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探偵とは名乗らない  作者: 亜拓 来人
7/12

大罪と美徳

7作目です。ぜひ感想等ください。

米澤穂信さんの古典部シリーズへの愛が伝わればと思います。

1


11月に入り、風が吹くと少し肌寒い思いをする季節になった。いつも通り何気ない学校生活を送り放課後になってポケットに手を突っ込みながら俺は部室に向かって歩く。

部室に到着してドアを開けようと思い手をかけたがドアは開かなかった。いつも職員室にカギを取りに行っても既に誰かが取りにきていて無駄足となることが多かったので今日は職員室によらず直接部室に来たのだが、こういう時に限って自分が一番乗りとは、不運なやつだと自分でも思う。もうじき誰か来るだろうと思い、俺は部室の前で待機することにした。

しばらくしてから、天草が来て不思議そうな表情していたから俺は事の次第を説明した。

「申し訳ございません」

天草は謝ってくれたが別に悪いのは天草ではないのだから謝らなくていいと言った。無論、俺が悪いとも思わない、これは偶然による不運だ。誰のせいにもできない筈だ。

部室に入り椅子に座り本を読む。いつも通りの流れだ。天草はカバンからお菓子を取り出して机の真ん中に置いた。食べても良いということなのだろう。

それからすぐに清水と友也も部室にやってきた。二人とも椅子に座ってお菓子を食べながら各々の時間を過ごす。これもいつも通りの流れだ。このまま日が暮れるくらいまで時間を潰し、家に帰る。最初はそんな生活に疑念を抱いていたが今では慣れてそれが普通になっている。しかし、今日に限ってはその平穏な日常が崩された。

突如部室のドアをノックされて俺たち四人はドアの方に目を向ける。ドアがゆっくりと開いて中に四人ほど入ってきた。誰か確認したのか清水が立ち上がる。

「白井先輩!どうしたんですか?」

先頭で入ってきたのは3年で美術部部長、白井夏帆だった。何度か彼女には世話になっている。その後ろにいるのは岸野美波、彼女も3年で以前面識があった。

残りの二人は見たことないが3年生だということは分かった。

「やぁ清水、ちょっと探偵部に用があってな」

俺たち四人は一つもピンときていなかった。

「大したことじゃないんだけど、探偵部諸君、我々と勝負しないか?」

白井は微笑みながらそう言ってきた。結構ですと言おうかと思った矢先、天草が目を輝かせながら立ち上がった。

「ぜひ!」


2


いきなり四人の先輩が部室に押しかけてきて勝負しろとは何事かと思ったが、まさかと思うことが一つあった。

「実は私たち1年の時に"探偵倶楽部"を設立していたんだこの四人で」

やっぱりか、昔白井からそんな話を聞いたことがあった。その事を知らないのはこの中で清水だけだった。

「え?白井先輩が探偵倶楽部?」

「まぁ廃部にしちゃったんだけどね」

ずっと黙っていた岸野が口を開いた。

「そこで、私たち探偵倶楽部と君たち探偵部で推理勝負をしたいと思って。卒業する私たちのワガママに付き合って欲しいってのが本音かな」

卒業などという言葉は少しばかりか卑怯な気がした。それで断ろうものならなんて罵声を浴びせられるか。それに、うちの部長はさっきから目を輝かせてやる気満々と言ったご様子だ。

