第18話 支店長との約束
カイルは反射的に左手で火の玉を受け止める。
『吸収モード稼働します』
ナビちゃんは自動的に火の玉を吸収する。
「いける!」
カイルは飛んでくる火の玉を次から次へと吸収した。
「何それ! ズルい! でも、限度って言う物があるだろう。これならどう?」
そう言ってベレートはバンザイをすると、その両手の間に火の玉がだんだんと大きくなり、カイルを包み込むほどまで大きくなった。
「支店長! ここでそんな物使わないでください!」
「やーだ! あとの処理は任せたよ!」
「客人! 離れてください」
観客席にいるバララムが、ノアールとアイリーンを庇っているのをカイルは確認した。
「ナビちゃん、大丈夫?」
『分かりません。かなりの高エネルギーです』
「ちなみに今のエネルギー残量は?」
『83%です』
「それって……」
カイルが全てを言い終わる前に、巨大な炎の玉が飛んできた。
避けることも出来ない。受けることも出来ない。
カイルは炎の玉を左手を受け止めて、吸収し始める。
ほんの少し小さくなる炎の玉。
『エネルギー残量100%! 100%!』
ナビちゃんの悲鳴にも似た警告がカイルの頭に響く。
「なんとか持って!」
炎の大きさはほとんど変わっていない。
カイルの左手が熱で赤く光る。
「カイル! 頑張って!」
ノアールがバララムに引き留められながら、闘技場に乗り出しながらカイルに声をかける。
そうだった。こんなところでつまづいている暇はカイルにはなかった。自分のために国王にまで逆らったノアールのためにも、力をつけなければならない。
「僕は、ノアールを守るんだ!!!」
『リミッターを解除します!』
カイルの雄叫びに答えるように、炎の玉はどんどんとカイルの左手に吸収されていった。
「え~アレを吸収しちゃうの!? じゃあ、次は……」
誰よりも驚いたのは炎の玉を放ったベレートだった。
そして、楽しそうに次の攻撃をしようとするベレートにカイルは両手を挙げて言った。
「すみません。降参です」
そう言うとコンバットスーツを解除してその場に座り込んだのだった。
コンバットスーツがオーバーヒートを起こしたのだった。
「えーもう、おしまい?」
「支店長! あなたもあんな大技を使ったんですから、疲れたでしょう。今日はその辺にしてください。明日からの仕事に差し支えます。これ以上やると、魔王様に報告しますよ」
紳士の牛顔はベレートにストップをかける。
ベレートもカイルと同じようにその場に座り込み、ほっぺたをぷっくりと膨らませて、不満をあらわす。
カイルはゆっくりと立ち上がると、ベレートに近づき、手を差し伸べた。
「ありがとうございました。また機会があれば、お手合わせ願います。その時にはもう少し強くなっておきますので」
そう言って爽やかに笑うカイルの手を取ったベレートは、カイルをグッと引き寄せるとカイルの唇を奪った。
「よし! 約束だよ」
そう言って、ベレートはにっこり笑った。
「くぉら~! どいつもこいつも泥棒猫は!!! あたしのカイルに手を出すな!」
ノアールは観客席の壁をひとっ飛び乗り越えると、ベレートに跳び蹴りをかまそうとする。
その首根っこをバララムが掴んで止めた。
「客人! 申し訳ない。アレはケット・シーの習慣で、約束を結ぶ儀式なんです。決して人族で言うところの愛情表現ではないので、どうか穏便に済ませてください」
「そんな、都合のいい話があるか!!!」
バララムに掴みあげられながら暴れるノアール。
「そうだよ。何だっけ? 人族だと小指落とすのだったけ?」
「支店長、それは詫びるときです。人族では指切りです」
「やっぱり、指切るんじゃないか! 野蛮だな、人族は」
「話がややこしくなるので、支店長はちょっと黙っていてください! そういうわけなので、許してやってください」
低姿勢のバララムにノアールの怒りを収めるしかなかった。
「まあ、良いわ。分かった。それより、カイル。こっちに来て」
カイルはノアールの元へやってくると、ノアールはカイルの左手を触って確認した。
「左手……大丈夫?」
「うん、まあ、なんとか」
「良かった。あとこれ、上書きね」
そう言ってノアールはカイルの唇に自分の唇を重ねたのだった。




