1 過去に戻れたようだ
幼馴染を溺愛する話です♪
あの時にああしてれば良かった。そんな後悔って誰にでもあると思うんだ。ゲームだったら、セーブポイントに戻れば済む話。小説だったら時を超えればいい話。
まあ、もちろんリアルで後悔なんてしても時間が戻せるわけじゃない。それでも前を向いて歩いて行かなければならないとわかっていても……それでも、思うんだ。
俺があの時、アイツの手をきちんと握っていればアイツが死ぬことはなかったかもしれないと。
「これは……一体……」
だからこそ、俺は今の状況に驚いている。場所は自室。実家の自室なのだが……ここ数年は帰ってないはずの部屋に目が覚めると何故かいる不思議。次に驚いたのが自分の見てる景色がめっちゃ下がっていたこと。
寝る前は175cm以上あった身長が中学入学時くらいまで縮んでるという本当に謎の現象に戸惑っていると、ドアを開けて俺が知ってるより若い母さんが姿を表した。
「もう暁斗。起きてるなら早く準備なさい。入学式遅れるわよ」
「……母さん。今って何年の何月何日?」
「……?2012年の4月8日よ。急にどうしたの?」
「いや……ごめん、すぐに準備するよ」
バタンと扉を閉めてから震える手をなんとか抑えつけて状況を整理する。俺が記憶してるのは2020年の8月23日まで。社会人として社畜をしていたことまでだ。
でも、今母さんが言ったのは約8年前の年数。夢でないならこれが意味することは……
「過去に……戻ったのか?」
そんな有り得ない想定をしてしまう他に理解が追いつかない。寝てたら過去に戻ったとか冗談にも程があるが……ん?
「8年前……入学式……」
8年前と言えば中学生の頃。つまり今日は中学の入学式ってことか。と、そこまで考えてから俺は思い出したように慌てて部屋を出て母さんの元に行くと驚く母さんに聞いた。
「母さん!琥珀は……琥珀はいるんだよね!?」
「え?琥珀ちゃん?」
キョトンとしてから何を勘違いしたのかくすりと笑って言った。
「なぁに?琥珀ちゃんと結婚する夢でも見たの?琥珀ちゃんなら新しい家族と一緒に入学式に行くんじゃないかしら?」
「……!そうか、もうそんな状態なのか……!」
ギリッと奥歯を噛み締めてから深く息をして呼吸を整える。落ち着け。ヤケになるな。
「母さん。先に行っててくれるかな?俺は琥珀と行きたいから」
「いいけど……道わかるの?それに家族の団欒は邪魔しちゃダメよ?」
「道は大丈夫。それに琥珀が嫌がったらちゃんと退くから大丈夫だよ」
「そう?ならいいけど」
それにね母さん。琥珀の家に家族の団欒なんてものは、存在しないんだよ。それを俺は知ってる。
だって琥珀は……俺の幼馴染の少女は学校でのいじめと新しい父親からの暴力で中学を卒業せずに……この世を去ったから。