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第30話 アマデウスの危機

「ねえ、これであたしたち、パイモニアが出した条件ってクリアしたんじゃないの?」


 四大伯爵家のひとつ、クーリエ家を完全に手中に収めたノアールはカイルとネーラに問いかけたのだった。

 ノアールは闇の勇者に選ばれたカイルを不当にも亡き者にしようとしていた、にっくきカタリナは当初から復讐をするつもりでいた。そこに魔王軍から四大伯爵家のひとつを手に入れろと言われて、迷う必要が無くなった。

 そして予定通り、ノアールの手中に落ちた。

 あとは魔王軍の力を盾に王国に独立を認めさせるだけだった。

 そのためには魔王軍との同盟を強固な物として、王国に見せつける必要があった。

 ノアールは近いうちに魔王との会談を考えていた。

 その日程をネーラに任せて、その回答を待っていたある日だった。


「大変ニャ!」

「どうしたのよ。うるさいわね。おねしょしたならメイに言って布団を干して貰いなさい」


 ノアールは事務仕事をこなしながら顔を上げることも無くネーラに答えた。


「毎日、メイさんに寝る前にはトイレに行くように言われているから、今日はおねしょしてないニャ! そうじゃないニャ! アスデウス様が大変ニャ!」

「あら、そう。お漏らし癖は治ったのね。よかったわね……って、え!? なに? アスデウスちゃんが何だって!?」


 魔王軍四天王のひとりアスデウス。

 恋愛大好きな人魚姫。

 ノアールとカイルの関係性を聞き、魔王軍の中で一番はじめにノアールたちの肩をもってくれたのだった。

 ベレートとの模擬戦の後、熱を出して寝込んだカイルを看病するノアールを手助けし、支えてくれたノアールの心の友アスデウス。

 ふたりはノアールちゃん、アスデウスちゃんと呼び合う仲だった。


「ネーラ! その話を詳しく話して!」


 ノアールはネーラの首根っこを捕まえると、前後に揺さぶり始めた。


「ニャ、あっ、ニャニャニャ。よすニャ。話せないニャ! 話すから離すニャ!」

「だれがダジャレなんて言ってるのよ! さっさと話しなさい! アスデウスちゃんがどうしたのよ!」

「ノアール、ちょっと落ち着いて。そのままだとネーラが死んじゃいますよ」


 カイルの仲裁で、ノアールはやっとネーラから手を離したのだった。


「げっふぉん、げっふん。ひどいニャ」

「早く言いなさい! また、首を絞めるわよ」

「分かったニャ。アマデウス様が大変ニャ!」

「それは分かったわよ。何が、どう、大変なのよ!」


 ノアールはまた、ネーラにつかみかかりたい気持ちを抑えて、話の続きを待つ。


「アマデウス様の住む湖に、人間どもが攻め込んできたニャ」

「それだけ?」

「それだけって……なんニャ、ノアールはアマデウス様のことが心配じゃないのかニャ!」

「だって、アマデウスちゃんの湖でしょう。人間が何万人に攻めてきたって敵じゃないでしょう。水の中に入れば弓矢も効かないでしょうし、水中に引きずり込めばアマデウスちゃんに敵うはずがないじゃない」

「それが、どうやら人間どもは毒を使っているらしいニャ。それもバジリスクの毒ニャ。その毒を湖に流したニャ」


 バジリスク、その姿は禍々しい巨大なトカゲ。

 バジリスクと目が合った者は石化してしまい、その血には強力な毒が含まれており、浴びたものは皮膚が焼けただれ、血を吐いて死ぬという。そのバジリスクの血を湖に流し込んだようだった。


「それって大変じゃない! なんで早く言わないのよ、この駄猫! 至急、助けに行くわよ。アイリーンを呼んでちょうだい!」

「ちょっと、待った、ノアール。助けに行くと言っても、どうするつもりだ? 騎士団を動かすにしても、国王軍にこちらから仕掛けるのは、騎士団も納得しないだろう。それに行軍で湖まで何日かかると思ってるんだ」


 ネーラの言葉に焦るノアールをカイルはなだめた。


「でも、アマデウスちゃんを見殺しにするなんて、あたしには出来ないわよ」

「僕もそうだ。だから僕が行くよ。ノアールは待っていて」

「嫌よ! あたしも行く! アマデウスちゃんもカイルも心配だもの」

「じゃあ、三人で行くニャ。そろそろ、魔王様へ報告に行こうと思って、ワイバーンは借りてあるニャ」


 こうして三人はアイリーンとアルパカに何も告がずにアマデウス救出作戦に出かけたのだった。

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