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探偵とは名乗らない  作者: 亜拓 来人
8/12

隠された聖夜

物語はクリスマスまで到達しました!

ぜひ読んでみてください。

あと一週間もすれば年を越すという頃、街中ではクリスマスムード一色に染まっていた。玄関先にイルミネーションを施す過程もチラホラと見受けられる。年末が忙しくなる理由の一つにこのクリスマスがあることは間違いないだろう。わざわざキリスト教信者でもない人がクリスマスのために多大なる労力とお金をかけていることに俺はイマイチ共感ができない。

別にクリスマス自体を否定しているわけではない。周りに合わせて自分も盛り上がろうとする思考回路に納得がいかない。人それぞれでいいのではないだろうか。俺は今年も特に何もせず、おそらく家で出されるオードブルとケーキを無心で食うのだろうと思っていた。

ただ今年はそうもいかなかった。昨日の24日、つまりはクリスマスイブという日だ。学校が終わりいつもの通り部室で時間を潰していた時に、清水が余計なことを提示してきたのだ。

「明日のクリスマス、せっかくの休みなんだから何かしない?」

それに一番に賛同するのは友也だ。

「お、いいね茜。パーティでもしようよ」

無論天草もノリノリだ。この何ヶ月かの経験的予測からして俺に参加拒否の権限はないだろう。

「んー、他にももっとなんか楽しいことをしたいなー」

そう言うのは友也だった。

「そうね、だったら定番のプレゼント交換!」

「それはいいですね!茜さん。ぜひやりましょう」

そろそろ口を挟む頃だと思い俺はこう言った。

「俺は別にプレゼントなんかいらんぞ」

そういうと睨んでくるのはもちろん清水だ。

「あんたね、貰えるだけでもありがたいと思いなさいよ、それにあんたのプレゼントを受け取ってもらえるなんて奇跡でしょ」

言いたい放題だな。そこで突然友也が手を叩いて立ち上がった。

「そうだ!だったらちょっとしたゲームにしないかい?」

何を言いだすかと思えば、プレゼント交換はだいたいゲームと似たようなもんだろうに。

「ゲーム?濱田さんどういうことですか?」

堪らず天草が聞く。

「プレゼントを隠すのさ!それで2チームに分かれて探し合う。見つけられなかったら負けっていうのはどうだい?」

天草も清水も「面白そう!」ということでやることが決まった。面白そうよりもめんどくさいの方が勝つに決まってる。こんな寒い中探し回るなんて。

「じゃあ細かいルールを決めるよ、まず隠し場所はこの4人が一度は行ったことのある場所。そして、互いにヒントを3つまで出す。それでも見つけられなかったらギブアップするってことでどうだい?」

「いいと思います!それでチームはどのように分けますか?」

天草がそう聞くと、適当にグーとパーで分かれることになった。

天草と清水がグー、俺と友也がパーで実質男対女の戦いとなった。

「絶対負けないんだから!」

清水が舌を出しながらそう言い放つ。

「それじゃ僕と孝太はプレゼントを買いに行くよ、そのまま帰るから、明日商店街のツリーの前でまた会おう」

友也が相手チームにそう告げて俺たちは学校を後にした。

俺たちは商店街に行き適当にプレゼントを選んで買って、作戦会議をした。この商店街は昔からあって今では閉まっている店も少なくないがここら辺の人たちは何か買うならここにくることが多い。ある程度のものは揃っている。

おそらく天草たちは作戦会議をしてから買いに来るのだろう。鉢合わせるのも面白くないので俺たちはそそくさと帰宅することにした。

その夜、友也からの電話で9時に商店街ツリーに集合ということに決まった。


そして今日だ。時刻は9時半、俺は寝坊してしまったのだ。軽くシャワーを浴びてから朝ごはんを食べているときに連絡が来て今家に向かっているということだから俺は慌てずに迎えを待っていた。

