第64話 第六天魔王
ロケット弾の爆発に耐えきらなくなった部屋のあちらこちらが崩れ始めた。それは、城全体に及んだ。
カイルはこのまま城にいては危険と感じて、爆風に紛れて城の外に飛び出した。
城の庭には城から逃げ惑う人達にあふれている。
カイルが外に出た瞬間を狙い、ノブナガが攻撃を仕掛けてきた。
カイルはそれを反射的に殴りつけると、ノブナガは吹き飛び、城壁まで吹き飛んだ。
「つ、強い」
ノブナガは壁に背を付けたまま、つぶやいた。
カイルはゆっくりとノブナガに近づくと、ノブナガは手をカイルの方に向けて叫んだ。
「ちょっと待ってくれ! 参った。もう、お前達には手出しせんから、助けてくれんか?」
ノブナガは突然、命乞いをし始めた。
カイルはレーザーブレードを手に油断なく立ち止まって確認する。
「それは本当ですか?」
「本当も嘘も、普通に考えたら、嘘じゃろう」
ノブナガはそう言うと手に持っていた刀を投げつけた。
カイルが刀を避けると、刀は自分の意志があるかのように空中で方向転換をして再度襲いかかった。
レーザーブレーで刀を切りつけると、刀はあっさりと真っ二つに折れた。
「第六天魔王!」
カイルが刀に気を取られた隙にノブナガがスキルを発動したのだった。ノブナガの周りには六体の精霊王が現れる。火、水、風、土、光、そして闇の精霊王の六体だった。
「この技は使いたく無かったんじゃがのう。お気に入りの一本だったんでな」
ノブナガのスキル第六天魔王はその強大な力を持つ精霊王を六体も召還するため、代償が必要になる。今回の代償はノブナガの愛刀、備前長船光忠だった。
カイルは油断なく六体の精霊王とノブナガを見る。
精霊王たちは一体一体が恐るべき戦力を持つのだが、それを六体も召喚する。対軍隊に使用されるノブナガ最強のスキルだった。
「ナビちゃん、多人数モード発動。対象は目の前の七人」
『了解です。ロックオン完了。来ます』
地面から石の槍がカイルに襲いかかる。
ジャンプで避けると、突然の暴風でカイルを体をもみくちゃにされる。一瞬、自分がどっちの方向を向いているのか分からなくなった瞬間に地面が目の前に迫っていた。カイルは石の槍を気にしながら、片手で逆立ちをするとすぐさま、地面に降り立った。
カイルの目前に円盤状の物が無数に飛んできた。光に煌めくそれはダイヤモンドのカッターだった。
カイルは避けて、はじいて致命打を避ける。高速で回る薄いダイヤモンドの円盤はコンバットスーツを削る。普通の鎧であれば鎧ごと真っ二つにする威力。
『カイル。後ろからも来ます』
避けたはずの円盤は風に乗って戻ってきた。
カイルはレーザーガンを実弾モードにして、連射して円盤をたたき落とすが、銃弾をすり抜けた円盤がコンバットスーツをどんどん削っていく。
「ナビちゃん、修理をお願い」
『了解。警告! 巨大な熱源が上空に出現!』
カイルが見上げると巨大な炎の球がそこにあった。それはまるで太陽が落ちてきたようだった。
「ナビちゃん、全身シールド! 強度マックス」
そう指示しながらロケット弾を炎の球に撃つ。爆風で炎の球を吹き飛ばすつもりだった。
ロケット弾が爆発すると、その爆発は炎の球に吸収されて、炎の球は一回り大きくなってしまった。
炎の球が落ちてくると、それを受け止めるようにカイルは左手を炎の球に向けた。
「吸収モード!」
炎を吸収するが、その半分も吸収出来ないまま、カイルは炎に包まれた。
ダイヤモンドの円盤に削られた部分から炎が侵入してくる。皮膚を焼く痛みに耐えながら炎を吸収すると炎は小さくなった。
耐えた。と思った瞬間、カイルは水の中にいた。
空から巨大な滝のように水が降り注いでいたのだった。
「緊急呼吸モード」。
コンバットスーツから出てきたマウスピースを咥えて、溺死するのを防ぐ。
『警告! 水温急激低下』
ナビちゃんの警告にカイルは水中から逃げだそうとするが遅かった。
水が一瞬で凍り、カイルは氷山に閉じ込められてしまった。
「ああ、失敗したのう。小僧の心臓から鍵を取り出さねばならんのに、氷棺にしてしもうたら後が大変じゃったわ」
城と同じくらいの氷山を見て、ノブナガが無造作に頭を掻いてつぶやいた。