友也が手を挙げて意見した。

「それは別に構わないんですけど、どうやってやるんですか?どちらかが出題するとしたらフェアな感じがしないんですけど」

「そこらへんは心配ない。どちら側でもない人間を用意した」

白井はそう言ってドアの方をみる。

ドアから入ってきたのは生徒会長の倉木 飛鳥だった。

「問題はこの倉木から出してもらう。無論答えもなにもかも知っているのは倉木本人だけだ」

白井はそう説明した。倉木が前に出て、俺たち四人と探偵倶楽部の四人の間に立ち説明を始めた。

「僕の稚拙な出題であることは申し訳ないけど互いに頑張って謎を解いてくれ。まず君たちに導き出して欲しいのは5文字の言葉だ。そして最初のヒントはこれだ」

そう言って倉木はポケットからグリーティングカードを取り出し両チームに渡した。そして、説明を付け加えた。

「期限は明後日の放課後、一応明日は祝日で学校も休みだから他のヒントは校内に準備しておくよ」

話が勝手に進んでいくことに多少なりとも不満を感じているが一番の不満は明日が休みだというのに学校に来なければいけないということだ。

それだけ説明した倉木は部室を出て行った。

「それじゃお互いにがんばろう。またな」

そう言って探偵倶楽部の人たちも部室から去っていった。勝ち負けなんてどうでも良いがやるしかない。

俺たちは貰ったヒントの書かれたグリーティングカードを見る。そこには、何やら絵の書かれたカードが逆さまに印刷されている。そしてその下に○が5つ。恐らくこの○は答えを入れるのだろう。

友也が絵を見てから言った。

「これはタロットカードだね、これは星のカードだ、それも逆位置」

さすがにこういうのには詳しいな。清水がそれに続く。

「星の逆位置ってなんだっけ、傲慢とか疲労?」

「さすが茜、よく知ってるね、ちなみに正位置なら希望って感じかな」

よかった、こちらにはタロットにそれなりに詳しい奴が二人もいてくれるとは。俺はタロットの種類をいくつか知っている程度で内容まではよく分からない。

探偵倶楽部にタロットに精通している人はいるのだろうか。まぁ白井や岸野なら知っていそうだとも思った。

「あとは明日、ですね」

天草がそう言い出した。たしかにもう帰る時間になっていた。俺たちは明日の朝また部室に集合することにして、今日は帰宅することにした。

家に戻り、家の本棚にタロットカードの図鑑がある事を思い出しそれをみることにした。

読んでいる最中に姉貴がリビングに降りてきて後ろから覗かれた。

「なに?タロット?アンタそんなものに興味が湧いたの?占い?」

「そうじゃない、ちょっと調べることができたんだ」

特に目を合わせずに俺は本を読みながら答える。

「あっそ、タロットは奥が深いからねぇ、どう取るかはアンタ次第ね」

そう言って姉貴は俺の頭をクシャクシャと撫でてどこか行った。恐らく姉貴はタロットのこともよく知っているのだろう。俺の好奇心のいくつかはこの姉貴に取られたんだろうと思う。たしかに言われた通り、タロットはいくつもの意味が存在してこれといった意味がないように感じた。俺は覚えることができないと思い、本を閉じて寝る準備をした。ベッドに寝転がり天井を見つめていると携帯電話が鳴った。相手は天草だった。俺は電話を取り言った。

「もしもし?なんか用か?」

「すいません、こんな夜にお電話して」

「いや、特に問題もないし大丈夫だが」

「ありがとうございます。私一つ気になったことがありまして」

気になったこと?俺が無言でいると天草は続けた。

「今回のこの探偵倶楽部との勝負なんですが、いつもの梅原さんなら参加を拒否するんじゃないかと思ったのですが、文句ひとつ言わずに参加しているように見受けられます」

俺は一瞬返す言葉を戸惑った。確かに言われてみれば俺はこの勝負にすんなりと参加している。昔の俺ならこうはいかなかったんじゃないだろうか。俺はどこかでこの推理勝負を喜んでいたのではないだろうか。

そんなことを天草に察せられるのが少し怖いと思った俺はこう言った。

「俺はすべての物事に文句を垂れる人間ではないぞ、学校行事なんかに文句を言ったこともない。それにどうせ避けて通れないことになるなら文句を言う時間やエネルギーが無駄だということくらいすぐに気付くさ」

