時に一番揺れが少ないのが頭だからさ」


「えっ、ガンジョーさん走れるんですか!? こんなに大きくて重い体なのに……?」


「ああ、ゴーレムは走れる……はずだ」


 大きくて重い=遅いなら、俺の元いた世界に存在する乗り物たちは大体鈍足だろう。

 鋼鉄の塊で構成された彼らは、人間の何十倍も重い。


 だがしかし、そんな乗り物たちは人間の何十倍も速く動ける。

 それだけの力を生み出す、エンジンを積んでいるからだ。


 そして、ゴーレムにも魔力というエンジンがある――


「少しずつスピードを上げていくから、振り落とされそうになる前に言ってほしい」


「りょ、了解です……! ドキドキしてきました……!」


 位置について、よーい……ドン!

 頭の中で合図を出し、俺は一歩目を踏み出した。

 その瞬間、俺はゴーレムのすさまじい馬力を全身で感じ取った。


 出そうと思えば出せる。車のようなスピードも……!

 徐々にスピードを上げ、全身に強くぶつかる風を感じる。

 一歩一歩、大地を踏みしめる力が高まっていく。


「す、すごい……! 今までに乗ったどの馬車よりも速いです!!」


 風が流れる音の中に、マホロの声が混じる。

 流石にスピードを出し過ぎているか……?


「ちょっとスピードを落とそうか」


「いやっ! これぐらいがちょうどいいです! 風が気持ちいいです!」


「そ、そう? なら……これくらいで行こう!」


 爆走するゴーレムは土煙を巻き上げながら荒野を駆け抜け……そして。


「到着!」


 無事、オアシスにたどり着いた!

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