58 君の近くで
(´。-ω(-ω-。`)ギュッ♡
保健室の前まで来ると、丁度浪川が部屋から出てきたところだった。多分帰るのだろう。向こうも俺に気づいたのか扉を閉めてから言った。
「あら、ナイト様。随分と遅い登場だったようで」
「琥珀とは仲良くなれたみたいで何より」
「ええ、腹黒な彼氏と違って素直で可愛いことで」
勘違いしないで欲しいが、俺は別に浪川を助けるのにノリノリな訳じゃ無かった。琥珀の友達じゃなければスルーしていたかもしれない。なので、琥珀の友達としてある程度無難に接するのが1番だろう。
「彼女さんなら中よ。私はもう帰らせて貰うけど」
そう言ってから少し間をあけて、浪川はポツリと言った。
「……ありがとう」
若干恥ずかしかったのかそのまま下駄箱に向かう浪川を見送ってから俺は保健室に入る。保健の先生はまだ戻っていないようでベッドに座る琥珀は俺を見つけると嬉しそうな表情を浮かべる。
「あっくん」
「そのままでいいよ」
そう言ってから俺は琥珀に近づくとそっと優しく抱きしめて言った。
「怖かったよね。遅くなってごめん」
「……!あ、あっくん……?」
「分かってる。友達のために本当によく頑張ったね」
そう言うと琥珀は涙ぐんで俺に抱きついて言った。
「こわかったよぅ……でもね……黒華ちゃん守りたくて……何度も何度も……あっくんのことね、考えてね………」
「うん」
「わたし……いつもあっくんに守られてばかり……」
「いいんだよ、俺だって琥珀に守られてる。それに、俺たちは恋人だ。だから、何度だって俺は琥珀を助けるよ」
そう、例え誰だろうと琥珀を傷つける奴は俺が許さない。絶対に守ってみせる。そう誓って俺は震える琥珀をそっと抱きしめるのだった。
「ぐすん……あっくん、ありがとう」
しばらくして落ち着くといつもの笑みを浮かべる琥珀。と、琥珀は俺の腕の傷を見て慌てて聞いてきた。
「あ、あっくん!腕、切れてる!」
「ん?ああ、そういえば」
「た、大変!すぐに消毒を……」
あわあわする琥珀が本当に愛おしくなる。慣れないように保健室にあった消毒と絆創膏を貼ってから一安心する様子は本当に見てて微笑ましいものだ。
「ありがとう、琥珀」
「あのね、あっくん……」
ぎゅっと俺の手を握ると琥珀は縋るような目で俺に言った。
「あっくんが、私のために頑張ってくれるの凄く嬉しいの……でもね、あっくんにもしものことがあったら私……」
ああ、そうか。俺だけが心配なんじゃない。琥珀だって俺のことが好きなんだ。だから、こうして少しの怪我でも本当に心配になる。そんなことも分かってないのだからやはり俺は馬鹿だ。琥珀を悲しませて……本当に最低な彼氏だ。
でも……それでも……
「大丈夫。絶対に琥珀の側にいるから」
「うん……」
そっと握られてる手にキスをする。カッコよくないかもしれないがこれは誓いだ。二度と琥珀を悲しませない。琥珀の1番でありたい。ずっと側で琥珀を守りたい。
あの連中から今度こそ琥珀を守れたけど、油断はしない。今度こそ――絶対に幸せにしてみせる。最愛の彼女の琥珀を絶対にだ。