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第33話 風の勇者の実力

 船が大きく揺れた。

 突然の揺れにカイルの態勢が崩れた。

 ゴン!

 クリスの弓がカイルの頭を横殴りにする。

 カイルは転がりながら、クリスを見ると弓の上下の部分、(うら)ハズ、下ハズの部分に刃が付いていた。その部分で殴りつけられたのだ。

 クリスが持っている弓は剣の間合いでも戦える特殊な物だった。

 そして、カイルが転がり、距離が取れた瞬間に矢が放たれる。

 カイルはすぐに片膝立ちになると、慌てて盾で受けた。

 盾に矢が当たる衝撃が手に伝わった瞬間、カイルの後ろ首に衝撃が走った。それも一発ではない、何発もだ。


「な、どこから!?」

『カイル、すみません。クリスから数発同時に放たれた矢でした。カイルと関係ない方向に飛んだので、追跡していませんでした』


 カイルの言葉に、ナビちゃんが謝罪の言葉を述べた。


「クリスから放たれた矢は最後まで追跡をお願い」

『了解!』


 容赦なく射られる矢をレーザーブレードと盾で落としながら、先ほどと同じように間合いを詰める。

 クリスは間合いが詰まると、弓を長刀のように振る。その動きは弓兵の動きではなかった。

 無駄のない流れるような動きでカイルの攻撃は風のようにすり抜け、クリスの攻撃は吸い込まれるように当たる。その上、攻撃の合間に撃たれる矢は、ことごとくカイルの後ろ首に当たる。

 そして、カイルの攻撃がクリスに決まろうとすると必ず、激しく風が吹き、船が揺れて態勢を崩す。あまりにも不自然に。


「もしかして、風を操っていますか?」

「……さてね」


 カイルはその言葉に確信した。

 戦う場所を間違えた。相手は風で船の揺れを利用できる。矢はその風によって自在に操られる。

 まっすぐ撃っていた矢も、曲がり始め、盾をすり抜けてきた。

 コンバットスーツの防御力によって致命傷になってなっていないが、その防御力は確実に削られていく。

 それがとうとう、臨界点を迎えた。

 ずっと狙われていた後ろ首の部分に穴が開いた。

 それはクリスも気付き、ニヤリと笑った。


「なかなか硬かったですが、やっと開きましたか」


 クリスは弓矢を放った。

 カイルは狙われるであろう後ろ首に手を当てて、穴が開いた部分を守ろうとする。

 そのカイルとの間合いを詰める。弓使いであるはずのクリスが。

 慌てて迎え撃とうとしたカイルはまた、船の揺れに態勢を崩された。


「さようなら」


 クリスはカイルの足を弓ですくい上げた。

 カイルの身体は見事に空中に舞い、そのまま湖へ落とされてしまった。


「そんな鎧を身につけていれば、上がって来られないでしょう。鎧を脱げば毒の餌食ですし、毒に耐えたとしても頭を出した瞬間、苦しまないように一発で打ち抜いてあげますよ。まあ、鎧を脱がなくても穴から入った水で溺れるか、毒で死ぬでしょう」


 クリスは、二人の戦いを見守っていたアイクに説明をしていた。

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