6話
「ーーーッ!!」
悲鳴を上げようとしたが、押さえつけられる痛みのせいで声にならない。
鋭い爪が腕に食い込んでくる。
突然の出来事と激痛のせいで、頭が真っ白になっていた。
……そんな俺の状態など気にすることなく、
黒い鳥は尖ったクチバシを振り下ろしてきた。
「死っ……」
んだか、と思う間もなく。
突然、炎が黒い鳥を襲った。
「ギッ!?」
炎は一瞬だけ燃え上がり、すぐに消える。
黒い鳥は苦悶の声を上げてどこかへ飛んで行ってしまった。
「大丈夫ですか!?」
イズが駆け寄ってくるのが見えた。
今の炎は、今朝見たイズの魔法だろう。
「な、なんとか……」
実際、ギリギリだったがついばまれる事はなかったし、魔法に巻き込まれもしなかった。
ツメをたてられた両腕は少し痛むが問題ない。
「……何か見つけたんですか?」
深呼吸して呼吸を落ち着かせてから、答える。
「そこにロケットが……あれ。」
落ちてなかった。黒い鳥に襲われてる最中にどこかへやったか。
立ち上がり、辺りを見回す。
「あっ!」
……さっきの黒い鳥が、近くの木の上に止まっていた。
首こそ不気味にカクカク動いているが、その白く濁った眼球はこちらを見据えている。
だが何より、そのクチバシにはさっきのロケットをくわえていた。
あれがもしかしたらここに来た理由の手がかりになるかもしれないのだ。
持っていかれる訳にはいかない。
「イズさん、あそこ!魔法!」
「えっ?あっ、はい!」
慌ててるせいで変な言い方になってしまう。
だが状況を察してくれたのか、イズは詠唱を始めてくれた。
……まだ黒い鳥は木の上から動いていない。
どこかに飛んで行ったら再び見つけることは難しいだろう。
どこにも行かないでくれ、という俺の祈りが通じたのか。
「あっ!」
黒い鳥はロケットを飲み込むと、こちらに爪を向けながらすごい速さで襲い掛かってきた。
身を守れそうなものもなく、反射的に腕で顔を守るくらいしかできない。
ツメが目の前に迫る。
その時、詠唱を終えたイズが魔法を放った。
イズの放った火球が黒い鳥に命中する。
さっきよりも強い炎が黒い鳥を包んだ。
「ギャアッ!!」
黒い鳥は一度大きく鳴くと、地面に墜落する。
そしてしばらくのたうち回ると、やがて動かなくなり、
――その体が溶けて、黒い煙になった。
「は?」
黒い煙はかなりの量があったが、やがて空気に溶けて消える。
そして、黒い鳥が倒れた場所には、銀色のロケットと、黒い石が残されていた
今こそ主人公はただのヘタレですが、少し経ったらちゃんと戦うようになるのでご安心ください。
表現や文脈に違和感があれば是非教えて頂ければと思います。