第55話 カイルの覚悟
カイルとドギちゃんはナビちゃんの案を聞いたあと、ドギちゃんがカイルに尋ねた。
『その案が成功するには、カイルがノブナガを倒さなければなりませんが、ノブナガを倒す自信はありますか?』
カイルはノブナガとの戦いを思い出した。ドギンラの中だから飛び道具が使えなかった。
しかし、レーザーガンやバスターキャノンを使用したとしても倒せるのだろうか? さっきの戦いで、ノブナガまだまだ本気を出していないように感じた。今のままでは勝てる気がまったくしなかった。
「恐らく、勝てません。しかし、差し違えてでもノアールを助け出します」
『カイル……トレーニングをしてみませんか?』
ドギちゃんがカイルに提案した。その言葉は何やら言いにくそうな雰囲気をまとっていた。
修行。
カイルはこれまで戦闘訓練らしい事はしていない。ナビちゃんのサポートとコンバットスーツの性能でこれまでの強敵を排してきた。それがノブナガとの戦いでの敗因の一つと言っても良い。そして、そこが伸びしろでもあった。しかし、ノブナガの区切った期限は10日後。たかだか10日間トレーニングを積んだとしてもどうしようも出来ないだろう。そうカイルは考えた。
『たった10日の修行では何の役にも立たないと思っているのですね。私もそう思います。では10,000日。約27年間の修行ではどうでしょうか? それも一流の戦闘員をインストラクターの元で』
「どういうことですか?」
『ドギンラの中にはトレーニングシュミレーターがあります。カイルの脳とシュミレーターを接続して、訓練を行うことが出来ます。そして、そのシュミレーター内の時間を10,000倍まで加速することが出来ます。つまり、シュミレーター内では10,000日修行しても、実際には1日しか経っていません。どうですか?』
カイルはドギちゃんの言葉をかみしめるように理解して、答えた。
「分かりました。ではその訓練を9日間お願いします」
『9日間はダメです。この訓練は脳内速度を無理矢理引き上げるため、1日行った場合、10%の確率で廃人になってしまいます。9日間だと90%の確率で廃人になります』
「つまり、10%は大丈夫なんですよね。ネーラが助かる確率も10%と言いましたよね。ちょうど良いです。ネーラの分も僕がその確率を掴んできます。それに僕はもう誰にもノアールを僕の仲間を傷つけさせたくないのです。トレーニングが出来るならギリギリまでお願いします。ドギちゃん」
カイルはその手から血が出るほど自分の手をぎゅっと握りしめていた。
ドギちゃんにもそのカイルの悔しさが伝わってきた。
自分にもっと力が合ったならばネーラは傷ついていなかった。自分に力があったなら愛するノアールを連れて行かれなかった。そんなカイルの思いをドギちゃんも感じたのだった。
『……分かりました。ただし、異常が見られたときにはすぐに訓練を中止します。それと並行して、カイルの心臓より鍵の取り出し手術を行います』
「お願いします!」
こうしてカイルはドギンラの超加速トレーニングシュミレーターに入ったのだった。




