4話
イズに案内してもらえ。私は色々やる事がある。
大体そんなことを言われ、外へ出る。
魔法の練習をしに行ったというイズのところへ向かう……とは言っても家の目の前なので、すぐに見つかった。
……彼女は目を閉じて、両手を前に突き出し、何かを呟いている。
「ーーーーーー」
言ってる内容は全く聞き取れなかった。
少しすると、彼女の周りに赤い光が出始め…両手の前に火球が形成されてゆく。
やがて呟きが終わり、彼女は目を開く……次の瞬間、火球が勢いよく手から放たれた。
火球は勢いよく飛んでいき、やがて地面に着弾すると。
「おおっ!」
着弾した所から勢いよく火の手が上がった。
驚いて思わず声を出す。
多分、いや確実に今のが魔法だろう……当たり前だが初めて見た。
「あ、ユウさん。」
イズがこちらに気づく。
「こんにちは、イズさん。…今のが魔法ですか?」
「そうですよ。見た事なかったんですか?」
「……俺のいた国では、魔法を見たことがないですね。」
「それって、外の世界のことですか?」
ぎくりとした。
……別の世界から来たことがバレたか?
「外の世界って、なんのことですか?」
できる限り平静を装って質問を返す。
「その、私、この森から一度も出たことなくて……」
「一度も?」
つまり、森の外ということだろうか。
問い返しながら、彼女をまじまじと見る。
……実際の所はわからないが、16才くらいに見える。
「はい。外の世界の事、いろんな本とかで読んだことはあるんですけど……
おばあちゃんに、森の外は危険だから絶対に行っちゃダメだ、って。」
「……」
俺なら絶対にそんな言いつけ破って、外に行くと思う。
言い方は悪いのだが、どうも彼女はあの老婆の言いなりのようだ。
親とか上の人のいう事を聞くのはおかしくないのだが、それでもこの年になるまでずっと、というのは行き過ぎな気がする。
「外の世界に行きたいとか思わないんですか?」
「思いますよ。でも、おばあちゃんにダメだって言われてるから…
それでも、いつか外の世界に行けたらなって思います。」
彼女はそう言った。
正直、行きたいと思っているのなら行けばいいのに、とは思う。
何なら俺がここで、いいじゃん!行こうぜ!と誘う事だってできるのだ。
でも、俺は間違いなくあの老婆に助けられているし、イズはあの老婆をとても信頼している様子だ。
恩を仇で返すのも嫌だし、仮に言ったとしても恐らく彼女は老婆の言いつけを破ったりしないだろう。
「……そうですか。」
結局、そう返事をするしかなかった。
「……ところで、何か用事があったんですか?」
と、イズが聞いてくる。
元の目的をすっかり忘れていた。
俺は彼女に、俺が倒れていた所を調べることになったので、その案内をしてほしい、という事を伝えた。
「わかりました。少しだけ準備してきますね。」
彼女はそう返事をすると、家の中に入っていった。
……外から改めて見ると、この家大きいな、と思った。