芸術と嘘
続編です。イメージは米澤穂信さんの古典部シリーズです
事件
天草るみの祖父の暗号解読からおよそ1ヶ月が経とうとしていた。探偵部の設立は認められたが、これといって活動はない。部室で各々が本を読んだり、喋っていたり、たまにクイズのようなものを出し合ったりしているだけだ。それもそのはず、そもそも探偵部を設立した理由が先の暗号の為だったのだから。
それが解かれた今目標なんてものはない。
ある日の放課後。いつものように部室で本を読んでいた。清水と友也はそれぞれ別の部活でいない。今、部室には俺と天草の2人だ。
特に会話するわけでもない。それで気まずくないのだからそれでいいと思う。
その静寂を破るかのように部室のドアが勢いよく開いた。
俺と天草は驚いてドアの方に目を向ける。そこに立っていたのは、今日は美術部に行くから探偵部にはこれないと言っていたはずの清水だった。走ってきたのか息が上がっている。
「はぁはぁ、ちょっとこれ見てよ」
そう言って一枚の紙を突き出す。天草が席を立ち見に行った。
「これは?」
「私の道具入れの中に入れてあったの」
俺は紙の内容を見ていないからよくわからないがラブレターの類でも入っていてそれを自慢しに来たのだろうか。しかし、清水がそんな人間ではないことは百も承知だ。
「梅原さんも見てください。大変なことですよ」
天草がそう言って俺の腕を掴み、引っ張った。
俺は嫌々清水の方に行き、持っている紙を見る。紙にはパソコンで打たれた文字で
【貴方の部費を隠した。貴方が探偵部なら見つけられるでしょう、期待している】
全く意味が分からない、イタズラだろうと俺は言って先に戻ろうとした。しかし、天草が目の前に立ちはだかった。
「梅原さん、これは事件です。しかも探偵部も巻き込まれた」
そう言ってどこうとしない。俺は清水の方に振り返り言った。
「美術部の誰かの仕業だろ、聞いてみればいいじゃないか。」
すると清水が少し顔を曇らせている。
「私もそう思って、部長に聞いてみたの。でも、美術部の一員として聞いているのなら仲間を疑うのは見当違いだって言われて…それでるみちゃんやアンタに相談しようと思ってここにきたの」
美術部の一員として、ね。なるほど。清水が探偵部なんかと兼部しているのをあまりよく思っていない人がやったのか。紙の文面からも探偵部を引き合いに出しているしな。
「それでは、犯人が誰か全くヒントが無いということでしょうか。」
天草が顎に指を添えて考えている。
「私的には筆や水入れ程度ならこんなに気にすること無かったのだけれど、流石に部費となるとね。先生に言って大事になるのも面倒だし」
清水が渋い顔をした。確かに部費を隠すとはかなり本気だ。人の現金を盗ったとなるとそれなりに覚悟が必要なはず。少し考えてみるか。
俺は清水から紙を取って机に戻り座る。清水と天草もそれぞれ席に座ったところで話した。
「まず、犯人は美術部の誰かだ。」
俺がそういうと天草がなぜ?と言わんばかりにこちらに視線を送ってくる。
「まず、部費を持ってきていることを知っている人物であること。そして、清水の道具入れからとってその紙を入れることが容易な人物。おのずと美術部しか考えられない」
俺がそういうと2人は納得してくれたようだ。
「でも部長さんがそれを否定したんですよね?」
「否定はしていない、仲間を疑うなと言っているだけだ、それに盗んだわけではなく隠したと書いてある。さっきも言ったがイタズラに過ぎない」
「でも美術部にそんなことするような子はいないわよ。それに他の生徒だって完全に除外はできないでしょ」
清水が自身をもった感じで言う。
「前者はお前の主観に過ぎない。俺からすればお前を含む美術部全員が犯人の可能性がある」
俺は清水を見てそう言ってやった。すると清水が反論する。
「そこまで言うなら犯人を探し出してみてよ。一応探偵部なんだから」
そう言われた天草が目を輝かせてこう言った。
「はい!任せてください、茜さん!」
こうなっては仕方がない。それなりに結果を出さないと清水も天草も納得しないだろう。
「いくつか質問させて貰うぞ。まず、お前はいつ部費を持ってきたんだ?」
