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探偵とは名乗らない  作者: 亜拓 来人
5/12

生徒への挑戦

第5話目です。ついに始まる文化祭。ただでは終わらない祭が始まります!

1


夏休みが明けて、気分もなにもかもが学校生活モードへとシフトチェンジが完了した頃、我らが海星高校では文化祭の準備が行われた。文化祭は金曜日と土曜日の2日間行われる。といってもメインは土曜日だろう。他の学校の生徒や一般人も多くやってくる土曜日に対してはどの部活動も熱の入れ方が違う。ただ、俺たち探偵部にはその2日間を大きく分ける理由などなかった。

探偵部では文集を作りそれを売ることにした。数は40冊、売れそうで売れなさそうな数だ。

明日は寝坊できないと思い俺は寝ることにした。何事もなくこの2日間が終わりますように祈っていた。


次の日、文化祭当日とあってか生徒たちはいつになく活力に満ち溢れていた。俺は途中で友也と出会い、第三理科準備室に向かった。正門からは1番遠い特別棟の2階、さらにはその奥という最果ての地に俺たちの文集は売られている。なんでも部活動での販売場所はくじ引きによって決められるそうで、部長の天草がなんとも不運にこの最果ての地を引いてしまったのだ。

教室に入るとすでに清水と天草がいた。

「おはよう、随分と早いな」

「おはようございます。緊張してたのか早起きしてしまいまして」

少し照れながら天草が答えた。

「目指すは文集の完売よ」清水が声を大にしてそう言った。

「こんな最果ての地にわざわざ買いにくるやつがいればいいがな」

「来させればいいんだよ!」

そう胸を張っていうのは友也だった。

「来させる?どういうことでしょうか?」

天草が堪らなく聞いた。

「どうせ見て回るんだ、知り合いづてにでも広めてもらう。遠いからって絶対に来ないわけじゃないだろう?この棟には他の部活もあるんだから」

「俺は店番するぞ、動き回るつもりはない」

そういうと、清水がため息をついてから言う。

「ま、誰かはいないとだしね。私も美術部の方に行かなきゃだからあんまり探偵部として動けないかも」

「大丈夫です。私と濱田さんで動きます」

友也はとにかく天草に宣伝などできるのだろうか、想像ができん。さらにこの案を言い出したのは友也だ、コイツはただ単にこの文化祭を楽しもうとしてるだけなんじゃないか?

そんなことを考えていると校内放送がなった。

「えー、今から開会式を始めますので生徒はすぐに体育館に集まるように。繰り返す、すぐに体育館に来るように」

さてと、いよいよ始まる。探偵部として初の文化祭が。


2


体育館には全校生徒が集まっていた。もはや制服ではなくなにかのコスプレや体操服の生徒も数人いた。

最初に生徒会長の倉木飛鳥が諸注意と開会宣言をした。その後に総務委員長の橋場という人がマイクの前に立ち、各部活動での出し物や販売品についての禁止事項なんかを述べた。

おそらくこれで文化祭は開始されるだろう、他の生徒たちも立ち始めた時、総務委員長が話を続けた。

「えー、最後にこの文化祭において、あるサプライズを用意しました。いくつかの部活動販売の教室にヒントが隠されています。それらから一つの単語を作り出してください。正解者には賞状、および校内掲示板での一面記事によって表彰したいと思います。先生たちからの許可は貰っていますのでご安心を。答えがわかった方は総務委員室に来てください。それでは第53回海星高校祭を始めます!」

そう告げると、一瞬の沈黙の後に一気に生徒が騒ぎ出した。それは開催に対するものなのか、先のサプライズとやらに対してなのかはわからなかった。少なくともそのサプライズに立ち向かおうとする人も多くいるだろうとは思う。

