第41話 幽霊屋敷の所有者
カイルはコンバットスーツを装着すると、襲いかかってくる大量のレイスに左手を向けた。
「ナビちゃん。吸収モード」
カイルの左手に次々と吸い込まれて行くレイス。
唖然とするネーラ。
「きゃー! 止めて!」
カイルの後ろから先ほどの女性のレイスがカイルを止める声を上げる。
その声を無視するカイル。
「カイル、ちょっと待ってあげなさい」
ノアールの言葉にカイルは吸収するの止める。
その時には三分の二ほどのレイスが吸収されていた。
「とりあえず、不法侵入したのはこちらだから、止めさせたけど、襲ってくるならあなたも含めて全員吸い込んじゃうけどね。それで、なんであなたたちはここを占拠しているの?」
ノアールはレイスに恐れること無く、気負うこと無く、ただ疑問をぶつけた。
「すみません。ちゃんと話をしますので、私の部屋で聞いていただけますか? この方がたには私から話をしますので、皆さん、部屋に戻ってください」
女性レイスがそう言うと、廊下にいたレイス達はおとなしく部屋に戻っていった。
それを見たカイルはおとなしく、V.I.Pルームに入った。
その後ろにひっついてネーラも部屋に戻る。
「それで? なんでこのレイスのたまり場になっているの? あなたは誰?」
全員が部屋に入ったのを確認して、ノアールは再度、尋ねた。
「私の名前はマリーヌと申します。このホテルが私たちのたまり場になったのではないのです。ここは元々私たちの墓地だったのですが、その上にホテルが造られてしまったので、ホテルをたまり場にするしか無かったのです」
マリーヌの話を信じると、レイスたちが先で、ホテルがレイス達の居場所を奪ったと言うことだろう。
そうすると、このホテルは完成してすぐにレイスに乗っ取られた事になる。
「あら、それはかわいそうね。ちなみにホテルは無人とは思えないほど綺麗だけど、誰が掃除をしているの?」
「それは私たちが当番で掃除をしてます」
「レイスって掃除出来るの?」
「はい、短時間であれば物に触れます」
マリーヌの話を聞いて、ノアールはしばらく考え込んで口を開いた。
「じゃあ、このホテルの所有者はいないのね。私がこのホテルを貰うわ。そしてあなたたちを従業員として雇ってあげる。そうすれば、あなたたちが誰かに祓われることなく守ってあげられるわよ」
「え!? あなたが……そうですね。私たちの居場所をつくってくれるのであれば」
「約束するわ。人だろうか、魔族であろうが、幽霊だろうが受け入れてあげるわよ」
マリアーヌはお股を押さえている魔族のネーラとよく分からないピカピカ光る金属の鎧を着けたカイルを見てノアールの言葉を信じた。
「それでは、お願いします」
マリアーヌがそう言うと、先ほどから心配そうに部屋をのぞいていた他のレイス達が歓声を上げた。
話がまとまったと分かったネーラはノアールの服の裾を引っ張った。
「ねえ、ノアール。ちょっとトイレ行って良いかニャ?」
「また、お漏らししたの?」
「ちょびっとニャ!」
ネーラは急いでトイレに駆け込んだ。