俺は質問を開始する。天草がノートとペンを取り出しメモを取る準備をしていた。
「今日よ、大体月の初めの週に持ってくるの。道具入れの中に入れてね」
「部費は顧問の先生に渡すのか?」
「ううん、部長にだすの。部長がまとめて先生に渡してる。」
「じゃあ、部費が道具入れに入っていることを知っている人間はいるのか?」
「いるというか、美術部の子はみんなそうしてると思うよ。」
「お前が道具入れを持って美術室にいったのは放課後か?」
「いや、今日は2限に美術があったからその時に持って行ってそのまま置きっぱなしにしてたわ。部活の時間になって、少し部員と話してから道具入れを見たら部費じゃなくてこの紙が入っていたの。」
その後部長が来た時に聞いて、さっきの状況になったわけか。
「美術部は何人いるんだ?」
「今日は私を入れて5人だったわ。風邪で休んでる子と幽霊部員もいるからね、るみちゃんちょっといい?」
そう言って清水は天草のノートに今日部活に来ていた人間の名前を書いた。
5人か、清水を抜いたとして残りの4人の中に犯人がいるだろうな。話を聞く必要があるが、今日はもう遅い、明日にしよう。
「明日、その4人と話をするアポを取っといてくれ」
俺はそう頼むと清水は了承してくれた。
俺たちはそこで解散した。帰り道で天草が
「犯人はなぜこんなことをしたのでしょうか、探偵部に対して何か思うことがあるのでしょうか。」
その点については俺も同じ疑問を抱いていた、しかし、それは犯人にしかわからないことだ。それに「隠した」っていうことは探せば見つかるということだろうか。面倒なことにならなければいいが。
飾られた絵
清水茜の部費が隠された後日、俺と天草は美術準備室に来ていた。清水が部員にアポをとってくれて、話を聞くことができるとなって呼ばれたのがここだ。
準備室とだけあってこの部屋には沢山の美術道具が置いてある。周りを見渡していると清水が入ってきた。
「やっほ、探偵部が話したいことがあるって言ったらみんなちょっと身構えてる感じなんだよね、部長以外に部費のこととか言ってないからそこんとこよろしくね」
それだけ言って出て行った。そこに触れないようにしろとはかなり難しい話に思えた。まぁもし美術部員の中に犯人がいなければ清水の面目は潰れて居辛くなるだうから無理もない。
そう考えてるうちに1人目の生徒が入って来た。
名前は 小野 さくら 1年生だった。
俺は昨日美術の授業があったか、とか美術室に来た時に誰かいたのかなどの質問をした。彼女は昨日美術の授業がなく部活に来た時にすでに部長以外はいたと言っていた、おそらく部費を盗むタイミングは無かっただろう。それに1年にそんな度胸があるとは思えない。俺は最後に道具入れを見せてくれと頼んだ、可能性としてそこに隠していると思ったからだ。彼女の道具入れは新品かのように綺麗で整頓されていた、まだあまり使用してないのだろう。もちろん部費の封筒らしきものはなかった。
2人目の生徒は清水と同じクラスの 渡辺 美希。
彼女は清水とほぼ同じ動きをしていた。1番近くにいるから犯行がしやすいんじゃないかと思ったが、部活に来るタイミングも同じだったとすると難しいように思えた。清水に何かあったのか心配している様子だった。
色々と質問した後に天草が最後に清水の兼部について聞いてみると
「私、茜の絵好きなんです。だから兼部でもいいから美術部は続けて欲しいと思ってます。ただ部長さんは最近、兼部で美術をしていることを少し気にかけていました」と言っていた。俺は彼女にも道具入れを見せて欲しいと頼み見せてもらった。先ほどの1年とは違いかなり使い込まれているようだった。ただ、封筒らしきものはなかった。
3人目は3年で副部長の米谷 奈々。
彼女は4限目に美術の授業があったと話した。部活に来たのは1番最初だったらしい。彼女なら部費を取って隠すことが可能だと思えた。ただ彼女が少し申し訳なさそうに言っていた。
「私、美術部以外にも書道部と新聞部に入っていて、正直あまり美術部には来てないの。昨日はたまたま顔を出しただけで、1年や2年の部員ことほとんど知らないんだよね」