俺はそんなのごめんだ。表彰され、一面記事で晒されるなど俺には耐え難い仕打ちに思える。

俺は探偵部の販売場所である第3理科準備室に戻り席について客を待った。

「とりあえず、確実に売れる分は省いとくか」

俺はそう言って5冊の文集を背後の机に置いた。部員4名と顧問の先生それで5人だ。あと35冊。

教室に近づいてくる足音が聞こえ、いきなり客かと思った矢先、教室に入ってきたのは天草だった。

「校内を見て回るんじゃなかったのか」

「いえ、それより先ほどの橋場さんのサプライズというのが気にかかります。一体なんなのでしょう?」

そう聞きながら詰め寄ってきた。

「知らん」

俺は関わりたくないので、そう言った。しかし、天草も引くことはない。

「梅原さんも考えてください」

「断る、それにヒントは部活動販売の教室にあるのだろう。だったら探しに行けよ、どの部活か分からんが見て回っていればいくつか見つかるだろう」

そう言ってやると天草は納得したようで、

「そうですね、それでは探してきます」

本来の目的は宣伝だぞと心の中で呟いた。

おそらく文化祭に乗じた軽いおふざけみたいなものだろう。問題自体も簡単で分かりやすいはずだ。教師陣も了承したとなれば生徒に対して不平等はなく誰にでも解くことができる問題ということになる。だとすれば頭のいい天草なら難なく解けるだろう。

そう思っていると一組目の客が来た。美術部部長の白井夏帆、その後ろにいるのは元かるた部の岸野美波だった。

「やぁ、梅原くん。文集を売っているそうだね、清水から聞いたよ。買ってもいいか?」

そう言うと、2人は200円ずつ机に置いた。俺は一瞬戸惑ったが、状況を理解して文集を二冊手渡した。

「ありがとうございます」

俺はそう言って頭を下げた。

「総務委員が何やら仕掛けているようだが、君は何もしないのかい?」

白井が聞いてくる。

「勘弁してくださいよ、俺はそこまでそういうのが好きでもないです」

俺は下を向きながらそう答えた。

「そうか、一つ言えることは才能があって発揮できるのにしないってのはそれを目指すものにとってはひど

く汚く見えるものだ」

白井はそう言った後に一言付け加えた。

「すまない、部外者が余計なこと言った」

岸野がお辞儀して教室を出て行った。

あの人と喋るのは慣れないな、つい緊張してしまう。今頃友也は何をしているのだろうか。



ついに始まった文化祭。正直僕は図は他の部活動に回ろうと綿密な策を練っていたが、今は一つしかやることが見えない。総務委員が仕掛けたというサプライズだ。

いくつかの部活に仕掛けたということは店番をしている孝太には参加することができっこない。探偵部として動けるのは僕と天草さんの2人だけ、だったら僕がこの謎を解いてやろうじゃないか。

まずはそうだな、正門側から潰したいから、漫研にでも行ってみるか。

漫研では文集を出していた。部員がオススメする漫画を理由も添えて紹介しているものだった。なかなか興味深い反面どれもありきたりなもので名作っぽいものは無かった。

ヒントを隠すとは言っていたけれどどういう形なのか分からない。すぐに見つけられるものなのかな。

そんなことを考えていると突然教室の後ろの方から大声が聞こえた。

「こ、これだ!ほら見ろよ」

数人の生徒が騒いでいる。僕もそっちの方に近づいてみると壁にカードが貼られている。そこには【12,24】と書かれていた。僕はすぐにメモ帳を取り出してメモをした。ついでにスマホで撮影もした。

こんな感じでヒントが隠されているのか!これなら案外すぐにヒントは集まりそうだ。

そう思って漫研からでて、横の教室に入った。料理研がレシピ本といくつかの試食を出していた。試食を貰い食べながら教室の隅々を探したがこの教室には無かった。 部活動にも何か関係があるのかな。まぁ今はとりあえず探すしかないと思い気を引き締めてその教室を出た。

「よーし、やるぞー」大きくガッツポーズした。

その後いくつかの部活動販売の教室に入った、今のところ見つかったのは7つ。

【12,24】それに【12海】【2山】【3高】【11空】【4風】【6鳴】これ以上あるのかないのかも分からない。すでに時間は午後2時になろうとしていた。あと調べていない棟が2つもある。今日中に解けそうにもないな、どうせなら一番最初に解いて総務委員へ殴り込みに行けるといいのだが。

