第57話 カイルの訓練の終わり
次に現れたのはカイルが見上げるほどの大男だった。
この男も自分の事をコーチと名乗った。
カイルは大男から無手での体術を習うことになった。
「この世界は精神世界ではあるが、ここでの死は君の精神の死に繋がりますから気をつけるように」
大男はまず、カイルに重要事項を告げた。
つまり何%かの人間はこの訓練で死んでしまい、廃人となるようだった。
細身の男から自分の肉体操作を覚えたカイルは、大男からは他人の重心の操作を、身体の反射の使う術を、行動の出だしなどを学んだ。
そして、自分の肉体の最大限の使い方を学び、無手で人を壊す術を学んだ。
地形は建物の中であったり、森の中であったり、海岸であったり、夜であったりと色々な状況に合わせて変化する。
そして、数十年が過ぎ去った。
次のコーチは女性だった。
女性は飛び道具のコーチだった。
投石などの投擲武器を初め、弓矢、物理銃弾の銃、ロケット弾、レーザー銃等を学んだ。
遠距離からの狙撃、近接銃術を初めあらゆる条件での飛び道具の戦い方をカイルは学んだ。
その次は背の高い男だった。
剣、槍、短剣、棍棒など中、近接武器をカイルは学んだ。
そして、多人数戦を学んだ。
多人数戦と共に、ドギンラの使い方、コンバットスーツで製作できる機械の扱い方を学んだ。
「僕が最後のコーチです」
そうして現れた男性は黒い髪をした優しそうな人だった。
「最終訓練は僕との一対一の戦闘訓練になります。僕に勝てば全ての訓練が終了となります。これまでの訓練を生かして生き残ってください」
一度目の戦闘は十秒も持たなかった。
これまで長い間トレーニングして、カイルは自分が強くなったと思っていた。実際には強くなっている。しかし、それ以上に目の前のコーチは強かった。
「カイル。守りたい人がいるんだろう。こんなところで立ち止まっていて良いのか?」
コーチはそう言って微笑んだ。
それからカイルは何度も死にそうになった。
これまでの訓練でも何度も死にそうになってきたが、これまでの比ではなかった。
血反吐を何度も吐き、骨折をして、激痛に襲われる。
そのたびにノアールを思い、ネーラを思い耐えた。もう、百年をとうに超えているはずだが、一度たりとも二人の事を忘れたことがなかった。そしてノブナガのことも。
~*~*~
何十年が過ぎたころ、とうとうカイルはコーチを倒した。
それは偶然でもコーチが油断したわけでもなかった。
「よくやったな、カイル」
レーザーブレードを首元の突きつけられたまま、コーチはそう言った。
言われたカイルには一ミリも油断なく構えたままだった。
「寂しくなるが、これでお別れだ。あんなに小さかったお前が、僕を越えるとは嬉しいよ」
「ありがとうございます。お父さん」
「……気がついていたのか」
「なんとなく……」
「そうか、一緒にいてやれなくてすまなかった」
カイルの父ギャバリアンは頭を下げた。
それに対してカイルは頭を横に振った。
「僕を守ってくれてありがとう。そして、僕をあの人達に預けてくれてありがとう。僕は幸せです」
「そうか……そろそろ時間だ。カイル」
ギャバリアンは初めてカイルを優しく抱きしめた。
「これを持って行きなさい。では、さようならだ。愛しているよ、カイル」
そう言って指輪をカイルに渡してギャバリアンは消えてしまった。




