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探偵とは名乗らない  作者: 亜拓 来人
9/12

おめでとう、あけまして

季節を大分先取りして年始のお話です!

ぜひ感想等ください!

1


冬休みも中盤に差し掛かり、外は雪が降り寒い日が続いていた。俺は基本的に外に出ることはなく家の中で特にストーブの前を自分の拠点としてだらしのない生活を送っていた。しかし、今日に限っては俺は夕方の寒い中俺は外に出て、地元の尾ノ山神社にきていた。

理由は明白なものだった。今日は1月2日、新年が明けて探偵部の連中と初詣をしようということになり、こうして今日の夕方集合することとなっていた。

早く着きすぎたか、腕時計を見ると予定の時刻の10分ほど前だった。遠くから着物を来た女性が歩いてくる。初詣に来る客だろう。着物の客は少なくない。

その女性が天草だということに気づいたのはその女性が目の前にきたときだった。

「明けましておめでとうございます、梅原さん」

俺は不意をつかれたように一瞬驚いてから返答した。

「お、おめでとうございます。今年もよろしく」

そう言ってお辞儀した。天草はニコニコしながら着物の袖をひらひらとさせながら言ってきた。

「どうですか?この着物」

「あぁ、似合ってるよ」

嘘ではなかった。天草がこれほどまでに着物が似合うとは考えてもいなかったことなので率直な感想が出た。

「茜さんと濱田さんは少し遅れるみたいなので先に行きましょうか」

そうだなと言って俺は天草とともに神社に入っていく。いつも通りのチノパンにダッフルコートでこの着物の女性の横を歩くことほどに恥ずかしいことはない。まぁ誰も俺たちなんか見ていないとは思うが。

神社の階段を上りながら俺たちは年末年始のことを話した。天草は親戚の集まりだなんだで色々と忙しい日々を送っていたらしい、それを聞いた後に俺の生活を話すのは嫌な気がしたので俺は適当に話を流してた。

お参りの列についてしばらくしてから天草が話した。

「この神社では他の神社とは違った参拝方法なのはご存知ですか?」

「そうなのか?初めて聞いたぞ。初詣なんか中学1年以来だが、その時も普通に参拝した記憶がある」

「基本的な動作は同じなのですが、お賽銭を入れるタイミングが最後なんです」

普通なら賽銭を入れてから参拝するがここでは逆に最後なのか。

「本当は昔は柄杓の使い方なども他の神社とは順序の違うところがあったそうです」

神社にきてわざわざ説明版を読みながら参拝する人などいないだろう、自然とみんな他と同じやり方で行なっていたということか。

列はスムーズに進みいつしか俺たちの番になっていた。

ポケットに10円玉を入れたまま、俺たちは手を合わせた。そうだな、今年は面倒なことがおきませんように。

最後に賽銭を投げ入れて、俺たちはその場を後にした。少し離れたところにおみくじ売り場があった。

「梅原さん!おみくじ、引きませんか?」

断る理由もないので俺は頷いておみくじ売り場に向かった。

おみくじを引いて開いて中を見た。小吉……なんとも言えん事柄がずらずらと書かれていた。要は可もなく不可もなくって感じだ。

ふと隣を見ると目を輝かせている天草がいた。

「見てください!梅原さん、大吉です!」

そう言って堂々と見せびらかしてきた。大吉か、なんとも天草らしい。神は大吉を与える人間を間違えなかったようだ。

「梅原さんはどうでしたか?」

「例年通りだ、俺は吉と小吉以外引いたことはない」

そう言っておみくじを見せる。天草は特に言う言葉が見つからなかったのか、ただ眺めていた。

そんなことを話していると後ろから声をかけられた。

「やぁ孝太!あけおめ!天草さんも」

振り返ると清水と友也がいた。清水は手を振りながら天草の方に駆け寄り着物について楽しそうに話していた。

「おみくじ引いたんだ、孝太どうだった?」

俺は何も言わずに手に持っているくじを見せた。

友也からは乾いた笑いだけが帰ってきた。

「ねぇ友也、私たちもおみくじ引こうよ」

「そうだね、行こうか。二人ともちょっと待っててよ」

そう言って二人はおみくじ売り場の方に歩いて行った。

少しして二人がおみくじを持って帰ってきた。友也の顔色が悪くなっている気がする。

天草が二人に聞いた。

「お二人ともどうでしたか?」

友也がゆっくりとおみくじを見せてきた。凶だった。

凶とは今年の友也は何かありそうだな。いつもへらへらとしている友也も流石に少しダメージを受けているみたいだな。

清水は中吉だった。まぁ清水の性格上この手のことはあまり信じていないだろう。本人も喜んだりすることなくあっけらかんとしていた。

「そういえば社務所の方で甘酒やお団子を配っているそうですよ、行きませんか?」

天草がそう言って、俺たちは賛同し社務所を目指した。あの社務所に入るのは夏祭りの時以来か。

社務所に入ると管理人さんがいた。久しぶりだったが顔を覚えていてくれたみたいだ。

「おぉ、久しぶりだな」

管理人さんがそう言ってきたので俺たちは頭を下げた。代表として天草が新年の挨拶をしてくれた。上がっていっていいと言われて俺たちは中の部屋に入り座っていた。やはり暖房は最強だなと再確認した。さっきまでの寒さが吹き飛び少し暑いくらいにまでなっていた。