少し動き回ることに疲れ休もうと思い、自販機でジュースを買っているところに天草るみが来た。

「濱田さん、聞きたいことがあるですけど今よろしいですか?」

「いいよ、なに?」

「実は私総務委員長さんが言っていたサプライズについて考えていまして。でもよく分からないので知恵を貸して欲しいと思うんです」

天草さんもこのことを調べていたのか。まぁ天草さんならこの謎に立ち向かわない理由はない思った。

「僕もちょうど調べていたんだ」

そういってメモ帳を渡す。

天草さんは天草さんなりにいろんなところで調べていたらしくポケットから紙を出して見せてくれた。

いくつかは僕と被っているが5つ違うヒントが書かれていた。

【9校】【5祭】【1月】【10陸】【8輝】

「この5つはどこの教室にあったんだい?」

「東棟です。私はその棟から調べていたんです、東棟はおそらくこれで全部です」

よかった、行くべき棟が1つ潰された。うまいこと分担できていたことが嬉しかった。

「濱田さんはこの棟の教室を調べていたんですね、この棟はこれで全てですか?」

「いやあともう1つ行ってない教室があるんだ、よかったら一緒に探しに行かないかい?」

そう言うと天草さんは目を輝かせて

「はい、ぜひ!」と言ってくれた。

僕があと1つ行ってないのは美術部が展覧会を開いている美術室だ。茜がいるからヒントを探す為だけに邪魔するのが申し訳ないかなと思ったのだが、まぁ向こうは喜んで案内してくれるだろうけど。

美術室に入ると受付には茜がいた。

「あ、友也来たんだ。それにるみちゃんもいらっしゃい」

茜はそう言って手を振っている。

「少し絵を見て回りましょうか」

天草さんがそう提案してきたので僕も賛同した。

美術室内をぐるっと回れるコースになっていてどこを見ても絵や彫刻が飾られていた。

茜の絵はすぐにでもわかる。普段の言動からは想像できないくらい繊細なタッチで描かれている絵。さすがは茜だ、相変わらず上手い。

ふと、天草さんの方を見ると埴輪の彫刻に見とれていた。なぜそれに?もっと可愛げのあるものもあるだろうに。

僕達はそのままコースを回り最後の出口を出ようとした時、机にカードが置かれていることに気づく。

「濱田さん!これ!」

「美術室にもあったのか。【7星】?」

これで今のところ13枚、これで全部なのかも分からない。

「濱田さん、一旦、梅原さんのところに戻りませんか?」

天草さんがそう提案してきた。

「そうだね、文集の売れ行きも気になるところだ」

そう、この件も解決したいが大事なのは文集の完売だ。

二人は美術室を出て、特別棟2階の第三理科準備室を目指した。


3


白井と岸野が買いに来たあとは5人の生徒が文集を買ってくれた。ふぅと息をついて俺は自分の持ってきた文庫本を読んでいた。もう少しで読み終わってしまう、もう一冊持ってくれば良かったと後悔していた。