家のチャイムが鳴り、外に出ると明らかに怒った表情の清水と呆れた感じの友也がいた。天草はいつも通りといった感じだった。友也や天草に「メリークリスマス」と言われたが俺はそんな挨拶はせずに謝罪する。

「すまん、寝坊した」

「う・め・は・ら〜!あんたねぇ、少しは私たちに対する敬意ってものを持ちなさいよ。だいたいね」

清水が大声でまくしたててきた。俺は指で耳を塞いでいた。天草が清水を宥めてくれたおかげで清水の怒りはおさまった。それを見ていた友也が嫌なことを言ってくる。

「これでプレゼント見つけられなかったら今日の孝太に価値はないよ」

俺はため息をついてからそうだなとだけ返事した。無論この穴埋めはするつもりだ。流石に遅刻して迷惑をかけて平気でいられるほど能天気ではない。

俺たちは商店街についてじゃんけんで先攻後攻を決めることにした。天草と俺との一騎打ちで見事に勝った。俺は先攻を取り先に探す方を選んだ。30分ばかりの近くの穴埋めはここでするつもりだ。

「早速だが最初のヒントをくれ」

そういうと清水と天草は少し考えてヒソヒソ話をした後、天草が咳払いを一つしてから

「木です」

とだけ言った。

「じゃあその次のヒント」

俺は即座にヒントを要求した。さすがに天草は驚いていたが清水は呆れて聞いてくる。

「アンタ考える気ある?」

「勿論だ、おそらくそのヒントで答えはでる」

「ふーん、じゃあ二つめのヒントを言うわよ。勉強」

勉強か、なるほどね。

俺は友也と二人で天草たちから少し離れた位置で話を始めた。

「なぁ友也。この商店街であのツリーが見える範囲に文房具屋か塾はあるか?」

友也は少し疑問を抱いた顔をした後すぐに俺の考えを察してくれた。

「そうだね、ツリーの向こうに文房具屋があるよ。

あっ、こっちにもあるはずだ。両方行ってみるかい?」

「いや、そのうち海星高校の生徒がいるのはどっちだ?」

「それならツリーの向こうだね、2年D組の川上さんの家が営んでる、行ってみようか」

そう言って俺たちはその川上の文房具屋に足を運んだ。

「いらっしゃいませ。おや君達海星高校の人?何か買いに来たの?」

店主はいなくて店番をしていたのはおそらく川上という女子生徒だろうと思った。

「プレゼントを取りに来ました。昨日、天草や清水から預かってくれた言われたんじゃないですか?」

彼女は少し戸惑った様子だった。

「え、えっと〜」

友也が付け加えた。

「僕たち探偵部なんです。すいません、こんなゲームに付き合ってもらって」

それでようやく理解したのか、彼女は店の奥の方に行き何やら小さな箱を持ってきた。

「清水さんたちによろしくね」

そう言って彼女はそれを手渡してくれた。

俺たちはそれを持って天草たちのところに行った。

二人とも驚いていた。開いた口が塞がらないとはこのことだと思った。

「うそ、絶対に分からないと思ったのに。あまりにも早すぎる」

「ど、どうして?なんで分かったんですか?」

二人とも現実を受け入れられてないような様子だった。

「簡単だ。この一年ほぼ毎日一緒にいたんだぞ、お前たちの考えることなんて予想がつくさ。昨日のルールを聞いて思いついたんだろう、商店街に昨日俺たちが買い物をしていたことを聞いて。灯台下暗しを狙ったんだろうがむしろそうすると思っていた、それに加えてあの2つのヒントだ」

そこまで説明すると清水はがっかりしてうなだれる。

「でもどうしてあのお店だと思ったんですか?」

「こっちには友也がいるんだぞ、商店街のことなんか把握済みだとおもった。相手が友也ならどの店に隠すか分からんが、天草や清水なら海星高校の生徒がいる店に頼むに違いないと思ったんだ」

