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56 琥珀のヒーロー

矛盾(*´・д・)?甘くなればええんやよ( ˘ω˘)✧

「げっ、桐生……」


勇気を出して教室に入るとあからさまに面倒そうな表情を浮かべるクラスメイト3人に琥珀は震える手をぎゅっと抑えて言った。


「浪川さん別に何も悪いことしてないじゃない!なのになんでそんなに酷いこと言えるの!知らないくせに!浪川さんのこと何も知ろうとしないでどうしてそんな酷いこと出来るの!」


琥珀の勢いに驚きつつもクラスメイトの女子3人はその言葉に揃って大笑いをしてから言った。


「突然何を言うかと思えば……あんな奴のこと知る必要ないじゃん」

「そうそう」

「いっつも、ウザイだけだしねぇ」

「だいたいさ、あんたもロクにアイツと関わってないじゃん。いっつも彼氏の後ろに隠れてるくせに偉そうなこと言わないでくれない?」


そう言ってから続きをするためか1人の女子生徒がペンで落書きをしようとする。


「ダメ!」


が、琥珀はそれを阻止するためにその生徒を押してから黒華の私物を回収して後ずさる。押された女子生徒は琥珀の行動にイラッとしたように視線を鋭くして言った。


「何いい子ちゃんぶってるの?」

「そんなつもりないもん!」

「じゃあ何なのさ!人が楽しいことしてるの邪魔して楽しいの!だいたいあんただってあの女のこと何も知らないでしょ!」

「これから知るもん!だって……だって!私は浪川さんの友達だから!」


カタカタと震える琥珀。怖かった。こんな風に他人と争うのなんて嫌で嫌で仕方ない。でも、ここで友達を見捨てることは琥珀には出来なかった。


(あっくん……お願い……力を貸して……!)


懸命に懸命に暁斗のことを思い浮かべて恐怖を抑える。しかし、そんな琥珀の行動がイラッとしたのか先程押された女子生徒は黒華の椅子を持ち上げると琥珀の方に投げた。


ガシャン!と、なんとか避けた椅子はロッカーに当たっていい音を出す。琥珀は入口付近までなんとか逃げるが、足に力が入らなくなった。そんな琥珀を3人で囲んで口々に言う。


「あんたもさ、正直目障りだったんだよね。今泉くんから好かれて調子に乗ってさ……ねぇ、この子どうする?」

「痛い目に合わせて今泉くんから手を引かせる?もうさ、いっそ窓の外に投げとはずのも面白いかも。3階からのダーイブってね」

「「それいいね!」」

「でも、その前に……」


先程押された女子生徒は筆箱からカッターを取り出してチャキチャキと刃を出して言った。


「ねぇ、さっきの言葉もう一度言える?これから自分も酷い目にあうけど……それでも、あれの友達だって言えるの?」


上手く言葉が出てこない。怖くて体が震えるのを止められない。でも、それでも、琥珀は絶対に引けなかった。だって、友達のことを悪く言われて黙ってられないから。それに……


「……さい……」

「はぁ?聞こえない?」


クスクスと笑う。きっと彼女達は「ごめんなさい」と言うのだろうと予想していた。しかし、琥珀はキッと涙目で毅然として言った。


「うるさい!私の友達を悪く言わないで!」


その言葉に我慢ができなくなったのだろう。カッターナイフを振りかざすのを見て琥珀はぎゅっと目を瞑ってから、黒華の私物を守ろうとする。しかし、しばらくしても何も痛みが起こらなかった。不思議に思ってうっすらと目を開けると……そこには琥珀のヒーローがいた。


「ごめんね、待たせて」







ギリギリだった。教室の前で聞き耳を立ててる浪川をスルーして俺はギリギリで琥珀にカッターナイフを振りかざしている女子生徒の手を掴んでいた。


先程琥珀が部活の時間に別の場所で俺のことを見ていたから嫌な予感がして抜け出してきたが……ビンゴだったらしい。教室内に仕掛けておいたボイスレコーダーとビデオカメラの証拠もあるから大丈夫だろうと思っていたが……まさかここまでやるとはね。