「そうですよね、すいません突然こんなことを言って」

天草の方が不思議だ、仮に俺が文句を言って拒否したとして天草は引いただろうか、それはないな。あの目の輝きと天草の異常なまでの謎への好奇心は誰にも妨げられまい。

「それでは明日また学校で。おやすみなさい」

俺はおやすみと言って電話を切った。


3


次の日、俺たちは10時ごろに部室に集合した。学校にはいつもに比べて人が少ない。いくつかの部活が活動をしているだけで静かな学校となっていた。

「とりあえずどうする?」

清水が言った。確かに学校にヒントがあるとは言っていたが詳細がない。どうしたものか。

「とりあえず1時間ほどの間手分けして探してみないかい?」

そう提案したのは友也だった。

特に誰からも反対意見は出なかったためその作戦を実行することにした。

各々が学校に入り、各自でいろんなところを探す。廊下で白井と鉢合わせになった。

「梅原くんか、君たちも校内を探し回っているのか」

「そうですね、ヒントの場所がもう少し分かりやすいと助かるのですが」

「倉木くん曰く、捜査は足でということらしい」

あまり長話していてもいけないと思い、白井の横を通り過ぎようとした時、白井から一つ助言を授かった。

「そういえば、倉木くんが昨日伝え忘れたらしいんだが、ヒントは6つらしいよ。一応清水にも電話で知らせておくけど」

「先輩はフェアに勝負するんですね」

俺はそう言って会釈してその場を去った。

そのあと、廊下を歩きながら考えた。恐らくヒントを隠すなら使われていない教室。それにクラスではなくて共用の教室であるだろう。そう思って、一番近くにあった技術室に入った。その教室の棚にカードが置かれていた。これはタロットの隠者だ。

流石に持っていくのはダメだろうと思い、携帯で写真を撮ることにした。

そのあといくつかの教室を調べたが見つからなかった。およそ1時間が経とうしていたので、俺は部室に帰ることにした。

部室に戻ると天草と清水が既にそこにいた。

「何か見つかりましたか?梅原さん」

「隠者のカードが置いてあった、そのひとつだけだ」

「そうですか、私は女教皇と節制のカードでした」

それに清水が続いた。

「私は恋人のカードがひとつ」

そこに友也が帰ってきた。息が上がっている。

「力のカードと魔術師のカードを見つけたよ」

「これでちょうど6枚ね、白井先輩がヒントは6枚と言っていたからこれで答えを出すことになるわね」

すべてタロットカードで、星、隠者、女教皇、節制、恋人、力、魔術師、か。俺たちは椅子に座り考えた。

友也が要点をまとめようと話し始めた。

「とりあえず、カードを正位置か逆位置のどちらで解釈するかだね」

清水が反論した。

「待って、逆にここにないカードが選ばれてるって事はない?」

それには天草が意見した。

「もしそうだとしたらそれを示唆するようなヒントがあってもいいような気がします」

そう言われて清水も「そっか」といって納得していた。俺も何か言おうと思って意見した。

「恐らく1枚目のカードがわざわざ逆位置になっていたんだから、それらも逆位置で考えるべきじゃないか?1枚だけ逆というのも変だろう」

「それもそうだね、じゃあ意味を確認していこうか」

友也がそういうと、天草が紙とペンを取り出し、メモを取る準備をした。

「んじゃ、1枚目から確認するね、星は疲労や傲慢。隠者は悪事や悪知恵かな。女教皇はわがままだね」

清水が交代して説明を続けた。

「恋人は誘惑だとして、力は弱さか暴走、魔術師は不適当かなー」

そこまで読み解いたが、それでなにかを連想できるだろうか?