清水が兼部していることも知らなかったらしい。嘘か本当か分からないが自分が兼部しているなら他人を責めることはないだろうと思う。最後に道具入れを見せて欲しいと頼んだが、
「ゴメン、私持ってないんだ。大体いつもこの準備室の筆とか借りてるから」
なるほど、確かにたまにしか来ない人からするとこの部屋は便利だと思う。
最後に来たのは3年で部長の 白井 夏帆。以前美術室の絵を見ている時、賞を受賞した絵のほとんどが彼女の書いたものだった。清水曰く、高校の美術界では有名で学校の生徒会役員もやっているらしい。
「はじめまして、君たちが探偵部かい?」
いきなり質問をされた。天草が答える。
「はじめまして、探偵部2年の天草です。白井さんは昨日の茜さんの事件をご存知なんですよね?」
「あぁ、そのことなら聞いたよ。だが、うちの部にそんなことする人はいないと思うが」
白井は俺に冷たい視線を向けた。俺は怯まずに聞きたいことを聞いた。白井は昨日は美術の授業が1限にあったらしく、部活に来たのは1番最後だと話した。
「自分の部の部費を盗むような人がいると思うのか?」
そう聞いてくる白井に俺は答えた。
「盗まれたんじゃありません。隠されたんです。」
「同じことでしょ。それに君たちの質問で得られるのは盗むことのできた人間は誰かということだけで、隠された場所は知りようがないと思うが、この質疑応答に意味があるの?君たちの目的は犯人探し?」
言っていることは正しかった。だが俺には思い当たる答えがある。
「おそらく隠されているのはこの美術室です。」
天草が驚いている。白井はまっすぐにこちらを見ている。
「ほう、君は犯人に目星がついているのか?」
「いえ、今のところは分かりません、ただ犯行が可能なのは少なくとも美術部員で、事を荒立てないことを考えると自分の目の届く範囲に隠すと思っています。」
隣に座っている天草が聞いてくる。
「どうしてですか?現金だからですか?」
「学校内のどこかに隠したとして、万が一他の生徒や先生が見つけたとしたら大事になるだろうからな」
「君は面白いことを言うね、君名前は?」
白井にそう聞かれ、自分がまだ名乗ってなかったこと思い出し答えた。
「2年B組、梅原孝太です。」
白井はそうか、と答えて席を立った。
「生徒会の仕事があるから今日はこれで失礼するよ。また明日にでも話そう」
そう言って白井が準備室から出ていこうとしたところを呼び止めた。
「すいませんが、道具入れを見せてもらってもいいですか?一応全員に見せてもらっているので」
「構わない」
白井はそう言って道具入れを持ってきた。
開いて中を見た。かなり綺麗に整頓されていた、一年の持っていたもの以上と言ってもいいくらいに綺麗なものだった。不必要なものは入れず必要なものを必要なだけ入れているといった感じがする。
「ありがとうございました」
そういって道具入れを返した。
俺と天草は美術準備室から出て美術室に入った。
すると清水が近づいてきて聞いてきた。
「どう?なんか分かったの?」
「どうだろうな」
俺はここであまり話せないと思い、軽く返事した。
「なぁ今日の部活は何時に終わるんだ?」
清水に聞くと、清水は時計の方を見てからあと1時間くらいと答えた。
「天草、俺たちは帰ろう」
そう言って美術室を出てから、天草が聞いてきた。
「梅原さん、何か分かりましたか?」
「いや、犯人は分からない。可能生でいうと、部長か渡辺のどちらかだとは思うがな」
「私もあの4人の中でそれができるのが部長の白井さんしかいないと思いました。でも、あのまっすぐな白井さんがそんなことをするとはあまり思いたくありません」
少し寂しげな表情をしてした。
天草は人を疑うことができないだろうと思った。
俺は友也と帰ると告げてそこで天草と解散した。
俺は部室に戻り本を読む。美術部が終わるのを待っているのだ。一応、清水には美術室に残るよう連絡しておいた。
俺は自分の中で今回のことを整理した。昨日の内に清水の部費が美術部員によって隠された。
