80 琥珀の通知表
\( 'ω')/バッ
一学期最後のホームルームが終わると真っ直ぐに琥珀のクラスに向かう。まだ、ざわざわしている教室で琥珀も通知表を見ていたが、俺が近づくと嬉しそうに顔を上げた。
「あっくん」
「お待たせ。通知表どうだった?」
「うんとね……やっぱり社会が少し低いかも」
「そっか」
「……見てくれる?」
「勿論」
琥珀から渡されて通知表を見る。琥珀は低いと言うが、3なら十分だろう。他も軒並み4は取れてるし、家庭科と美術、音楽に関しては5だ。まあ、体育は2と少し低めだが……琥珀は運動苦手だからねぇ。
「おお、凄いじゃん!よく頑張ったね」
思わず頭を撫でると、恥ずかしそうに微笑む。その表情が可愛くてなんかずっと撫でたくなるが……
「……楽しそうね」
そんな浪川の無粋な声で現実に戻されてしまう。
「可愛い彼女を愛でるのは楽しいに決まってるだろ?」
「まあ、それはいいけど……琥珀も大変ね」
「黒華ちゃん、帰るの?」
「ええ、夏休みは空いてる時間遊べるといいわね」
「うん!楽しみにしておく!」
「……ええ、そうね」
穏やかに微笑む浪川。うん、やっぱり琥珀には人を和ませる力があるんだ。癒し系美少女琥珀たん。やはり俺の琥珀推しは間違ってなかった(キリりっ)
「彼氏さんの方は嫉妬しないでちゃんと琥珀貸しなさいよ?」
「心外だな。俺は琥珀の意志を何よりも尊重してるつもりだが」
「でしょうね」
用は済んだとばかりに教室から出ていく浪川。うんうん、適度な距離感を掴めてきた気がする。琥珀が嫉妬しない距離感。あんまり彼女の親友と仲良くすると琥珀がハラハラしそうだし、やっぱり琥珀には心穏やかにいて欲しいよねぇ。
「桐生さん、またね」
「じゃあね」
「うん、バイバイ」
他のクラスの友達にも手を振る琥珀。こうして楽しそうに友人と話す琥珀を見れて幸せだなぁ。まあ、独占欲的には複雑でもあるけど、可愛い彼女の笑顔のためなら構わないかなって思えるよね。
「さてと……帰って通知表見せないとね」
「うん……」
「大丈夫だよ」
「え……?」
不安そうな琥珀のために周りに聞こえないように耳元で囁く。
「教師には話は通してあるから、保護者欄はウチの親に書いて貰えばいい。それに、琥珀はもう俺たちの家族だからね」
「あっくん……うん!」
嬉しそうに微笑む琥珀。うんうん、この顔が見たかったんだよ。琥珀に辛気臭い顔は似合わない。好きな女の子にはいつだって笑顔でいて欲しい。そんな当たり前の男としての務めと囲い込みが進めて俺は満足だ。まあ、多分俺の通知表よりも琥珀の通知表の方が両親も喜びそうだけど……それは仕方ない。琥珀だもの。