閑話 とあるカップルの七夕
閑話がマスターに支配されてくカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ
あ、忘れてた七夕ネタです( * ॑꒳ ॑*)⸝⋆。✧♡
七夕という行事は、色んなところで笹に願いの書いた短冊が下げられているというのが一般的だろう。叶う叶わないではく、そうして楽しむもの……そんなことを娘が幼い頃に言ってたのがよく覚えてる。
……当時は5歳児なんだから、もう少し夢を見てもいいと思うのだが……女の子は現実的なのだろう。
さて、そんな行事があっても例年なら私の喫茶店では特に変わったことはしないのだが……今年は”あの”カップルがいるので少し違う。
「わぁ……!あっくん、笹だよ!」
「本当だね、短冊もあるね」
彼氏の方がこちらに視線を向けてきたのでサムズアップしてあげると彼氏は頷いて彼女に言った。
「七夕だし、せっかくだから書こうか」
「うん!」
席に短冊を持って行ってからいつも通りメニューを見るそのカップル。
「カップル限定七夕ゼリー……」
チラッと彼氏の方を見て頬を赤く染める彼女。ウブすぎてこっちまで恥ずかしくなるが、見てて微笑ましいものだ。
昔は私も妻とこんな風に……こんな……風ではなかったね。うん。それでも、昔は結構イチャイチャしていたのに、今は膝枕をねだろうとすると怪訝な顔をされてしまう。……もう少し優しくてもいいのではないだろうか?
「あっくん、あの……」
「うん、それでいいよ。一緒に食べようか」
「……!うん!」
そこで彼氏がすぐにこちらに注文をしてくる。このカップル限定の七夕ゼリーというのは、今年から七夕に出すことにした期間限定の商品だが、今のところこのカップルしか頼んでない。
まあ、ウチの客層でカップルはこの1組だけなので仕方ないが、むしろ私はこの2人の反応が見たくてわざわざ出したのだ。小説のいいネタになりそうだしね。
ペアの可愛らしい食器に天の川に見立てた何層かのゼリーを乗せたシンプルなメニュー。あとは、そこに織姫と彦星に見立てた星を添えて完成。口頭で説明するとシンプルだが、シンプル故に綺麗で美味しいのだ。
「美味しそうだね。食べようか……琥珀?」
「え、あ……うん、そうだね……」
一瞬ゼリーにガッカリしたのかと思ったが、どうも違うらしい。彼氏はそれに気づいたようで微笑んで言った。
「琥珀は相変わらず優しいね」
「……1年に1度しか会えないんだね」
織姫と彦星のことだろう。その話は有名だし、女の子は特に感化されるのだろう。まあ、妻は『1年に1度なら色々と楽だね』なんて言ってて、私は『でも、私は君とずっと居たいかな』なんて言ったら殴られた後に寝室に連行された。
何故殴られたのか全く分からないが……
そんなことを思い出していると、彼氏の方が彦星の星を彼女のゼリーの上の織姫の隣に置いてから言った。
「これで、ずっと一緒に居られるね」
……なんか、同じ男として負けた気分になった。え?本当に中学生?そんな私に追い打ちをかけるように言った。
「織姫と彦星だって、いつか絶対ずっと一緒に居られるようになるよ。だって、それだけ好きあってるんだから。俺と琥珀もずっと一緒だ」
「あっくん……うん!ありがとう、あっくん」
美味しそうにゼリーを食べる彼女を優しく見つめる彼氏。なんだか、自分が汚れてる気分になるけど、ネタにはなったので使わせて貰った。
なお、それを読んだ娘に『乙女心に目覚めたの?女装とかは止めてよね』と変な釘を刺されてしまったが……何故だ?
ちなみに、彼氏と彼女の書いた短冊は両方とも相手のことを想って書かれており、ずっと一緒に居られるように願っているのが良く分かった。本当に若さって眩しいものだ。