もし仮に犯人を特定できたとしてそれを公表するべきだろうか。盗まれたわけではないから見つけさえすればなにも問題はないような気がする。
そんなことを思っているうちに時間がきた。俺は美術室に向かう。その途中で職員室の前を通った時に先生と少し話をした。おかげで清水を待たせる結果となってしまった。
美術室に入ると清水がいた。
「すまない、少し遅れた」
「別にいいけど、なに?話って」
「1つ聞きたいことがあってな、お前は美術部員に犯人がいないと思っているんだよな?」
「そうね、米谷先輩のことはよく知らないけど、そんなことをする人には見えないし。部長さんや美希のことも信頼してるし何より芸術家として尊敬さえしている。そんな人たちがやったとは思えない。それがどうかしたの?」
「いや、部員たちの話を聞く限りでは、全員犯行ができそうではないから、俺の考えすぎだったのかもと思ってな」
そう言って俺は美術室に飾られている絵や彫刻のところに行った。
「なによそれ、じゃあ振り出しに戻ったってこと?」
清水が問いかけてくる。
「そうでもないさ、隠した犯人なんてどうでもいいだろう。隠された部費さえ見つかれば。俺はこの美術室にあると思っているんだ」
「なんで?」
俺は清水の方を向き答えた。
「全くのノーヒントだったからだ。もし校内のどこかに隠したとして俺たち探偵部の腕を試そうと思うなら何かしらのヒントや手がかりを知らせるはずだ。それがなかったってことは俺たちが美術部と接触すること、この美術室に来るとわかっていたからだろう」
そう説明しながら俺は飾られた絵を見ていた。
窓側の一角に紫陽花の絵が描かれたキャンバスが7枚2段になって飾られていた。しかし、その中の1枚はまだ途中なのか色が少ししか塗られていない。それに上の3枚はともかく、下の4枚は隙間なく飾られている。このスペースに4枚は無理があると誰が見ても思うだろう。俺は清水に聞いてみた。
「どうしてこの途中の絵も飾られているんだ?」
「あーそれね、今風邪で休んでる子の絵なんだけど、部長さんが1人だけ除け者にするのはかわいそうだからって言って飾ったらしいの」
「これはいつ飾られたものなんだ?」
「昨日か一昨日だったと思うわ。色は塗られてないけどすごく上手で、飾ってもいいと思ってるわ」
以前に美術室に来た時は3枚ずつの計6枚が飾られていたはず、なぜ無理矢理にでも7枚飾ったんだ?しかも完成していない絵を飾る必要があるのか?そんな疑問を抱きながら絵を見ていると、
「私ももう帰る準備するから」
清水がそう言って準備室の方に入っていった。
俺は美術室内をウロウロしていた。そして見つけた。清水の部費が入った封筒を。
俺は準備室にいる清水を呼び出した。
「清水、あったぞ」
清水が慌てた様子で準備室から出てきた。
「嘘でしょ!?どこにあったの?」
「教卓の引き出しだ」
俺はそう言って部費の入った封筒を清水に手渡した。
「ホントに美術室内にあるなんて、よかったー。アンタの手を借りたのは釈だけど」
清水はそう言って自分のカバンの中に封筒を入れた。
「これで一件落着だな」
「でも一体誰が何のためにこんなことしたんだろう」
「誰でもいいさ、隠されたものを見つけられたんだ」
「まぁそうね、私は先生に渡してから帰ることにするわ」
清水とそこで解散した。
もし、探偵部が見つけられなかったら犯人はどうしていたのだろうか。色々と疑問が残り少しモヤモヤする。清水にとって解決したがまだ俺としては解決になっていない。こうなれば犯人に直接聞くしかないと思った。
芸術と嘘
部費を見つけた次の日の放課後、俺は校門前である人を待っていた。
「すまない、待たせてしまったな」
「いえ、お忙しいのに申し訳ありません。白井さん」
「今日は特に用事がないからな。それに君が部費を見つけてくれたと聞いたよ、一応感謝する」
「そのことについて少しお話があるんですけどいいですか?」
「あぁ、構わないが、立ち話もなんだから場所をかえよう」
そう言われ俺たちは学校の近くの喫茶店に入った。
お互い飲み物を注文し、それが届くまでは沈黙だった。俺が頼んだアイスコーヒーと白井の頼んだ梅昆布茶が届き、白井が一口飲んでから口を開いた。
