第6話 闇の勇者と魔王軍の部長
「カイル!」
悲痛な叫び声と共にノアールがカイルに駆け寄ろうとする。
「駄目!」
カイルの言葉もむなしく、ノアールも吹き飛ばされる。
否、飛ばされそうになりながら、腹の部分になにかを掴んでいた。
「おりゃ~!!! どっこいせ~~!!!」
ノアールが透明な何かを投げると大木に何かが当たる音が聞こえ、ぼんやりとその透明だった物の正体を現した。
リザードマン。
トカゲ人間。爬虫類のうろこと尻尾を持った人型モンスター。
カイルが拭き飛ばされたのはその尻尾の一撃だろう。
カイルはノアールが作ったこのチャンスを逃さないように、コンバットスーツを装着するとリザードマンとの間合いを詰めて、光の剣レーザーブレードを抜く。
「部長!」
ネーラがそのリザードマンを見て叫んだ。
知り合いなのか!?
カイルはとっさにレーザーブレードを引っ込める。
「甘い!」
リザードマンはネーラの言葉に動揺したカイルのスキをついて、連打でパンチとキックを繰り出す。
カイルは必死で防御をするが、完全には防ぎきれない。
戦闘アシスト、ナビちゃんが叫ぶ。
『警告! ダメージ蓄積。回復します。エネルギー残量70%』
コンバットスーツはエネルギーを消費して様々な武器やシールドを使用する。ダメージの回復にもエネルギーを消費する。
つまりはエネルギーが0%になると、コンバットスーツが使用できなくなるのだった。
そのあたりの説明はあの土の勇者との戦い前に、カイルはナビちゃんからレクチャーを受けていた。
リザードマンがくるりと回る。
来る! 尻尾の一撃!
カイルはガードをしたまま吹き飛ばされる。
「部長! 止めてくださいニャ!」
ネーラの言葉に、カイルの目の前でリザードマンの拳が止まる。
「なぜ止める? 君はこの人間に捕まっていたから、二週間も行方不明になっていたのだろう」
女性?
リザードマンの声を聞いて改めて顔を見ると、爬虫類と人間の美しさを兼ね備えた美しい女性だった。
「う……違いますニャ。道に迷っただけですニャ。そこをこの人達に助けて貰ったニャ」
ネーラは思わず下を向いてリザードマンの言葉を否定する。
「本当か!?」
美しいリザードマンの女性はギロリとネーラを睨みつけた。
「……本当ニャ」
「そうか」
ネーラの話を聞き終わったリザードマンの女性は、僕に向き直った。
「申し訳ありませんでした!」
リザードマンはピシッと直立すると九十度のお辞儀をした。
「申し訳ありませんで、済むか!!!!」
ドォン!!
地面が揺れるほどの震脚からのボディーブロー。(レバー斜め上+大パンチ)
ノアールのボディーブローをリザードマンはその右手で受け止める。しかし、リザードマンの身体は浮き上がる。
そしてノアールの追撃。
ワンツー。(小パンチ、大パンチ)
身体が浮いたままのリザードマンはノアールのパンチを捌く。
そして飛び二連蹴り。(レバー下半周+小大キック同時押し)
距離の取れなかったノアールの跳び蹴りは威力を出し切れず、リザードマンは防御すると、お互いに少し離れた場所に着地する。
「やるわね」
「あなたもね」
「でも、あたしのカイルに手を出した事は許さないわよ」
「それは申し訳ありません。謝罪と賠償はさせていただきます」
「いかほど?」
ノアールとリザードマンはお互い、悪そうな顔をして話し始めていた。