その時足音が聞こえて客が来たんだと思い、文庫本を閉じて入口の方に目をやるとそこにいたのは天草と友也だった。

「やぁ孝太、どうだい?文集の方は」

「今のところ七冊売れた、俺たちの買う分を省いてもあと二十八冊だ。お前達こそどうなんだ宣伝の方は」

そう聞くと天草が詰め寄ってきて言う。

「それどころじゃありません梅原さん!」

そう言って天草はなにやら紙を取り出して見せてきた。そこには数字と漢字がいくつか書かれていた。

「なんだこれは」

「例の総務委員のサプライズです。今のところ見つかったヒントをまとめてみました」

「俺には関係ないだろう」

「いえ、梅原さんも考えて下さい!」

「まあまあ天草さん、強要するのもよくないさ。それより僕はこの特別棟を調べてくるよ」

「ちょっと待て、友也もこの件を調べてるのか?」

そう聞くと友也は少し驚いた表情をした後にこう言った。

「まぁね、生徒全員に対する挑戦なら僕にもそれを解く権利があると思ってね、じゃ行ってくるよ」

そう言って友也は教室を出て行った。

俺の予想では友也はどちらかというと傍観者になる側だと思っていた。こういうイベントの影に隠された案件に興味を示すとは思っていなかった。だが現に、友也は目の前で必死に考えている天草同様この件を解決しようとしていた。探偵部としてなのか友也個人としてなのかは分からないがどちらにしても友也も考えているのなら天草一人で考え込むこともないだろうから俺に流れ弾が飛んでくることはしばらくなさそうだと思った。

そんなことを考えていると天草が急に話し出した。

「そういえば梅原さんは今日ずっとここにいますよね、どうですか?休憩がてらに交代というのは?」

たしかに、朝からずっとここにいる。せっかくの祭りだなにも知らず1日が終わるのはちと問題かもしれない。

「そうだな、じゃしばらく頼む」

そう言って俺は席を立ち、さっきのヒントをメモされた紙を小さくたたんでポケットに入れて教室を出た。

特に行きたい場所があるわけではないが、とりあえずこの特別棟以外の賑わっている場所に行こう。

俺は校内を適当に歩きながら、どこかの教室に入るわけでもなくウロチョロとしていた。

ふと目に付いたのは友也も所属する歴史研究会の部屋だった。なんでもこの学校の歴史について調べたらしく年表のようなものやそれらの詳細が書かれていた。

この学校にすごい愛着があるわけではないが知っていて損はないだろうと思い、色々と見て回った。

学校自体は65年も続くこの近辺の高校でも一番歴史が長いらしく、今の海星高校となったのは53年前に別の高校と合併することが理由らしい。その時に今のこの星型の校章にかわり、各棟の4階増設、特別棟が誕生したとのことだ。その前は海鳴高校という名前だったらしいがこんな昔のことを一体どうやって調べたのか、むしろそっちに興味が湧いた。

俺はその教室を出て、自販機に行きジュースを買ってベンチに座った。

通りすがりの生徒が何か話しているのが聞こえた。

「それじゃ俺はこの答えで総務委員に伝えてくるよ、多分当たってる」

そう言いながら楽しそうに歩みを進める生徒を横目に俺はジュースをグビっと飲んだ。

皆、正解して表彰されることを望んでいるのだろうか。俺には全く理解ができない。そんなことをすればしばらくの間は注目され持て囃されるかもしれない。そんなことを望む生徒がいるということだろうか、俺はそんなのごめんだ。静かに穏やかに高校生活を送りたい。

俺はジュースを飲み干してゴミを捨てて、探偵部の方に戻ろうと歩き出した。天草の書いた紙を取り出し眺めていた。

「12個の漢字、そして謎の12と24か……」

12という数字で思いつくのは1年の月の数と時計?俺は天草が仮に答えにたどり着かなかった時のために納得されるような答えを探していた。俺も恐らくこの探偵部に入って少し変わってしまったのだろう。昔の俺ならこんな紙は燃えるゴミの日にポイしていたはずだ。

探偵部のいる教室に入ると天草と友也の他に清水が美術部から帰ってきていた。俺が休憩している間に一冊売れたらしい。時刻を見ると午後5時になろうとしていた。文化祭は5時までという規定がある。

