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⊂(^ω^)⊃
「なあなあ、暁斗暁斗」
「断わる」
「まだ何も言ってないだろ!」
「いや、お前が嬉しそうな時って大抵碌でもないこと考えてると思うから」
とある授業中のこと。たまたま教師が不在で自習時間となった中で、男子はソワソワしていた。そんな男子の筆頭である友人の川藤は何やらニマニマしながら俺に話しかけてきた。
「今日から水泳の授業だよな?」
「まあね」
「今ってさ、1、2組の水泳の授業やってるよな?」
「覗くなよ」
「……最後まで言わせろよ」
「とりあえず、お前らもう少し紳士な精神を心掛けろよ」
そう呆れながら言うと何人かのクラスメイトが反論してきた。
「今泉は彼女いるからいいけどよ……」
「俺らモテねぇから興味深々なんだよぅ!」
俺と数人の男子生徒と、そして女子が呆れる中で、川藤が心の叫びを訴えた。
「1組っていえば”あの”佐々木さんがいるんだぜ!絶対に水着みたいじゃんかよぉ!」
「いや、俺は興味無いし」
「なら、俺らだけで行ってやる!お前ら行くぞ!」
「「「「「「「「おぉぉぉぉぉ!」」」」」」」」
そうして出ていくアホなクラスメイトに呆れているとクラスメイトの女子が俺に尋ねてきた。
「いいの?彼女さんの水着見られるけど……」
「ああ、それは大丈夫。こうなることは予想して体育の先生と生活指導の先生には話を通しておいたから」
しばらくして、どこからかクラスメイトの哀れな悲鳴が聞こえてきてので一安心して自習に集中出来る。実は前の時も似たようなことを川藤達がやっていたので念の為相談したのだが、大正解だったらしい。
「馬鹿な連中……でも、今泉は彼女さんの水着見なくていいの?」
「ん?まあ、頼めば大丈夫だし、それに俺が見に行くと他の女の子の方を見てるってヤキモチ妬くかもだしね」
「あの彼女さんヤキモチ妬くの?」
「それはもちろん」
「へー、あれだけ愛されてても不安になるんだねぇ」
むしろ、琥珀は元々寂しがりだから、構いすぎくらいで丁度いいのだ。そんなことを答えつつ勉強に集中しようとするのだが……
「なあ、今泉。ここ教えて欲しいんだけど……」
「あ、私も私も!」
残った少ない彼女持ちの男子と、クラスメイトの女子から分からないところを教えて欲しいと頼まれるので、どのみちあまり自習は捗らないのだ。何故か最近俺に勉強見て欲しいとクラスメイトから頼まれることが増えたんだよねぇ。
琥珀ほど丁寧には教えてないが、やっぱり学年トップの弊害がここにきて出てきたのかもしれない。まあ、今頃突撃した男子は怖い先生に絞られてるだろうし、俺は俺で出来ることをしますか。