8、決心
唐突に出てきたゆいの言葉は、僕の心に疑問符を投げかける。
「行けないって……なんで?」
「それは………」
またゆいは黙り込む。
それから10分が経っただろうか、ゆいがまた口を開く。
「旅行代払えないんだよね…。今ちょっと家のお金が無くて…。ごめんね」
話を詳しく聞くと、ゆいの姉ちゃんが有名な私立大学へ入学するため、入学金と授業料がかなりかかるということだった。
「そっか…。しょうがないな…。なんか気を悪くさせてごめんな。」
「こっちこそ気を悪くしてごめん!図々しいけど、お土産期待してるから!」
ゆいは明らかに無理して笑っていた。
そんなの分かっていた。
それから家に帰ってすぐに寝てしまった。
起きていたくなかった。
なんかずっと寝ていたかった。
それほどショックだった。
ゆいの無理した笑い顔が忘れられず、思うように眠れなかった。
顔を洗い、頭を洗い、コーヒーを飲みながら、僕は1つの決心をする。
土曜の朝、僕は面接を受けていた。
「なんのために働くのですか?」
“ゆいのため”って言いたかったけど、
「自分を少しでも成長したいからです。」
って言っておいた。
このコンビニのバイトで少しでもゆいを楽してあげたかった。
時給700円、土日の10:00〜18:00という条件で無事に面接に合格。
これからが勝負だ。
バイトと学業の両立ならともかく、オレの場合は、バイトと学業と部活の三立をしなきゃいけない。
無理だと思うだろ?
オレも思ったけど、どのくらいゆいのために出来るか、自分に試してみたかったんだ。
部活にも手を抜きたくないし、勉強も皆についていきたいし。
一番は、ゆいと一緒に修学旅行行きたい。
そのためのバイトなら、どうなったって続けていけると思ったのさ。
バイト先で優しい先輩に出会って、仲良くしてもらった。
不安だったバイトも少しずつ慣れていった。
部活にも土日以外は毎日参加した。
学校の成績はどんどん下がっていったけど、ゆいへの思いはどんどん増していった。
今の自分にとって、ゆいの為に働くという事が幸せだった。
ゆいの喜ぶ顔を想像しながら…。
修学旅行の日まであと2カ月と迫っていた。
お手数ですが、宜しければ感想などを書いてもらえるとありがたいです(^O^)