158 朝から愛おしい
翌朝、いつも通りの新聞配達のバイトの時間には体が無意識に覚醒してしまうが、何とかそこそこの時間まで粘ってみる。
「女の子……もみもみ……ぐへへ……」
とはいえ、隣の川藤の寝言が煩くて、あまり上手に体を休めることは出来なかったのだが。というか、こいつはどんな夢を見てるのやら。ワキワキとしてキショい手つきで俺を触ってくる川藤の様子に、何となくイラッとしたので、寝相の悪い川藤をテントの隅に蹴飛ばしてから、仕方ないのでテントから出て顔を洗っていると担任とかち合う。
「今泉、早いな」
「先生もお早いようで」
「見回りだ。昨夜は女子テントに潜り込まなかったようだな」
「俺がそんな足のつく真似をするとでも?」
「いや、ないだろうな。だが、とりあえず否定くらいはしてくれ」
担任としても冗談だったのだろうが、琥珀と密会してたのは事実なのでとりあえずはぐらかしておく。というか、俺が琥珀以外もいる女子テントに忍び込むような真似をするわけもないのだが……やるなら専用のテントで琥珀と二人きりでイチャイチャするに限る。
「しかし、こんなに早く起きたのは恋人と待ち合わせでもしたのか?」
「いえ、普通に習慣で起きただけですよ」
しかし、それも悪くなかったかもしれないと思案していると、俺の中の琥珀センサーに反応があった。
「でもまあ、早起きして偶然出会った分には問題ありませんよね?」
「まあ、それはそうだが……学生としての自覚を持った節度ある行動にはしといてくれ」
まるで普段の俺がそれを出来てないと言わんばかりのセリフだが、そんな事よりも俺は近づいてくる琥珀の気配にワクワクしていた。
「あ……あっくん!」
そうして目視できる距離に琥珀が来ると、担任はそれを見てやれやれと言わんばかりに肩を竦めて去っていく。気を使ったのだろうが、そんな事よりも大丈夫なことがある。
「おはよう、琥珀。早いね」
「うん、あっくんが居なくて少し寂しかったから、起きちゃったのかも」
そう言いながら照れ笑いする琥珀がマジで可愛すぎる。朝からいいものが見れて非常に役得だが、琥珀の寝顔を見れなかったのは少し……否、かなり残念でもあった。それは琥珀側も同じなのか、狸寝入り(琥珀にはバレてない完璧な寝たフリ)している俺の寝顔を見ることが出来なくて残念な様子が伺えて更に琥珀が愛おしくなる。
しかし、こうして別々の場所で一夜を明かして思うのは、この久しぶりに会う(昨夜も会った)琥珀の愛しさと尊さが我慢というスパイスで更に際立ったということだろう。とはいえ、我慢はたまにでいいかな。 可愛い琥珀成分は是非とも過剰に摂取したいし。




