第67話 ノアールのコンバットスーツ
「終わった?」
カイルは体中から力が抜けるのを感じ、倒れそうになる。
ガチャン。
ノアールはコンバットスーツを着けたまま、カイルを受け止めた。
「ありがとう、ノアール。でも、その姿は?」
「詳しい話は後よ。早くここを離れましょう」
ノブナガを倒したとは言え、ここは王都である。まだほかに敵が出てくるかも知れない。
「そうだね。ネーラも心配ですから。ナビちゃん、飛行機が出せるエネルギーはある?」
『先ほどの戦いで炎を吸収しましたので大丈夫です』
カイルはジェット機を召喚して、ノアールと二人で乗り込んだ。
「カイル、これ何なの? 大丈夫?」
ノアールは生まれて初めて見るジェット機に驚きながら、カイルに尋ねた。
「運転の仕方は分かっていますから、大丈夫です。念のために、コンバットスーツは装着しておいてください」
「わ、わかったわ」
二人は乗り込むと、カイルはジェット機を発進させた。
ジェット機は爆音を立てて垂直に離陸した。
「それじゃあ、行きますよ」
そう言うと、カイルはドギンラに向けて発進した。
カイルとノブナガの戦いで崩壊寸前だった王城は、ジェット機の発進の衝撃で完全に崩壊したのだった。
「それで、そのコンバットスーツはどうしたのですか?」
ジェット機が安定運転になったところで、カイルはノアールに訊いたのだった。
「これはあなたがくれたのよ」
「どういうこと?」
「あなたがくれた結婚指輪がコンバットスーツの鍵だったのよ」
カイルの父親ギャバリアンから受け継いだ指輪はただの遺品ではなかった。ギャバリアンが使用していたコンバットスーツの鍵だったのだ。崩れる王城のなか、カイル達の戦いを見ていたノアールは、カイルの危機を見て、神様に祈ったのだと言う。「カイルを助ける力が欲しい」と。そうすると指輪からナビ君の声が聞こえたらしい。「蒸着せよ」と。
「そうだったんですね」
カイルは愛に助けられたのだと理解したのだった。親であるギャバリアンの愛。そして恋人のノアールの愛。
「ありがとう、ノアール。僕は助けられてばかりだね」
「何言ってるのよ、夫婦はお互い助け合うものよ」
ノアールがそういったとき、ナビちゃんとナビ君がアラームを出した。
『ドギちゃんから緊急連絡です。ネーラの容態が急変したようです』
「どう言う状態ですか!?」
『心臓が停止しました』
「どうにか助けてください!!!」
『ドギちゃんが蘇生作業を継続中ですが、ネーラの気力次第です。早く元気づけてあげてください』
「ノアール、飛ばします」
「分かったわ。あたしにかまわずに急いで」
カイルはスロットルを全開にすると、ジェット機は軽く音速を超えて、衝撃波をまき散らしながらドギンラへ急ぐのだった。




