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たんぽぽ  作者: しゃわ
9/11

9、あなたのために

 バイトを始めて1ヶ月。

そして修学旅行まで1ヶ月。

僕は1日も休まず、毎日バイトに通っていた。

体はかなりくたくただけど、心はゆいへの愛情でいっぱいだ。

疲れた体を栄養ドリンクで奮い立たせ、今日もバイトへと向かう。


 バイトをやり始めてから、ゆいと会う時間が短くなった。

ゆいは会う度に、

「なんか疲れてない?部活大変?」

って気にかけてくれる。

「大会近いからメニューキツくてさ。体くたくただよ。」

って嘘をついた。

「無理だけはしないでね。」

「分かってるから。じゃあ、今日はここまでな。明日も一緒に帰ろうな。」

「うん!バイバイ!」

ゆいと別れた後、急いでバイトへ向かう。

最初は、土日だけという条件だったが、店長から仕事に対する姿勢をかわれて、平日も部活終わってからの2時間、特別にやらせてもらえる事になっていた。

これも全てゆいのためと思うと、重い体にもムチを打ってがんばれるんだ。


 バイトの先輩の大学生の井上さんに、

「しゅう、この一覧に載ってる商品を全部注文してくんねぇか?オレこういうの苦手で…。代わりに今日メシおごってやっからさ。頼むわ!」

「全然いいっすよ。」

「悪いな。俺、あっちでレジやってっから。」

「分かりました。」

先輩から与えられた仕事をこなしていく。

急に、もうすぐホワイトデーが近いということに気づく。

「何返そうかな…。悩むなぁ…。」

すると、僕の目に飛び込んできたのは、一覧表の中にあった、“パリの本場パティシエが作る高級チョコレート詰め合わせ”。

値段は4800円。

決して安い値段ではない。

たまには奮発してみようかなと思い、こっそり注文した。

ゆいを驚かせたかったんだ。


 ホワイトデー前日。

高級チョコが業者から届く。

ラッピングの時点で、普通の物と質が全然違う。

少しばかり優越感。

俺にもこんな高いもん買えるんだぞ的な。

「楽しみだなぁ…。」

ゆいと会う約束をした夜を楽しみにしていた。

ゆいには内緒のバイトが終わってからだけどね。


 「今日も注文やってくれる?」

と井上さん。

「いいっすよ。」

と俺。

こうしてまた机に向かいながら、片手にボールペンを持ち、もう片手には受話器を持つ。

一生懸命僕は仕事をしていた。

いや、一生懸命仕事をしすぎていた。


 僕は椅子から落ちて倒れていた。

2話の本文中で、「昨日の6月4日のこと」と記載しましたが、「今日の2月14日のこと」の誤りでした。お詫びして訂正致します。

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