第26話 水の勇者との戦い
カタリナの命を奪うべく振り上げられたトーマスの剣は、どこからともなく飛んできた短剣によってはじかれた。
「何をしている!」
海のような水色の髪をして鍛え上げられた背の高い細マッチョな身体。キリリとした瞳、高い鼻のイケメンがそこにいた。金属製の鎧に身を包み、その鎧には龍の意匠を施せれていた。
「お前達! そこに正義はあるのか!?」
「アクア様! なぜここに!?」
イケメンの隣には水色の長い髪を結い上げてアップにした気の強そうな女性が胸を張って立っていた。
その女性を見てノアールは、その名を叫んだのだった。
彼女の名前はアクア・フェラガモ。
四大貴族の筆頭フェラガモ家の長女にして、ローヤル王国の令嬢会のトップ、アクア・フェラガモがそこにいた。
「領民を虐げ、私や闇の勇者を不当に陥れ、殺そうとしたのです。その報復をする事に何の問題があるのですか?」
「そこに第三者の判断は入っているのか? 国王陛下の判断は、ノアール、君の反逆罪となっている。申し開きは閣下の前でやって貰おう。しかし、クーリエ候殺害の罰は免れないと思え」
「……」
アクアの言葉に黙り込むノアールだった。
憧れのお姉様であるアクアから、国王反逆とクーリエ伯爵殺害の罪を問われて、言い返せないでいた。
「そ、そうよ。この汚物が悪いのよ。お父様を殺した罪を償いなさい!」
アクアの登場に息を吹き替えしたカタリナは立ち上がり、ノアールを罵倒し始めた。
アクアの言葉に水色の髪のイケメンがノアールの腕を掴もうとした。
「ノアールには指一本触らせません」
そのイケメンの籠手を払ったカイルはそう宣言した。
「キミは?」
「彼女の従者カイルと申します」
「ああ、キミか。闇の勇者になりながら、陛下の命令に逆らった反逆勇者は。僕は水の勇者に選ばれたランスロットだ」
正式な王国騎士団の鎧に身を包んでいる水の勇者ランスロットは堂々と名乗りを上げた。
カイルはランスロットを睨みながら、ノアールに問いかける。
「ノアール、君の正義は僕の正義だよ。何をうつむいているの。自信を持って!」
「カイル……そうね。もう、ここまで来たのだもの。ここであたしが折れたら、あたしに付いて来てくれた人達に申し訳ないわね」
ノアールは顔を上げて、アクアをまっすぐ見据えた。
「アクア様、国王が間違っていると判断したから、今のあたしがいます。あたしはあたしの正義に従って行動しています。憧れのアクアお姉様とはいえ、この正義を曲げることは出来ません!!!」
「ふふふ、いい目をしているわね。良いでしょう。あなたがあなたの正義を信じるというのならば、実力でその正義を貫きなさい。ランスロット! その二人を殺しても良いから捕らえなさい!」
こうしてノアールはローヤル王国貴族令嬢全ての憧れアクア・フェラガモと対峙することを決めたのだった。
アクアの言葉にランスロットは七色に輝く剣を水平に構えた。
「流水双覇剣!」
その剣から放たれた、水で出来た二匹の龍がカイルとノアールに襲いかかった。
「危ない!」
カイルはその龍から庇うようにノアールを押しのけると、ノアールの身体は柔ら芝生に倒れ込んだ。
大きな悲鳴がひとつあがり、ノアールは慌ててその方向を見た。
そこにはコンバットスーツを身につけたカイルが一匹の龍を受け止めていた。
そしてもう一匹の龍は脂肪だらけのカタリナの身体を真っ二つにしていた。
ノアールのすぐ側にいたカタリナが巻き込まれたのだった。
「さあ、悪役令嬢カタリナがなくなったところで、感想アンド評価が欲しいニャ!」ネーラ
「何やってるのよ、この馬鹿猫は!」ノアール
「あたいはもっと評価されていいはずニャ!!!」ネーラ
「そんなのだから、十年もいて主任どまりなのよ!」ノアール
「ノアールはひどいニャ」ネーラ
「まあ、まあ、二人とも落ち着いて。まだ、これから先も続きますのでよろしくお願いいたします」カイル




