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たんぽぽ  作者: しゃわ
2/11

2、負のオーラ

 これ、駅前の占い師のお婆ちゃんに言われた。僕にはそんな能力みたいなのがあるらしい。普通なら落ち込んだりするだろうけど、だいたい分かってた。今までそういう人生だったからね。


 まぁ、こんな自分の言い訳を聞いてくれよ。

僕が人を本気で好きになったのは中学一年のときだった。

その相手はローカルアイドルのあみちゃん。

通称あみあみ。

27歳。聞いて笑うだろ。この頃は年の差なんて関係ないんだよ。バラエティーで汚れ役をしていたとしても僕には輝いてみえたんだ。正直この業界で27は厳しい。そんなコトくらい中1の僕でも分かってた。でもそれを分かっていないかのように可愛らしく振る舞ってくれるあみちゃんが好きだった。大好きだった。


 僕は気づく。どんなに頑張ってもあみちゃんは僕には向かってこない。振り向いてもくれなかった。握手会の時も愛想笑い。気づくのが遅すぎた。気づいた時には中学卒業してた。


 虚しい人間だろ?でも自分は一生懸命恋をしたつもり。

ただそれがいい結果にならなかっただけ。

そうやって自分に言い聞かせる。

いや、言い聞かせるしかない。泣きたくなかったけど、ボーっとしてるだけで涙って出ちゃうんだよ。手で拭っても拭っても落ちてくる。目のどこにしまってあんのか聞きたいくらい、流れ落ちてくる。部屋で夜中の3時まで泣いた。こうやって僕の初恋は終わったんだよ。初恋って呼べるのか分かんないけど。


 それ以来恋には全く興味が無くなった。かわいい子を見て、かわいいっては思うけど、付き合いたいなんて絶対に思わなかった。



 僕のアイドル。あれは間違いなく僕のアイドルだ。あみちゃんとは違う。振り向いてくれた。あれは愛想笑いじゃなかった。あの人が僕にチョコをくれた証拠なんて無いけど、それでも十分だった。可愛かったなぁでは終わらせたくない。付き合いたいっても思ってる。僕は今あの人に恋をしている。


 早くチョコの差出人を見たくて、急いで帰っていた。こんなにスピードを出して帰ったら事故を起こしそうだけど、どうでもよかった。やっぱりどうでもよくはないな。まぁ、あの時はそのくらい胸が踊ってたんだよ。


 これが昨日の6月4日のこと。僕にも少し遅い春が来た。家への帰り道には近づきつつある夏を知らせるタンポポが元気に何輪も咲いていた。 

 もうあのお婆ちゃんには負のオーラなんて言わせない。

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