「そろそろ片付けて帰るか」

「そうだね、後の二十七冊は明日ってことで」

みんなが片付けや掃除を始めた。校内放送によって全生徒にそれが下された頃には俺たちは終わっていた。

教室を出る際に俺はつい聞いてしまった。

「そういえば特別棟にはヒントあったのか?」

天草と友也が激しく驚いていた。

俺はしまったと後悔した。何気なく聞いたつもりだがこれは気にしているという表現以外に取れないだろう。

「い、いや、特別棟には1つもなかったよ。そ、それよりまさか孝太が自らあの謎を解こうとしているのかい?」

「梅原さん!ようやくやる気になったのですね!」

俺が?まさか……

「お前達が熱心に考えているからな、進展が気になっただけだ」

そう言って俺は歩き出した。清水が「なんの話?」と聞いて天草と友也が楽しげに今日のことを話し出した。

こうして開成高校祭1日目は幕を閉じた。


4


2日目、今日は土曜日ということもあり全生徒がやる気に満ち溢れていた。今日は昨日と比べ物にならないほど多くのお客さんで賑わうはずだからだ。

天気予報では曇りと言っていたが雲は少なく快晴と言ってもいいくらいに晴れていた。生徒達は準備をして客を待つ。今日は天草と店番をすることになった。

友也は友也で例の総務委員の件についていろんな人に話を聞くと言って早々に出て行った。清水は昨日同様美術部での仕事があるらしくしばらくは来れないと言っていた。文化祭が始まり一般の客も入ってきているだろうがこの最果ての地にたどり着くものはそうはいない。しばらくは暇な時間だけが過ぎていった。俺は文庫本読み始め、天草は例の件のヒントが書かれている紙を凝視していた。

そんなことをしてしばらくが立った時に二人の一般客が入ってきた。文集を手に取りパラパラと少し立ち読みをした後に1人の人が買ってくれた。

その後も何人かの客が足を運んでくれて次々と文集が減っていった。やはり昨日に比べると履けるペースが早い。そのうち昨日は買えなかったのか、そもそも存在を知らなかったのかうちの高校の生徒も買うようなった。

「ここに例の百人一首の真相が書かれてるんだって?」

「いえ、真相ではありません。悪魔で俺たちの推測や仮定です」

そんなやりとりが何人か続いた。時刻は午後1時、気づけば文集も残り十冊となっていた。

次に教室に入ってきたのは清水だった。

「美術部の方は終わったのか?」

俺がそう聞いたが、そんなことは軽く無視されて

「白井先輩が美術部のところでうちの文集を売ってもいいと言ってくれたのよ。五冊ほど持っていくわね」

美術室は正門から近い一番売り場の棟だ。なんなら全部持って行ってもいいのだが、そうなると次に来る客に失礼だろう。天草は了承して5冊を清水に持たせた。清水は受け取ると「じゃあ」といってそそくさと出て行った。

