11、再会
夜が過ぎて、朝が来る。
ホントに来るかどうか心配していたけど、ゆいは面会時間が始まる9:00きっかりに来た。
それから2人は謝りっぱなし。
俺が、
「昨日はごめん。気を遣えなくて…」
と言えば、
「あたしも、機嫌悪くさせちゃってごめんね。病気で入院してるのにあんなコト言っちゃって…」
最初の15分は、ずっとこんな感じの会話が続いた。
それからは昔のように明るく笑って話せた。
なんだか懐かしい気持ちになった。
渡せなかったチョコレートも受け取ってもらった。
ゆいは、
「ありがと〜!ここで食べてもいい…?」
「いいよ。高かったんだからな〜。」
2人でチョコレートを食べた。
汗水たらして必死に働いて買ったチョコレートは、なんだか市販のチョコレートよりも、かなり美味しかった。
高級チョコだったってのもあるけどね。
だって、ゆいの笑顔を見ながら食べれたんだから。
この笑顔を見る為に働いてきたんだから。
この努力も、この疲れも、この貧血という病気も、ゆいのためだと思えば、どうってことない。
気がつけば泣いてた。
笑いながら泣いてた。
ゆいも泣いてた。
ゆいが抱き締めてくれた。
もう悲しい思いはさせちゃいけないんだ。
絶対に。絶対に。
それから面会時間ギリギリまで2人で話した。
退院が3日後だと医者から聞いてたから、ゆいとデートのプランを考えた。
「退院って水曜だっけ?」
「確か木曜って言ってたな。」
「木曜はちょっとね…。」
「別に違う日でもいいよ。それより木曜なんかあんの?」
「あたし、この春から毎週木曜に塾入るコトになっちゃってさ…。ごめん…。」
「気にしない。気にしない。進学校だし仕方ないでしょ。」
「じゃあ金曜でいい?」
「わかった。楽しみにしてるから。」
「あたしも!無理だけはしないでよ?また病気になったとかイヤだし。」
「分かってるから。気をつけてな。」
「うん。じゃあね。」
そう言ってゆいと別れた。
実は、ゆいがトイレに行っている間に、書いておいた手紙とバイト代を、封筒に入れて、ゆいのバッグの下の下の方に入れといた。
これで任務完了。
この為にゆいを呼んだっていうのもある。
なんだか気分がスッキリした。
小さい頃から物事をやり遂げた事が無かったから、初めての気持ちだった。
なんだかんだあったけど、考えてみれば、この2ヶ月良かったのかな〜って思った。
これからも、もっともっとゆいの事を好きになれるって分かった2ヶ月でもあったからね。