57 親友
友(●´・ω・)っc(・ω・`○)
暁斗の言葉通り保健室に行くと、丁度保健の先生は席を外しており、とりあえず琥珀をベッドに座らせる黒華。色々と聞きたいことはあったが、とりあえずまず黒華は真っ先に聞くことを優先する。
「……怪我してない?」
「う、うん……大丈夫」
「そう……」
少しだけホッとしてから、黒華は琥珀の目を見ると少しだけ強く聞いた。
「……なんであんな無茶したの?」
黒華は琥珀が彼女達に立ち向かうのをほとんど最初から見ていた。本当なら割って入りたかったが、それが出来なかった。琥珀が自分のために頑張ってるという事実が少なからず彼女を押しとどめてしまったのだ。
黒華は確かにあのクラスメイト達の幼稚な嫌がらせは面倒だと思っていた。でも、それでここまでしてくれるなんて予想してなかったのだ。そんな黒華の問いに琥珀は少しだけびっくりしながらも答えた。
「浪川さんのこと何も知らないのにあんな酷いこと言って……我慢出来なかったの」
「同情とかなの?」
その言葉に首を横に振って否定する琥珀。
「じゃあ、どうして……」
「だって……浪川さんは、私の友達だから」
きっと、先程の行動を見なければ心には響かない言葉。だが、黒華は実際に怖い思いまでして自分のために体を張った琥珀を見てしまった。だから、それが嘘偽りない言葉だと分かってしまうのだった。
黒華は実家がカタギではない側の人間なので、それを知ると必ず友人知人は黒華に気を使う。本当表面上だけの言葉に嘘まみれの発言。だから、中学ではそんな面倒なことは避けようとしていた。交友関係なんて面倒なだけだと思ったからだ。
なのに、この少女は黒華のことを友達だと言って頑張ってくれた。それは、黒華にとって初めてのことで不思議と笑みを浮かべてしまった。
「……馬鹿」
「えへへ、ごめん……」
「なら、今度遊びに付き合ってよ。友達なんでしょ?琥珀」
一瞬琥珀はキョトンとしてから、嬉しそうに微笑んで言った。
「うん!分かったよ、黒華ちゃん」
その琥珀の笑顔に不思議と癒されて、ついつい琥珀のペースになってしまう。
(あの腹黒が惚れたのがなんとなく分かった気がする)
暁斗が何故こんなに琥珀のことを大切にするのか分かった気がする。こんなに無邪気な笑みを向けられればそうなっても仕方ない。ましてや、幼なじみという話を聞いたような気がする。幼い頃からこんなに純粋な子が近くにいれば、守りたくもなるのだろう。
いや、守られるだけじゃなくて、守る強さもあるのか。
それが、黒華が初めて親友を得た日のこと。黒華と琥珀が初めて親友になった日のことだった。