しばらくは客足が止まり静かな時間が流れた。天草が不意に聞いてきた。

「ところで梅原さん、例の総務委員の件なんですが、何か思いつきましたか?」

いずれその質問が来るとは思っていた。

「いや、そんなに考えてすらいない」

嘘ではない、そのことは天草と友也に完全に任せそこまで考えてはいなかった。

「そうですか、私はそろそろ降参かもしれません」

そいつは困る。天草が降参した後の行動など一つしかないーー俺に正解を求めてくる。

天草は謎が謎で終わることに納得しない。何かしらの結果を得なければ永遠と気にかけるやつだろう。エネルギーの浪費そのものに思える。

その時、放送部による校内ラジオが流れた。いろんな部活のPRをした後にゲストとして出てきたのが、総務委員長の橋場だった。

「生徒達に出したサプライズの件なんだけど、すでに何人かの生徒が答えを導き出し僕のところに来ました」

ほう、そんなに参加者がいたのか。そんなことに構う奴などそんなに居ないと思っていたが。祭りの空気に当てられたのだろうか。

「ですが、今のところ正解者はいません。ですので今まだ考えている方に僕から最終ヒントを出します」

正解者はいないのか。ヒントを出すあたりから察するに誰かに正解してもらわないと面白くないのだろう。

「ヒントは、時計。そしてWhere are you? です」

なんのことか全くわからないまま、ラジオは終了してまた音楽が流れ始めた。

今のことを聞いていた天草が紙にメモを付け足していた。そしてまた考え出していた。さすがに見ていて少しばかりかわいそうな気持ちがした俺は天草にこう告げた。

「しばらく店番を任せられるか?俺はちょっと外に出る」

そういうと、天草は少し間を置いてから

「ええ、大丈夫です」

とだけ言ってくれた。俺はメモの書かれた紙を持って教室を出てどこに向かうわけでもなく歩き出した。

昨日と違って至福の客が多くいて何かをしながら歩くには少し無理があった。俺は人の流れに逆らうことなく歩き少ししたところでその流れから外れた。

人が溜まることの少ない渡り廊下でさっきの紙を見て考えていた。数字と漢字、時計、そしてあの英語。

周りが賑やかだからか考えがまとまらない。そんなことを思っているとある男が声をかけてきた。

「孝太も今の放送を聞いて考えているのかい?」

友也だった。

「まぁな、天草がほぼ降参した今、避けられる問題ではなくなった気がしてな。何かわかったのか?」

俺がそう聞くと友也は首を横に振って答えた。

「分かるどころか、僕はもう回答権を失ったよ」

「もう答えを告げに行ったのか?」

「まぁね、最後の放送を聞いて僕なりに導き出した答えでこれ以外にないと思えたんだけど、ダメだった」

「聞かせてくれないか?お前のその答えとその理由を」

「それは別に構わないけど、探偵部の方に戻ってからでもいいかい?一応天草さんにも聞かせなきゃと思っているからさ」

そう言って俺たちは天草のいる教室に戻ることにした。教室に戻ると、天草と清水がいた。美術部の方が片付いたらしく帰ってきたとのことだった。美術部の方に渡した五冊は無事に全部売れたらしい。

あと残るは2冊となっていた。

時間は午後3時を回っていて、校内の客も減ってきていた。友也は自分のメモ帳を出して話そうとしていた。それを分かった俺たちは机に座り話を聞く体制を整えた。

「それじゃ僕の出した答えと理由を説明するよ。まず答えは【海星高校祭】って出たんだ。理由はこの数字と漢字、そして時計。時計のように各時間のところに漢字を置いてみたんだ。12海1月2山3高4風……っていう風にね。ここまでは最初の【12.24】ってのを見てから気づいてたんだ。答えを出せたのはあの校内放送、Where are you?ってやつだ。」

そこまで話して友也は一息ついた。なるほど12と24はそれだけで時間のことを表していると考えたのか。

待つことが歯痒いのか天草が問い詰めた。

「一体どういう意味の英語だったんでしょう?」

友也が咳払いを一つしてからまた話し始めた。

「あなたはどこにいる?って言う質問だ。普通に考えれば海星高校と答えるが、昨日今日ばかりはそうじゃない。僕達は開成高校祭にいるんだ。一応ちゃんとした根拠もある、僕達の校章は星型だろ?この時計で星を描こうとすると12と3と5と7と9に通るそれらの漢字は海、高、祭、星、校だから並び替えて海星高校祭ってなったんだ」

そこまで話すと天草と清水が興奮気味に納得していた。

「すごいです!濱田さん。納得しました!」

「たしかに友也の意見は筋も通ってるしこの文化祭のサプライズっぽいから私も納得よ」

しかし友也は喜びはしなかった。そうこの答えは間違いだったからだ。

「この答えを出した人は僕の他にも何人かいたらしいんだ、でもこれは答えではないと言われた」

天草が顎に指を当て少し考えるように上を見てから俺の方をみる。

「どういうことでしょうか?梅原さん。この答えは本当に間違いなのでしょうか?」

「そんなこと俺にはわからん。出題者が間違いだと言ったならそうなんだろう。それに気になった点もある」

そういうと、次は清水が突っかかる。

「気になる点てなによ。そんなものあった?」

「あるさ、12.24のヒントで時間であることを示すなら放送で時計というヒントを出したには何の意味がある?おそらく12.24は別の理由があるだろう。それに星を描くというなら別に3や9を通らなくても作れるだろう。海星高校祭という答えが出た後のこじつけにしている感じがする」

そこまで言うと3人は黙った。

「確かに星の通り道は答えが出た後に気づいたかもしれない」

友也がそう言って下を向いていた。

少し考えるか。おそらく漢字と数字を時計にするってのは当たっているだろう。他にヒントとなるものはなかったか?俺はヒントの書かれた紙を見つめる。そして一つの答えが思い浮かんだ。

