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東方秘霊端  作者: 彼岸花虚実
1/5

騒霊の日々

 また、夜が来る。彼女は、夜は好きではなかった。

 昔から、夜は孤独を感じさせる。生き物を感じられなくなるのだ。

 ただ、『生きていない者』は、その限りではなかったのだが。

 扉が開く音。騒がしい三姉妹が帰ってきた音だ。

「たっだいまー!」

「帰る時くらい、少し静かにしなさい」

「そんな事言ってちゃ、騒霊の名が泣くよ!」

 いつも通り、騒がしく、それでいて、落ち着く声。

「お帰りなさい。今日のライブはどうだった?」

 これまた、幾度と無く繰り返してきた、いつも通りの迎え方。

 幻想郷の中でも、忘れ去られたこの邸を訪れる者は、滅多にいない。そこで彼女達は、四人、ずっとこうして暮らしてきた。

「今日は大変だったよ。ルナサはいきなり場所変えようとか言うし、メルランは音間違えるし」

「あれはしょうがないわよ。雨の中演奏したかった?」

「私が間違ったんじゃなくて、二人が音ずれたんでしょ?」

「私のせいじゃないわ」

「キーボードはずれないよ」

「まあまあ、とりあえず、今日の演奏について、詳しく訊かせて頂戴」

 そう言って、少女は台所へポットを取りに行った。内容こそいつも少しずつ違うが、見慣れた光景。少女には、それが、たまらなく楽しく、幸せに感じられた。

=====

「そうだったの。大変だったね」

 決して楽ではない仕事ながら、それでいて楽しそうに説明をする三姉妹の話を、少女は笑顔で聞いていた。

「それにしても、雨で移動なら、二人にも言ってあげれば良いのに」

「伝えた所で、雨が降る事に変わりは無い。それに、もし耳の良い観客が聞いていたら、それこそただのアクシデントになる。そのリスクを冒すより、何も伝えずに、サプライズにした方が良いでしょう?」

 ルナサの説明に、リリカは納得したが、メルランはそれでも不満そうだった。

「メルラン、前にも言ったけど、客を楽しませられないなら、それは一流じゃないわ。分かるでしょう? 楽しければ、それで良いの。その為のライブなんだから」

「う〜ん、まあ、それもそうね」

 メルランは、昔から、楽しいかどうかが判断基準だ。演奏を生業とし始めたからも、それは変わらない。

「どうしたの? 楽しそうに笑って」

 リリカの問いに、少女は笑顔で答える。

「いや、ただ、幸せだな〜って、思っただけ」

 そして、少女はやおら立ち上がり、椅子を戻した。

「今日は疲れちゃったわ。そろそろ、先に寝るわね」

 そう言うと少女は、自分の寝室へ向かう。

「おやすみ、姉さん達」

「おやすみ〜」

「おやすみ!」

「おやすみなさい」

 ベッドに入り、昔と変わらぬ日々に満足しながら、レイラは、眠りに就いた。

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