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たんぽぽ  作者: しゃわ
3/11

3、バレンタイン

やっとのことで公園に着く。誰も居ないベンチに座る。もちろんチョコの確認のため。胸の鼓動が抑えられなかった。絶対あの校門の人からだと勝手に思っていた。だってあんなに自分を見て笑ってくれたから。


 僕は偶然にも不運な少年。他人事に巻き込まれた不運な少年。そして女性に縁が無い記録をまた更新。何故かというと、チョコ同封の手紙を見たら、

「ずっと前から圭君のことが好きでした…。よかったら付き合って下さい!byさおり」

って書いてあったから。


 良かったじゃんって思うでしょ?でも残念ながら僕の下の名前はしゅう。つまりこのチョコは人違い。僕のかすかな期待はこっぱみじん。

「でも気にしない。15年間こんな調子だったし。」って言い聞かせたけど、気にしない訳ない。あんなに必死にチャリ漕いできたのに。あんなに信号無視したのに。生まれてから今までで一番虚しい瞬間だった。好きになりかけてたバレンタインデーはやっぱり嫌いになった。


 しばらくして、こう気がつく。

「1つのチョコに期待した自分もアホだけど、この差出人のさおりっていう人もアホ。普通バレンタインに渡す相手間違う奴いねぇだろ。」

ここで僕の良心が働く。

さおりっていう人を探して届けてやろうか?

気が向かない。

じゃあ圭って奴に届けてやろうか?

これも気が向かない。

だって俺が圭に渡す瞬間、ホモに思われそうで嫌じゃん。こうして30分考えた末にたどり着いた決断は“試食”。


 “試食”だったはずが完食してしまった。めっちゃ美味かった。手が止められなかった。ますます自分宛てのチョコが欲しくなった。

「圭って奴のおかげでいい思いさせてもらったわ。」そう心に思って、チョコの箱を公園のゴミ箱に捨てた。こうして6月の薄暗い夜7時に家へと帰っていく。

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