「それで、話ってのは?」
俺は咳払いをしてから話す。
「単刀直入に聞きます。清水の部費を隠したのは白井さん、あなたじゃないですか?」
俺は白井の顔をまっすぐと見て言った。
「ふむ、なにか根拠があってのことだろう?話してみて」
「ではまず、部費の隠されていた場所から説明します。」
「教卓の引き出しにあったらしいわね、たしかにあこなら誰も開けようとはしないものね」
「いえ、それは清水についた嘘です、本当は教室の後ろに飾られていた紫陽花の絵のキャンバスの裏にありました。」
そう、俺は昨日清水が準備室に入った後、抱いていた疑問を確かめるために色が途中までしか塗られていないキャンバスを取り外し裏を見てみると、そこにマスキングテープで封筒が貼られていたのだ。
「俺は気になったんです。あのエリアに飾っていたのはあなただと聞いて、おかしいと思ったんです。あなたほど几帳面で細かい人が、4枚のキャンバスを無理やり飾るような雑なことをする人にはみえない。それに完成していない絵を飾るなんてどう考えてもおかしいと思ったんです。そして昨日俺は職員室で美術担当の先生に話を聞きました。一昨日の昼休み鍵を借りにきた人はいないかと、あなたは昼休みに美術室に行っていた。だがそのことを昨日俺たちに隠していました。」
そこまで話、俺は一旦飲み物を口に含んだ。
「俺はあなたを責めるつもりはありません。今言ったことも推測に過ぎず見当違いかもしれません。ただ、どうしてこんなことをしたのか理由を話しては貰えませんか?」
俺は語気が荒く、睨むような目で白井を見ていた。証拠などはない。ただあの4人の中で犯行ができるのが白井しかいないと確信した。あとは彼女のいう言葉を待つだけだ。
すると白井が話し始めた。
「あなたの言っていることは全部正解よ。私が昼休みに茜さんの部費を取り、あのキャンバスの裏に貼ったの」
そこまでは昨日の段階で分かっていることだ。本題はここからだった。
「どうして?と聞いたわね、強いて言うならあなたたちが"探偵部"だから、かしら」
俺は理解ができなかった、探偵部だからこんなことを?いやそれにしてはリスクが大き過ぎないか?
そう思っていると白井が続けて話し出した。
「実は、私が1年の頃にもあったのよ、探偵部が。名前は違うし、半年しか存続しなかったけどね」
天草が創立する前にすでに探偵部というものが発足していた事実に俺は驚いた。しかし、半年で無くなったというのは一体どうして。
「面白半分で始めたのよ。うちの学校はいろんな部活をすることができるでしょう。私たちもそれにあやかってそんな部活を作ったの。最初は純粋に楽しかった、仲のいい友達と放課後に謎解きやお喋りをするだけ。みんな何かしら他の部活と兼用だったから全員が揃うことは少なかったけど、毎日が楽しかったわ」
今の俺たちの状況と似ている。設立の理由は全く違うが今の俺たちもそんなものだろう。
「でもね、何もない部活なんていく必要がないの。他の部活を休んでまで探偵部に顔を出す理由なんてなかった。私たちは次第に探偵部にいくことが無くなり、気づいたら探偵部は登録抹消されてたの。それもそうよね、誰もいない部活なんて存在しないのと同じなのだから」
言い返す言葉が見つからない、確かにそうだ。俺と天草は探偵部にしか入っていないから部室に行き時間を潰す。ただ友也や清水は兼部として入ってる、現に最近はあまり部活に来てなかった。俺たちもそんな状況になり得たのかもしれない。
白井は茶を啜り、また話始めた。
「いつだったか、茜から友達が探偵部を作ったからそこと兼部になると言われたわ、私は探偵部が復活したことが少し嬉しい反面、不安にもなったの。探偵部は活動目標や毎日の部活ですることなんてなにもないことを知っていたから。それで今回の事件を起こすことにしたの。茜を巻き込んで何かすれば探偵部が絡んでくると踏んでね」
この人は探偵部を毛嫌いしていたわけではなかったむしろ逆だ探偵部というものに愛着があったのだ。だからこそリスクを承知で俺たちにあんな挑戦状を出したのか。
