5、騙し
気付いたらいつもより30分も早く学校に来てしまった。ある程度は緊張してるんだろう。いや、ある程度どころじゃない。結局あれから緊張して眠れなかったんだ。
もはや思い出となった下駄箱のロッカーを開けるとまた手紙。開けてみると、
「昼休みね(^o^)/」
と書いてあった。これはゆいの手紙だなって思ったけど、場所が書いてない。つまりオレは昼休みどうするコトも出来ない。ゆいってやつは、肝心なトコを忘れるおっちょこちょいなんだなって思って笑った。
「しゅう君居ますか〜!?」
いきなり教室に響き渡った女子の声。ドアからこっちを見ている。その女子は僕の手をいきなり引いて、教室から連れ出した。同じクラスの男子も女子も全員僕を見ていた。初めての優越感と恥ずかしさが僕の顔を赤らめていた。
「いきなりなんだよ?恥ずかしいだろ。」
ちょっとカッコつけて言う。今くらいいいだろ。ずっとカッコつけて無かったんだし。
「ゆいって読んでね!いきなりで驚いたと思うけど…。あの…返事聞かせてもらっていい?ずっとドキドキして待ってたの。」
僕は言葉を返す。
「何でオレがいいって思ったの?」
ゆいも言葉を返す。
「しゅう君の驚く顔が好きだから!」
「驚く顔!?なんだそれ?」
「いきなりだけど、しゅう君の自転車のカゴにさおりって人がチョコ入れたでしょ?それあたしが驚かせるために入れたの。その後こっそりついていったら、公園で他人のチョコ食べちゃうんだもんね〜。さおりなんて人知らないし。」
ゆいは得意気に笑いながら言う。僕は全て見られていた感じで恥ずかしかった。
「あういう時の顔が大好きなの!」
どんな顔だよって心でツッコむ。
「ねぇ、ねぇ結果は?じらしすぎ!」
「こんなオレで良ければ全然。」
またカッコつけた。
「ありがと!しゅうって呼んでいい?それとも図々しいかな…?」
「あぁ全然いいよ。」
気がつけば素直に言ってた。カッコつけるのは自分に合わないらしい。
ゆいは言う。
「今日から一緒に帰ろうね。毎日だからね。」
「おう。放課後な。」
照れながらその場を後にした。
後の授業は頭に入らない。自分が今付き合ってるなんて信じられなかった。
とにかく初めてづくしで胸がいっぱいだった。
今思えば昼休みも驚かされてたなぁ。こんな風にゆいのコトばかり考えていた。