「ダメだー、全然わかんない」

そう言って天を仰ぐのは清水。逆位置ということだからすべてマイナス面な言葉しか無い。

しばらくの間全員が黙って考え込んでいた。腕時計を見ると意外にももう4時ごろになっていた。

まずいな、何一つ進展していない。探偵倶楽部の方が解き終わっているか分からないが、少しばかり全員に焦りを感じる。

なにか、何かヒントになることはないか?俺は天草の書いた紙を見つめる。傲慢、誘惑、暴走、不適当、わがまま……俺はひとつの答えを思いついた。

俺は小声で言った。

「七つの大罪」

他の三人が俺の方を見る。

「どういうことですか?梅原さん」

そう聞いてくるのは天草だった。

「いや、俺も確証はない。ただこの7つのカードの意味合いは七つの大罪に当てはめることができないか?」

「七つの大罪って言ったら強欲、傲慢、飽食、憤怒、嫉妬、色欲、怠惰。だよね?」

そういうのは友也、流石にこういう知識もあるのはありがたい。

「星の逆位置、傲慢。隠者は飽食、女教皇のわがままは嫉妬とも取れる。節制は強欲だな。恋人は色欲で、力は憤怒、魔術師は怠惰ってところだな」

そこまで説明すると友也が続けた。

「七つの大罪なら5文字で行ける!」

「たしかに、それなら全部逆位置じゃないと出ない答えだし、7枚のカードであることも頷けるわね」

そう言って清水も賛同してくれた。

天草の方を見ると答えを書いたグリーティングカードを見つめていた。この時の天草の気持ちがどういったものなのかは分からない。

「これが正解かは分からないが俺たち探偵部の答えとしてはこれでいいんじゃないか?」

他の三人も同意してくれて今日は帰ることにした。明日の放課後には答えがわかる。

家に帰りまたも俺は図鑑を見ていた。よく考えてみると吊るし人の逆位置もわがままという意味合いがあるじゃないか。どうして女教皇にしたんだ?そこに意味があるのか?女教皇と吊るし人で違いが分かりやすいとしたら正位置の方だ。だが倉木はあえて女教皇を選んだことになる。他のカードもそうだ。意味が似ているカードがいくつか存在している。昨日姉貴が言っていたようにタロットの意味合いはその時々によってどうとでも取れる気がするが。

そこまで考えた時一昨日の最初のヒントの時のことを思い出し、その時に抱いた疑問が頭をよぎる。

今は探偵部として出した答え、もっと言えば俺が導き出した答えに自信を持つべきだとは思うが、この疑問によって考えられるのはひとつ。まさかーー。


4


今日に限ってはいつもと違う日常を送った気がする。恐らくそれを感じていたのは俺だけじゃなく、探偵部の全員が、もしかすると探偵倶楽部の人たちも感じていたのではないだろうか。別に、今回の勝負に何か特別な意味があるわけでもなく、ただなんとなく勝負というものを意識してしまうのは人間の性だろう。

放課後になり俺が部室に行くと既に天草、清水、友也の三人が待っていた。とりあえず俺は椅子に座り他の人を待つことにした。少ししてから探偵倶楽部の四人が部室に入ってきた。

「待たせた、謎は解けたのか?」

そう聞いてくるのは白井だった。表情から察するに探偵倶楽部でも謎の答えに辿り着いているのだろう。

白井への質問には美術部の後輩でもある清水が答える。

「一応、私たちも答えは出しました」

そう答えている時に部室のドアが開き、今回の謎の出題者である倉木が入ってきた。

「すまない少しやることがあって遅れた、早速だが答え合わせと行こうか」

そういうと、部室の真ん中の方まで来て、真ん中の位置に立った。

自然と天草や清水、友也は立ち上がっていた。

「どちらから聞こうか、いや同時にカードを出してくれるか?」

そう言われ、探偵部からは友也が、探偵倶楽部からは岸野がそれぞれ紙を持って倉木の元へ行く。

そして二人がほぼ同時にカードを出した。

覗くように天草や清水、白井が見守っていた。

カードを出した瞬間、時が止まったかのような空気が流れた。誰とも言わず、「えっ」という声が漏れた。

俺たち探偵部と探偵倶楽部ので答えが違った。

倉木が両方のカードを手に取り読み上げた。

「まず、探偵部の方の答えが【七つの大罪】。そして探偵倶楽部の答えが【七つの美徳】だね」

まさかの真逆の答えだった。

たまらず清水が小さい声で友也に聞いた。

「ねぇ友也、七つの美徳ってなに?」

「七つの美徳ってのはね、貞節、慎重、愛、知恵、勇気、希望、忠実の7つであれば人生においてとかを有するっていうやつだよ」

つまり、七つの大罪とは別どころか真逆になるのだ。

倉木が喋り出した。

「それじゃ答え合わせだけど。探偵部と探偵倶楽部の勝負は」

そこまで倉木が言った時に俺は口を挟んだ。

「引き分けか?」

そういうと、皆が俺の方を向いた。

「どういうことですか?」

天草が聞いてくる。

俺は立ち上がり説明した。

「両方とも不正解ってことさ。そうだですよね?倉木先輩」

俺は倉木の方を睨むようにしてまっすぐみる。

「まぁそういうことになるね」

今度は白井が俺に向かって言ってくる。

「どういうことだ?梅原くんは何か気づいたのか?」

俺はふぅと息を吐いてから説明した。

「はっきりとはわかりませんが、いくつか思うことがあります。まず最初に配られたヒントです。もしかして、俺たちに渡されたカードと先輩たちが貰ったカードは違うんじゃないですか?」

