表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1話

 瞼の奥から光が差し込んでいる。


 電球とかの人工的な明かりじゃない。

 もっと自然で暖かい……太陽の光だ。


 ……だがどれだけ太陽が暖かろうが、布団の中の温もりに適うはずもない。

 というか朝だから外は普通に寒いし。

 さらに都合のいいことに光の加減は弱めで、恐らく朝方であろう事がわかる。

 こんな時間にわざわざ起きる理由がないのだ。


 そう考え、二度寝に入ろうとしたのだが……ふと枕がないことに気づいた。

 寝相でどこかにやったか?

 手探りで頭の上やら横やら布団の中まで探すが、全然見つからない。


 ……まだ朝早いし、枕を探して二度寝するには十分な時間があるだろう。

 そう考えると、仕方なく重い瞼を開ける。


「……はい?」


 そして、全く見知らぬ部屋の光景が視界に飛び込んできた。


――――


 ログハウス……のような室内。よくわからない柄の絨毯や、無味乾燥なクローゼット、丸い形のランプ、観葉植物…俺の寝ている布団、というかベッド。

 そして見慣れぬ扉と、ガラスの張ってある窓が一つずつ。

 部屋自体はあまり広くなく、特別おかしな場所はない、が……。


 さすがに自分が見知らぬ部屋にいると知ってから「よっしゃ寝るぜ!」というほど豪胆な性格はしていない。

 肝心の枕も見当たらないのも気になるが、それよりも気になることが…


「……なんで俺、裸なんだ?」


 しかも何故か傷だらけというオマケまで付いている。

 体が動かせない程じゃないが、動かすと割と痛い。

 普段寝るときは寝間着で寝ているはずなのだが……というか寝ぼけてたとはいえ気づかないものか、俺は。


「落ち着け、こういう時はまず、直前に何をしていたかを思い出すんだ。」


 よく解らない状況に陥った時は、冷静に自分のステータスや持ち物を確認。

 そして前後の行動を思い出す。ゲームの基本だ。

 努めて冷静に、自分の最後の記憶を思い出す。


「そうそう、自分の部屋で2ちゃんねるを見ていたけど、夜遅い時間になって寝たんだ。」


 ……どう考えても今の状況に繋がらなかった。

 家族で旅行に来たか?そんな記憶は全くないし。

 あ、寝ていた時に誘拐されたか?それなら傷だらけなのも犯人にやられたってことで、しっくりくるような。

 しかし、我が家はお世辞にも裕福な方とは言い難いし、そんな家の息子を狙ったって意味がないと思うが……。


「とりあえず、起きるか?」


 なんにせよ、ここにいたって仕方がない。

 それに、誘拐されたというのであれば、こんな朝早い時間にこっそりこの場所を出れば、シレッと脱出できる可能性もある。


 覚悟を決め、名残惜しいがベッドから出ていざ部屋の外へ……という瞬間、部屋の外から足音が聞こえてきた。

 足音は明らかにこっちへ向かっている。


「やばい……っ」


 足音の主が誰であれ、さすがに全裸を見られるわけにもいかない。

 それに、もし誘拐犯や、それに類する誰かだったとすれば、起きている姿を見られるのはマズイかもしれない。

 急いでベッドへ戻り、そのまま布団を被ると鮮やかに寝たふり。

 

 ……しばらく待つと、扉が開く音、そして誰かがこちらをうかがっているような気配がした。


「目が覚めたんですか?」


 全く知らない女の子の声だった。

 完全に意表を突かれた俺は、ついとっさに体を起こし、声の主の姿を確認しようとして目が合う。


 ……やっぱり女の子だ。

 年齢も身長も大体俺と同じくらいに見える。

 顔たちがやや幼く、活発そうな印象。

 だが、何より印象深いのは、鮮やかな明るい黄緑色の髪。


 ここで始めて、一つの可能性に思い当たる。


 ――これが噂の異世界転生という奴か。


 そんな突飛な発想が出てしまうほどには、黄緑という現実離れした髪の色の印象は強かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