そう言うと後ろで友也が二人にピースをして見せた。

「完全にやられた。悔しい」

清水が頬を膨らませてそう言う。

「さあ、次は茜たちの番だよ!」

そう言って友也が前に出てきた。友也が俺の方を見てくる、俺は言わんとすることを察して二人に向かって言った。

「ヒントその1朱色。その2川」

天草と清水は明らかにポカンとしていた。

「と、とりあえず川に行ってみましょう茜さん」

そう言って二人は川の方に歩いていく。俺たちもその後に続く。

いつも通学路で通る川沿い、通学で通るのは二百メートル弱程だ。この範囲にあるのだろうという考えを持ったらしく天草と清水はその周辺を探した。しばらくしてないことに気づいたのか二人はこちらに寄ってくる。

「梅原さん最後のヒントをください」

そう言われて考える。なんと言えば伝わるだわろうか。その時友也が言った。

「9時半」

なるほど、だがそれはほとんど答えといっても過言じゃない。まぁもう昼ごろだし早く終わらせて家で飯を食いたい。

二人は少し考えていた。先に気づいたのは天草の方だった。

「分かりました!9時半と言えば今日梅原さんの家に迎えにいった時刻です」

「つまり?るみちゃん場所分かったの?」

「梅原さんちですよ!」

ふんと俺は鼻で笑った。おそらく二人には聞こえていないだろう。

二人は足早に俺の家へと向かって歩き出した。

俺の家の前に着くと、二人は振り返ってこう言った。

「さぁ梅原、友也。着いたわよ早くプレゼントを」

それを友也が制した。

「分かってないなー茜、ヒントを一つ忘れてないかい?」

清水が少し考えてから「朱色?」と呟いた。

「それが分からないうちはプレゼントは渡さないよ」

友也が親指を突き出して自信満々にそう言った。

しばらく二人は考えていた。空を見たり、二人で話し合ったり。人の家の前でなんて滑稽なことを。

すると天草が分かったのか、急に悩んでいた顔が晴れて笑顔になった。それを清水に耳打ちで教え清水も同じく笑顔が戻った。

二人を代表して清水が言う。

「答えはポストね!」

そう言って俺の家のポストを指差す。

しばらく間を作ってから友也がパチパチと拍手した。

「おみごと!正解だよ二人とも」

そう言われて天草と清水は大喜びしていた」

俺は門にあるポストを開けて中から箱を出して二人に渡した。

「開けてもいいですか?」

天草が聞いてくるので俺はどうぞとばかりに手のひらを見せた。

二人の開けた箱の中にはマグカップが2つ入っている。そう言われれば俺たちもプレゼントを開けていなかった。

俺はポケットから箱を取り出し中を開けた。隣にいた友也も覗き込んだ。そこにあったのは映画のチケット4枚だった。

「ところで梅原さんどうしてご自宅の郵便受けにプレゼントを?」

天草が聞いてきた。その理由は実に明快だった。

「このゲームに乗じて解散地がここならすぐに家に帰れるからな。今だから言うが寝坊もわざとだ。二人をここに連れてくるためのな」

それを聞いた清水は、呆れたとばかりにため息をついて

「アンタはどんだけものぐさなのよ」

天草も少し笑った後に

「あ、でも梅原さん。これから私の家でパーティですよ?」

俺は硬直した、忘れてた。そういえばそんなことも計画されてたっけか。いやむしろそっちがメインだったはずだ。3人は笑っていた。

しまった。ただの無駄足……いやこれはこれでいいか、学校行事以外でクリスマスをこんな風に過ごすのは初めてのことだ。

俺たち4人は天草の家に向かって歩き出す。オードブルやケーキが準備されているそうだ。清水や友也はワクワクが抑えきれない様子だった。

俺はふと立ち止まって空を見上げる。気付けば空からは粉雪が降ってきていた。

誰かが小声で言った。

「今年はホワイトクリスマス」










読んでくれてありがとうございます!

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