俺は大きく息を吐いてからこう言った。

「おそらく答えはーー海鳴高校だ」


5


「ちょっと梅原、どういうこと?海鳴高校ってなによ?」

この質問には歴研でもある友也が答える。

「この学校の昔の名前さ。改名されてから今の海星高校になったんだ」

「そうだ、このことは俺もつい昨日知ったことだが、あなたはどこにいる?という全生徒に向けた質問に対しての答えは海星高校だけじゃない、海鳴高校だって当てはまるだろう」

「確かにそれを当てはめようとすればできるのは分かりますが、根拠はありますか?」

「ヒントの置かれていた教室さ、ヒントのカードは特別棟には無く、東棟と正門側の棟の3階以下にあった。これらは海鳴高校時代からある校舎と教室だろ」

俺はそう言って友也に促す。

「確かに、言われてみればそうかもしれない」

「そして、12.24の数字だが。おそらく日付、クリスマスイブのことなんじゃないか?」

「また梅原がチンプンカンプンなこと言い出した。クリスマスイブだったらなんなのよ」

「クリスマスといえばキリストだ。正確な情報としては出てないがキリストの誕生日は12月24日だか25日だとか、はたまた3月だとかいろんな説がある。おそらく総務委員長は12.24だけのヒントでは時間のことと勘違いする人がたくさん出てきたりして困惑したんだろう。だが今更カードを変えられるはずもない。

だからあの校内放送で追加ヒントを出したんだ。

あの質問が英語で言われたのは少しでもキリストを匂わせるためだったんじゃないか?そしてキリストは十字架だ。時計に十字の線を引くと、12、3、6、9を示す。並び替えれば海鳴高校だ」

そこまで説明するとしばらくの間沈黙が続いた。

分かりづらかっただろうか?

「悪魔で俺の推測だ、答えかどうか知る気もないし解答しに行くつもりもない」

黙っていた天草が口を開いた。

「すごい、です。全ての点と点が線になりました」

「さすがに納得するしかないわね、矛盾もない」

二人とも目を見開いてそう呟いていた。

「さすが孝太だよ!僕は歴研なのにそんなことは考えもしなかった」

俺はふぅと息を吐き時計を見た。もう少しで午後5時になろうとしていた。

「サクッと片付けて閉会式に行こうか」

友也がそう言って片付けを始めた。

「残りの二冊はどうする?」

「残ってもしょうがないから一冊は僕が買うよ。孝太の推理の代金としてね」

そう言ってにこりと笑う友也に俺は「やめてくれ」と言った。結局残った一冊は部室に保管ということで部費から払うこととなった。これで文集は完売。

「本当に完売できるとは思ってませんでした」

そう言って天草が清水とハイタッチをしていた。

校内放送がかかり閉会式をするから体育館に集合と合図がかかり俺たちは教室を出て体育館向かった。

閉会式では代休のことや今日の片付けの流れなどが説明されて終わった。俺たちはまた第三理科準備室に戻り掃除をしていた。ゴミ出しを任された俺は外のゴミ出しエリアに行きゴミを捨てていた。普段では見ないであろうゴミの量に圧巻されつつも分別をしてゴミを捨てた。

ゴミ出しエリアから戻るときに一人の生徒がゴミを持って歩いてくるのが見えた。総務委員長の、橋場だった。

俺はその横を通り過ぎるときに小声でしかし当人には聞こえる声で「海鳴高校」と言った。何歩か歩いた先で振り向くと彼は立ち止まって俺の方を向いていた。俺は軽く会釈すると彼は親指を突き立てて笑顔を見せた。その意味は分からない。正解ということなのか間違えているが考えてくれてありがとうという意味なのか。どちらでもよかった。もう文化祭は終わったのだから公表されることはない。終わったことを気にするのはあれだ、後の祭りってやつだ。


月曜日は代休となり、火曜日に学校に行くと掲示板には総務委員から正解者ゼロとの報告があった。ただ答えは【海鳴高校】とだけ書かれていた。






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