清水と天草が甘酒と団子を人数分持ってきてくれた。

俺たちはそれらを頂きながら互いの冬休みの過ごし方などを聞いていた。友也はテレビで大河ドラマやお笑いを網羅しているとのことだ。実にこいつらしい、なんでも今日遅れてきたの理由もその大河ドラマが原因らしく清水に叱られていた。

その清水も基本的にはテレビを見ながら絵を描いたり宿題をしたりというごく普通の生活を送っていたとのことだ。

そんなことを話している時に、友也が急に声をあげた。

「そういえばこの神社には開かずの金庫ってのがあるって聞いたんだけど、天草さん何か知らないかい?」

そう言われて天草は少し考えるように顎に手を当て上を向いた。

「さぁ、聞いたことはないですね」

「またお前のくだらない冗談じゃないだろうな」

「大河ドラマとかに影響されたんじゃない?」

俺も清水も友也の言うことを全く信じていない。

「いやいや、これは僕発信じゃない、親から聞いた話なんだ」

そう言って必死に弁解する友也。そこに天草がある人を呼んだ。

「すいません、管理人さん。ちょっとお話しいいですか?」

少し離れたところを歩いていた管理人さんを呼んでいたのだ。管理人さんは少し驚いた後、こちらに歩いてきてくれた。

「どうしたんだい?嬢ちゃん」

「あのこの神社に開かずの金庫ってのがあるんですか?」

唐突なこの質問に管理人さんは面食らっていた。

「あ、あぁ。たしかに金庫ならあるよ。それに開けられないってのも本当だ」

それを聞いた友也がどうだと言わんばかりに胸を張ってこちらを見てくる。自分の信用なされないことを悲観するべきだろうに。

管理人さんの話によると管理人さんの祖父が使っていたらしい金庫で中身は何かわからない、そもそも中身があるのかないのかさえ分からないという。わざわざ業者を呼んでまで開けたいとも思っていないらしい。

天草が唐突に手を上げて管理人さんに詰め寄った。

「ぜひ!その金庫見せていただけませんか?」

あーこれは良くない流れだ。管理人さん頼むから断ってくれ。

「別に構わんよ、私の書斎にあるからいっておいで。そこに祖父の残した紙も置いてあるから見てみるといい」

願い虚しく許可が降りた。天草が礼をいって立ち上がると清水と友也も立ち上がっていた。

大人たちが開けられなかった金庫を高校生が開けられると?

気づくと俺の腕は天草に掴まれ強引に引っ張られていた。書斎に入ると部屋の隅に黒い金庫が置いてあった。大きすぎず小さすぎず、電子レンジぐらいだろう大きさの金庫が置かれていた。扉の取っ手近くにダイヤルがあるおそらくこれを回して開けるタイプの金庫なのだろう。

まぁ何度か挑戦してダメなら諦めるはずだ。そういえば金庫のところに祖父の残した紙があるとかいっていたな。

「あ、これ見て」

清水が何か見つけたらしく指を差す。その方を見ると少し古びた紙が置いてあった。紙には手書きでこう書かれていた。

→5←3→7←2→2←6→1

「これダイヤルの回す向きと数字かな?」

そう言われて天草がその紙通りにダイヤルを回してみる、しかし金庫が開くことはなかった。

それで開くならもうすでにこの金庫は開かれているはずだ。その紙があって、従ったにも関わらず金庫が開かなかった。それ以外のヒントになり得るものが見つからずこの金庫は開かずの金庫となったんだろうと思う。

