78 家族の話
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夏休みも間近になると生徒達は夏休みの予定を楽しそうにはしゃいで話し合うという光景がよく見られる。そんな中で、あまり乗り気ではない生徒も中にはいる。
その1人である黒華はどんよりとしながら琥珀に言った。
「夏休み……嫌だなぁ……」
「そうなの?」
「琥珀なら分かるでしょ?”あの”家でずっと過ごすのはちょっとねぇ……」
「あはは……でも、優しそうなお父さんとお母さんだよね」
「どこが?どっちも怖いよ」
明らかにカタギでないヤクザ顔の父親に目つきの鋭い母親。見慣れてる黒華ですら夜不意に現れるとギョッとするくらいだ。
「でも、2人とも優しいと思うな」
「……まあ、確かに育てて貰ってる身としてはそうも思うけど」
顔つきはともかく中身は優しいと琥珀が言うと素直に頷く黒華。そんな黒華を微笑ましく思っていると黒華は逆に聞いてきた。
「そういえば、琥珀の家に行ったことなかったね。ご両親はどんな人なの?」
答えるべきか少し迷う。いや、どう答えるべきか迷ったと言うのが正解だろうか。新しい父親に、昔から変わらない母親。家族で唯一優しかったのは亡くなった父親だけ。
母親は昔から琥珀のことをあまり見てないように思えた。今の父親には何度か暴力を奮われた。それでも、琥珀は2人を恨んだりした事はない。昔、亡くなった父親が生前に琥珀に言っていたからだ。
『どんな人にも、事情はある。お母さんはね、誰かの側にいないと壊れる人なんだ。だから、琥珀は大変かもしれないけど……』
その時はよく分からなかった。でも、大きくなるにつれてそれは分かった。きっと、母親は誰かの側にいる時が1番楽なのだろう。新しい父親は怖いけど……母親に必要な人なのだと分かっているから何も言えなかった。
『でもね、本当に辛かったら、琥珀の王子様はきっと助けてくれるから』
亡くなった本当の父親は琥珀と暁斗の2人の想いに気がついていた。実際、何度か暁斗と会っており、暁斗なら大丈夫だと確信したのだろう。
歳が上がるにつれて、暁斗との関係も薄くなって、新しい父親からの恐怖が増えてきて……このまま、暁斗と会うことも無くなるのかと悲しくなっていた頃にそれは起こった。
中学の入学式の前、暁斗が久しぶりに家に来て告白してくれたのだ。その時は本当に嬉しくて、夢じゃないかと思ったくらいだ。しかも、一緒に住むために新しい父親を説得してくれた。
だから、琥珀にとっては暁斗とその家族が今の家族とも言えるのだ。なので、こう答えた。
「優しい人達だよ?」