そこまでいうと友也が白井の方に向き聞いた。

「僕たちの最初のカードは星の逆位置でした。白井先輩たちのは?」

少し驚いた表情をした後、白井が答えた。

「私たちのは星の正位置だった」

なるほど、これで全て分かった気がする。

俺は自分の推測を続けた。

「他のヒントは共通しているのに最初のヒントだけは別々だった。先輩たちを含めて俺たちは、その1枚目に全てを騙されたんですよ。俺たちは一枚目が逆位置であることからすべてのカードを逆位置で考えました。恐らく先輩たちは全て正位置で考えたんだじゃないですか?」

そう聞くと、白井と岸野は互いを見た後に頷いた。

「答えが全く逆になったのはそれが理由です。それにもし逆位置や正位置を確定するなら学校に置かれたカードは壁に貼り付ける方がいいに決まってる。置いてあるだけなのは正位置でも逆位置でも読み取れるようにするためでしょう」

全員が呆気にとられている。天草が目を大きく見開いたまま聞いてきた。

「梅原さん、つまり、その、答えは」

「答えは【大罪と美徳】だ」

そう言うと、天草はさらに一層目を見開いた。他の人も全員が納得したような表情をしていた。

倉木がクスっと笑ってから言った。

「完全に正解だよ。驚いた。分かるとはね」

どうしてと聞く前に、清水と白井がほぼ同時に「なんで?」と質問した。

「ここにいる全員、別に勝ち負けにこだわっている人はいないだろう?互いが情報を共有すれば真の答えにたどり着けるような問題にしたかったんだ」

そう言われると誰も反論はできなかった。

少し沈黙してから、倉木が続けた。

「さぁ、勝負は終わり!楽しかったよ。どうだい?みんなでパァーッとファミレスでも?」

全員がその言葉で切り替えることができたのか一気に明るい雰囲気になった。清水や友也が

「いいですね!行きましょう!」

と言って準備した。

天草が近寄ってきて聞いてきた。

「いつ本当の答えがわかったんですか?」

「昨日の晩までは俺も大罪の方だと思っていたさ。多少の引っ掛かりを感じたままだったけどな。さっきの答え合わせで真逆だったことで確証を掴んだ」

そう説明すると天草は少し微笑んでから

「さすがですね、梅原さん」

やめてくれ、褒められることではないし、そういうのは得意じゃない。

そこに白井と岸野がきた。

「勝ちか引き分けだと思ったんだけどな」

「引き分けじゃないですかどちらも正解できなかった」

「いや、君は真の答えにたどり着いた。私たちの負けだよ」

「やめてください。あんなのは後出しみたいなものです」

白井との会話に岸野も入ってきた。

「ふふ、謙虚すぎるのも罪だよ?梅原くん。素直に受け取ってくれなきゃ賞賛している私たちが馬鹿みたいじゃない」

俺は返す言葉が出てこなくて沈黙した。謙虚なわけではない。本当にたまたまなんだ。でもこれ以上の問答は無用だろう。

白井が続けた。

「ファミレスに行くだろう?支払いは私たち探偵倶楽部で持つよ。先輩でもあるしね」

そういうと先輩たちは部室から出て行った。残っているのは天草と俺の二人だった。部室の外から友也と清水が呼んでいる。

「行きましょうか、梅原さん」

「そうだな、久しく疲れた」

天草はクスっと笑ってからドアの方に向かった。その後ろ姿を見ながら思う。美徳のいくつかを持ち合わせる天草と、大罪のいくつかをかじっているような俺。対照的が故に俺は天草にこんなにも……いや、それでは天草までも俺にってことになる。これは傲慢、強欲だ。これ以上の大罪は良くない。

自分が罪を犯していると思うのは悲観的だろうか。だが自分に美徳があると思う人間の方が俺はよっぽどかわいそうな気がする。


「梅原さん、早く行きますよ!」

そう言われて、ため息をついてから俺も部室を出た。



読んでいただきありがとうございます。

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