どうやら、俺はまだ甘かったようだ。


「い、今泉くん……?いたっ!」


跡が残るくらいに女子生徒の手首に力を入れてから後ろに投げ飛ばす。残りの2人も突き飛ばして俺は琥珀にゆっくりと声をかけた。


「ごめん、待たせたよね」

「あっくん……あっくん!」


抱きついてくる琥珀。涙を浮かべて震えているのが分かった。怖かったろうに……


「よく頑張ったね。もう大丈夫だから」


俺は琥珀をお姫様抱っこすると、外にいる浪川の前に下ろして言った。


「琥珀のこと少しだけ頼む、とりあえず保健室にいてくれ。俺は少しやる事があるから」

「……分かった」

「あっくん……?」


涙ぐむ琥珀にそっとキスをしてから、俺は優しく微笑んで言った。


「琥珀の友達助けないとね」

「……!うん!」


ポンポンと頭を優しく撫でてから俺は教室に入る。そこではまだ呆然としている女子生徒3人がおり俺は冷ややかにそれを見て言った。


「さて、何か言い訳があれば言えばいい。どのみちお前ら全員許すつもりはないから」

「い、今泉くん!私達は別に……」

「琥珀のことイジめるつもりは無かったとか抜かしたら今すぐ殺すけどいい?」

「ひっ!」


後ずさる女子生徒をスルーして俺は教室内に仕掛けておいたボイスレコーダーとビデオカメラを取り出すとそれを見せて言った。


「ここにお前らの嫌がらせとさっきのクズみたいなセリフが入ってるが……逃げたらこれをお前らの名前と住所を入れて動画として流す」


なんとか逃げようとする奴がいたのでそう言って先制しておく。逃げるのは無理と分かったのか、表情を暗くするのもいれば、必死に俺に取り入ろうと気色悪い猫なで声を出す奴もいた。心底吐き気がする。


「……!なんなのよもう!あんな地味な女より私の方が可愛いじゃない!なんで今泉くんはあんなのの味方をするの!」


ブチッ。俺は思わずその女子生徒の胸ぐらを掴むと持ち上げて言っていた。


「お前みたいなブサイク吐き気がするくらい嫌いだよ!こんなに汚い心の女好きになんかなるか!」


いきなりのことに驚いた女子生徒が持っていたカッターで軽く俺の腕を切りつけて、少し血が出る。まあ、このまま殴りたくなるくらいムカつくけど、俺はドサッと女子生徒を下ろして思わず教室の壁を殴る。もちろん手加減したがそれなりにいい音がしてビビる3人。


「お前らが琥珀に何もしなければ黙ってようと思ったんだがな……知ってるか?お前らがイジメていた浪川はな、あの浪川組の令嬢なんだぞ?」


その言葉に顔を真っ青にする3人。全く、ようやく気づいたのか。浪川組という、所謂ヤクザみたいな組織。それが浪川の実家だ。実は学校内にも浪川を護衛する奴らが密かに潜入していて、俺はその連中と手を組むことにした。


とはいえ、本当はそこまですることはないと思ったんだ。本人も気にしてないし。だけど、コイツらは俺の大切な琥珀を傷つけようとした。だからもう容赦はしない。


「明日の朝家族皆で仲良く東京湾をコンクリの中で満喫することになろうが、俺は知らんが……これだけは言っておく。俺の琥珀に手を出したら……絶対に許さない」


誰に何を言われようがこれだけは譲れない。こんなの他人の力を使った恫喝でしかない。だが、それでもコイツらを消せるなら喜んでその力を使う。前の時の恨みもある。コイツらは平気で琥珀のことを傷つけられる下衆だ。なら、俺は躊躇しない。例え世間から悪役と呼ばれようが、琥珀を守るために出来ることは全てする。


琥珀には見せられないけど……それでも、もう二度と失いたくない。こんな奴らに琥珀を傷つけられるなんて嫌だ。だから俺は……琥珀だけのヒーローになるんだ。


俺の言葉で真っ青になった女子3人のことと、教室の少し荒れてる惨状は近くに待機させていた浪川家の人間に任せることにする。彼女達はきっと、転校という形に表向きはなるだろう。ま、後で勘づいてるであろう浪川には色々グチグチ言われるだろうが……俺はキチンと取り引きをしたから文句を言われる筋合いはない。急ぎ、琥珀の元に戻るのだった。













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― 新着の感想 ―
[一言] このの証拠でお前等人として終わりだよ?ネットに晒しお前等の親の会社に晒し近所に回状を回すしから高校の必ず回し行ける高校無くす志望校にも回し貧乏になって中卒で一家離散だし二度と琥珀に関われない…
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