闇雲にダイヤルを回したとして開くはずもない。この件はこれで終わりだな。部屋から出ようとすると天草が前に立ちはだかった。まずい予感がする。

「梅原さん!どうか考えてください、この金庫の開け方を!」


2


天草が真っ直ぐにその大きな目を向けてくる。こうなると後戻りはできない。俺は大きなため息をついてから意見を述べた。

「方法は二つ。その1、この金庫をどうにかしてぶっ壊す。その2、ダイヤルを回して全てのパターンを試す」

これには清水が突っかかってきた。

「そんなの両方却下よ、もう少しまともな意見は出ないわけ?」

「じゃあ、無理だ。開かずの金庫はその名の通り開かないから語り継がれてきたんだろう、俺たちが手に負える話じゃないさ」

この意見には友也が賛同してくれた。

「そりゃごもっともだね。まぁ金庫の存在を確かめれただけでも良かったよ」

天草は少し残念そうな表情をしていた。俺たちは書斎を後にして社務所を出た。3人についていくようにして階段を降りている時にふと気づいたことがあった。

俺は立ち止まって後ろを振り返る。

階段の真ん中に手すりがあって左右に分けられているが、俺たちは鳥居の方から見て右側を降りている。左側には参拝客が列を作って登っていた。

普通逆ではないか?考えすぎか?地元の他の神社を思い出すと確かに鳥居をくぐって右側の方を歩いて階段を上っていたような気がする。

逆……お賽銭も、柄杓の使い方も、階段の昇降も。

まさかと思っていた時に友也に声をかけられた。

「どうしたんだい孝太?帰らないのかい?」

「なぁもう一度あの書斎に行かないか?」

俺がそういうと友也は少しニヤけてこう言った。

「その感じ、まさか孝太、金庫を開けるつもりだね?」

その言葉に前を歩いていた清水と天草が振り返る。

「本当ですか?梅原さん!あの金庫を開けられんですか?」

気づくと天草は目を輝かせながら詰め寄ってきていた。

「開くかどうかはわからんが少し可能性を見出したんだ」

「ではさっそく行きましょう!」

そう言って天草が降りてきた階段を登り始めた。

清水や友也、そして俺もそれに続いて上っていく。階段を降りてくる客を避けながら、時にすいませんと言って人の間を割って歩いてく。周りからすれば非常識な若者だっただろうが、俺たちはそんなこと気にもせず階段を早足で上っていく。

社務所についたとき俺たちはみんな息が少し上っていた。

管理人さんがそんな俺たちを見てどうしたのかと聞いてくる。友也が答えた。

「すいません、もう一度書斎を、金庫を見てもいいですか?」

管理人さんはきょとんとした顔をした後ににっこりと笑って許可をくれた。

俺たちは靴を脱ぎ、足早に書斎へと向かった。

金庫を前に俺は咳払いを一つしてから俺はダイヤルの開ける指示をした。

友也がそれを聞いてダイヤルを回す。そのすぐ後ろで金庫に食い入るように清水と天草が見守っていた。

可能性は二つある。とりあえず一つ目から。

俺は右に何回、左に何回と友也に指示を出した。一つ目の方法はハズレ、金庫の扉は開かなかった。

もう一つある。

俺はまた指示を出した。友也は間違えないよう復唱しながらゆっくりとダイヤルを回す、その時、

カチャン!

金庫の扉はゆっくりと開かれた。


3


金庫の中には大吉と書かれたおみくじが数枚と写真のようなものが入っていた。

「どうしてですか?梅原さん、説明してください」

天草が俺の方に振り返りそう聞いてくる。

「説明もなにもお前が俺に教えたんだろう。この神社特有のことを」

そう言われて天草は少し考えていた。

「参拝方法、柄杓の使い方」

そこまで言うと天草ははっと気付いたような反応を見せた。

「他とは逆ってことですね?」

「そうだ、そのことからもしかしてあの紙に書かれた矢印は逆を示している、もしくは書かれていること文全部が逆なんだと思ったんだ。確証は無かったが試してみる価値はあると思った。正解は後者だったようだが」

「なるほど、この神社にゆかりがある人こそ馴染んでいて解けなくなる、もしくは僕たちみたいに全く知らない人たちは解けない」

友也がそう付け加えた。その通りだ、俺はその両方どちらでもない。ついさっき天草に腕をそのことを教えてもらったばかりで逆であることに違和感を覚えていたからこそ思いついたことだった。


俺たちは金庫が開いたことと開け方を管理人さんに説明した。管理人さんはすごく驚いた様子だったと同時に感謝してくれた。あのおみくじは全て大吉で写真には幼い頃の管理人さんが写っていたらしい。祖父が幼い自分のためにおみくじを引いてくれてその中の大吉を大事に保管していてくれたと俺たちに話してくれた。


今年は面倒ごとが減ることを願った矢先にこれだ。

あの可もなく不可もない小吉はこの日常が変わらないことを暗示していたのだろうか。

天草の引いた大吉、俺にとって逆の凶にならないことを切に願う年明けとなった。






読んでいただきありがとうございます!

おみくじの順番てイマイチ忘れがちですよね。末吉って意外と悪い方とか…


ぜひ感想や意見お待ちしてます!!

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