第48話 カイルの出生
ノアールの父アズワルドは、これまで一度も言わなかったカイルの親について話し始めた。
「カイルと出会ったのはノアールが生まれて一年が経とうとした頃だった。裏山に空から何かが落ちてきたたんだよ」
「ちょっと待って、お父様。カイルの両親の話ですよね」
「ノアール、まあ最後まで聞きなさい」
アズワルドの言葉にノアールはおとなしく話を聞くことにした。
「そこで、僕は裏山の様子を見に行ったんだ。夜だったこともあり、僕はひとりで裏山に向かったんだ。アテルに怒られた時は良く、裏山に行って泣いてたから僕は裏山には少しばかり詳しかったんだ。そして、僕は落ちた物を見つけたんだよ。何だったと思う? なあ、何だと思うノアール。当たらないと思うけど」
カイルの話のはずなのにカイルの事が一向に出てこなくてノアールは少しイライラし始めた。そんな状態で得意満面な笑顔のアズワルドが問いかけて来ていらだちが頂点に達した。
「お父様、あなたが泣いた話もクイズもどうでも良いです。早くカイルの話をしてください。怒りますよ」
ノアールは食事用のナイフを手にして、ぎろりと睨んだ。これ以上無駄な話をするとナイフを投げるぞと言わんばかりに。
アズワルドは、愛娘がそんな顔をしているときは逆らわない方が良いと経験上知っていた。
「あ、ああ、そこには何やら銀色の大きな鯨があったんだ。僕が驚いていると、銀色であちこちが光っているボロボロの鎧をつけた男性が出てきたんだ。その男性は赤ちゃんを抱いたんだ。それがカイルだったんだよ」
「もしかしてその鎧ってこんな感じではないですか?」
カイルはコンバットスーツを身につけた。
それを見たアズワルドは目を見開いて驚いた。
「そうそう、それだ。そんな鎧を身につけていたな。やっぱり親子だな」
「それでカイルのお父さんは今どこにいるの?」
「亡くなったよ。銀色の鯨が落ちた衝撃なのか、その前からなのか、僕に会った時には致命傷を負っていてね。カイルを僕に預けると、亡くなってしまったよ」
カイルは黙ってアズワルドの言葉を聞いていた。
自分の話ではあるが、どこか他人の事を聞いているようだった。
自分の出生が気にならない訳ではなかった。しかし、我が子と同じように愛情を注いでくれた育ての親が目の前にいる。物心ついた時から一緒にいるノアールが側にいる。自分の為に全てを捨てる選択をしてくれたノアール。それ以外に何が必要だろうか?
それがカイルの気持ちだった。
でも……
「ねえ、カイル。気になるんでしょう」
カイルの顔を見たノアールがカイルの気持ちを代弁した。
しかし、本当の親の事を知ることは、目の前にいる育ての親を裏切る事になるような気がして素直になれない。
カイルは静かに首を横に振る。
「そう……じゃあ、あたしひとりで行ってくる」
ノアールはにっこりとカイルに笑いかけた。
その顔にカイルは困ったような顔を向ける。
ノアールは言葉でそっとカイルの背中を押した。
「カイルも一緒に行くでしょう」




