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短編類

じい様

 家のじい様は90を越えて未だに元気で頭もしっかりしとる。

 60も生きてれば長生きなのに、何とも凄いもんだ。


 毎朝支度をして、おっ母の作るミノタウロスステーキを400gぺろりと食べてから、昼の握り飯持って杖ついて畑にいくんよ。


 流石に鍬は持てんだろって? いやいや、アースクエイクで耕すのさ!


 精密な魔力操作とマルチタスクで杖を地面にトンと突いたら、一瞬で必要な場所だけ畝ができるのよ。おいらは苗植えるのと収穫だけでいいんだわ。羨ましいだろ。


 んで、食べ頃な野菜もいでそのままダンジョンに潜るのさ。

 死にに行くようなものだって? いや、死なねぇんだから。

 おいらが先に寿命でおっちぬかもな!


 何してるのかって? 分からんね。ミノタウロスの肉は持って帰ってるから50階層に行ってる位は想像できるけど、教えてくれないんだわ。



 ――



 ダンジョンの薄暗い洞窟を腰の曲がった老人が杖を両手に持ち、前方に構えている。その気迫は杖で斬り殺される姿を錯覚できるほどであろう。


 その相手は音も無く、高速で老人の元へと飛び込んでくる。

 老人とは思えぬ反射神経で、飛び込んでくるタイミングに合わせて杖先を払い迎撃する。

 左手を杖の半ばで持ち、下から掬い上げ、右手を伸ばして突く。

 円に回して弾き、叩きつける。



 果てなき死闘と言いたいが、この歳で体力は持たない。

「参った」


 この勝負の勝者は……スライムであった。



 スライムと侮るなかれ、刃物で刺せば直ぐに倒せる存在である。

 しかし、魔法の耐性を持ち、杖の先は丸い。

 ……そう、相性である。



 転移魔法で1階層から50階層へと逃げ出すと、50階層の小部屋に溜まっているモンスターが出現した老人に反応を見せる。

 普通の冒険者なら逃げ出すモンスターの集団だが、そのモンスターの頭部へと鎌鼬や火の玉、岩の槍が吸い込まれ倒れていく。小部屋に残ったのは老人だけとなった。



 小部屋の中央に出現した上がアーチ状の箱に腰掛けて昼飯にする。

 水の玉を浮かべて手を洗い、首にかけている手拭いで拭く。

 畑で採れた真っ赤でみずみずしいトマトをぞぶっとかぶり付き喉を潤す。うむ、今年も良い出来だ。


 腰に結んであったカゴの箱から握り飯を出す。堅めに握られて表面に塩が少し付いているだけの飯、でも噛むほど甘味が出てくる。

 運動の後の飯は旨い。



 食い終わったら奥の間に行って腹ごなし。番人たるミノタウロスとは長い縁だ、杖に魔力を纏わせ、ひょいと振ると三日月の刃が飛んでいく。吠えるミノタウロスの首が落ちる。


 あまり動かさないといい肉が取れる。暴れると血が肉に溜まって臭みが出る。

 背骨の両隣、腰の肉だけを魔力の刃で切り取って仕舞う。



 出て来た箱を開けると、大きな斧が入っていたのでそのまま閉める。重いのは持てん。

 そのまま出現した転移陣に乗って家に帰る。

 肉は明日のステーキなのだが、縁側で茶を啜っていると猫が来るので肉の切れ端を与えてのんびり夕飯まで過ごす。

 そんな毎日を繰り返す、平和な日々。


 ―――


 じい様が帰って来たな。

 帰ったら縁側で三毛様とくつろいでるのさ。

 三毛様は贅沢を知ってしもうたからな、普通の飯なんて食わないよ。

 しっぽが二本だと? 肉のお陰かね?



 俺らも肉食えば長生きできるんじゃねぇかって?

 朝から肉は食えんだろ。

 そんなに食えたら長生きするわ。



じい様の杖:賢者の杖。ダンジョンドロップ品。副次的な効果によってボケない(知力アップ)

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