「どうやら私が心配する必要なんてなかったみたいだけどね。私たちなんかとは比べものにならないほどしっかりとした探偵たちで安心したよ」
そう言って少し笑っていた。
俺は言葉が出なかった。この人がやったことで少なからず俺は2、3日間放課後にちゃんと部活動をしていたのだから。所詮俺たちは自己的に行動のできる部活ではない。そんなことを思っていると白井から質問された。
「私からもきいていい?どうしてあの制作途中の紫陽花のキャンバスに隠してあると思ったの?他の6枚の可能性もあったのに」
俺は素直に答えた。
「もしも俺たちが見つけられなかったら、と考えたんです。そうなるとあなた自身、または他の第三者が偶然見つける必要があります。未完成の絵なら取り外す口実になるのでその時に発見したことにすればいい。他の完成した絵を取り外す理由はしばらくなさそうですからね」
そういうと白井はクスリと笑い、
「さすがね、その通りよ。それと、昨日部員に聞き込みする必要性はあったの?」
「正直、結論からいうとなかったかもしれません。ですが、あなたの道具入れを見てなかったらあの飾られた7枚に疑問を抱くことはなかったかもしれません」
「そうね、あれは今すぐにでも直したいくらい気になってるの。1人の芸術家としてあの雑さは許せないわ、それにあなたたち探偵部に嘘をついたことも」
俺は思っていた疑問をぶつけた。
「あなたは清水が兼部で探偵部にいることに不満がありますか?」
「今はないわ、勝手にあの子と私を照らし合わせて不安になっただけ、彼女には美術部も探偵部も続けて欲しいと思ってるわ」
俺はホッとした。ここでどちらかを選んで欲しいと言われたらひどく困っていただろう。
「今回のこと、あなたの仕業だということは清水には伏せておきます。理由がどうであれアイツはあなたを芸術家として尊敬している。あなたがそんなことをする人だと思いたくないでしょうから」
「ありがとう、恩にきるわ」
俺はそれを告げてアイスコーヒーの代金を置いて店を出た。
俺は色々と抱えていたモヤモヤが無くなりスッキリした感じで家に向かっていた。
あの時に正直に昼休みに美術室に来たと言われていたらその場で犯人呼ばわりしてしまっていたかもしれない。
俺たちに嘘をついたことも、清水を、探偵部を心配してこんなことをしたのも彼女なりの芸術なのだろうか。
嘘を芸術というのは少し悪い気がする、そんなことを考えながら帰路を歩く。
家が見えたと同時に家の前に人がいることに気づいた。天草と友也がいた。
「天草さんから聞いたよ茜のこと。無事見つけれたってことも」
「まぁな、それで?なんかようか?」
そう聞くと天草が一歩前に出て聞いてきた。
「見つかったことはすごく良かったのですが、私としては誰が、なんのために?という疑問が解消されてなくて、それで梅原さんに相談したくて来たんです」
なるほどね、まぁ天草には昨日嘘をついてしまったこともあるし、この二人なら隠すことはないだろうと思い、全てをありのまま話した。清水には黙っておくことも。
「そうだったんですか、白井さんが…納得しました」
「過去に探偵部があったとはね、その先輩方に心配されるとは僕たちもまだまだってことだね」
そうは言っても探偵部としてするべき活動もないし、正直こんなことが毎回あっても困る。今のままでいいと思うのだが。
「では文化祭に探偵部として何か出すのはどうですか?」
「文化祭か!いいねそれ。でもなにをするかだよなー」
また勝手に話が進んでいる。日々の活動すらないのに文化祭でなにができるというのか。
「そんなことは全員で決めるべきことだろう。この3人で、しかも人の家の前で話すことではないと思うのだが?」
「それもそうですね、茜さんもいる時に話し合いましょう、それでは今日はこれで失礼します」
「明日は僕も探偵部の方に行けるから、そん時だね。んじゃバイバイ」
そう言って二人はそれぞれの帰路にむかって歩き出した。
面倒なことは嫌いだが今の俺は少なくとも白井さんたちのためだと思ってこの部活を続けることが使命なのかもしれないと思った。彼女たちに探偵部の行く末を嘘のない芸術としてみてもらうために。
ぜひ感想等ください!




