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進化し人類の名はヴァンパイア  作者: 夏月コウ
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第三十話 十席会議

 【ディアスパーティー事件】から四日が経過した。


 大東洋吸血鬼帝国。旧大和皇国の領土だったここは、今となっては吸血鬼が支配する()()()が存在していた。この国の実権を握る存在こそ今世界で起きている国連と【帝国】―――人類とヴァンパイアの戦争を始めた張本人だ。その名は武蔵野むさしの日向ひなた皇帝だ。


 そして現在帝国首都・帝都東響。皇帝官邸の〈皇族室〉では各地で軍事活動をしている十席のメンバーが集合していた。と、いっても本人が居るわけではない。


 〈皇族室〉には部屋の三分の二を占めているであろう円卓机が配置されていた。各席には十席のメンバーがホログラム投影で席に着いていた。無論そこには武と皐月の存在もあった。しかし、この円卓机には()()()()()()()()()()()


 武は子供が玩具を取られた時の様な表情で机に脚を乗せながらふんぞり返っていた。無論実際に円卓机の上に脚が乗っている訳ではなく、ホログラム投影で映し出されているだけだが。恐らく、通信の向こうで武の執務机に脚を乗せ居ているのであろう。


 「ねえ、武お兄ちゃんと皐月お姉ちゃんは秀一お兄ちゃんと佳純お姉ちゃんに会ったの!? ねえねえ」


 十席の第九席にして皇族五男。大東洋吸血鬼帝国軍アフリカ・中東アジア戦略司令官第一司令官・東野ひがしの 隆雄たかおは好奇心旺盛な弱冠十四歳の少年だ。国連軍からは“戦闘狂バーサーカー”と呼ばれている。藍鼠あいねず色の髪に茶鼠ちゃねずみの瞳を持つ。階級は大佐。隆雄は両手を机に付き身体を少し浮かせながら元気な声で問いかけた。それに武はふんと息を鳴らしそっぽを向く。すると、皐月が代わりに答えた。


 「ええ会いましたわ。御二人とも元気にしていましたわ。あと武は今、秀一兄様に負けて悔しがっているのよ」


 「へえ…。早く会いたいね。ねえ、舞耶まや


 「うん…」


 十席の第十席にして皇族五女。隆雄と同じ軍隊の第二司令官・笠木かさき 舞耶まやはいつも隆雄と行動を共にしている大人しい少女だが、とても頭が良く“帝国の天才軍師”ともいわれ帝国軍参謀をしている。歳は隆雄と同じく十四歳である。ボブカットの浅葱あさぎ色の髪に朱色の瞳を持つ。階級は大佐。大きい丸眼鏡のレンズごしの朱色の瞳はどこか安心している様に見えた。すると、今度は別の方向から皐月に問いかけられる。


 「それで、皐月姉さんは秀一兄さんと佳純姉さんを連れ戻せたの?」


 「………いいえ。残念ながら、それは無理でした。ごめんなさい。美寿穂みずほ


 「そう…。でも、元気にしていたのならそれでいいの……」


 斎木さいき 美寿穂みずほは最初秀一と佳純の二人に会えないと聞き少ししょんぼりとするが、皐月の言葉にほっこりとした表情を浮かべた。彼女は十席の第七席にして皇族四女である。大東洋吸血鬼帝国軍北米大陸戦略司令官である。歳は十五歳で、沈着冷静な性格をしている。目は桃色の長い前髪で常に隠れている。また髪は立った状態だと膝までとどくほど伸ばしている。皇族以外の人物で彼女の目を見たことがある者は少なく、帝国や国連軍は彼女の事を目隠し将軍とも呼んでいる。階級は准将。今度は美寿穂の横に陣取っている少年が口を開いた。


 「そういえば、暗殺リストに載っていた、秀一お兄さんと佳純お姉さんを誑かした女は始末出来たんですか? 皐月お姉さん?」


 「ええ、()()殺れましたわ」


 「多分ですか……。まあ、いいでしょう。どのみちあの女には消えてもらう必要がありましたしね」


 春島はるしま 響輝ひびきは腕組しながら美香佐を始末したのか皐月に聞く。が、その結果に若干の違和感を覚えながらもあえて言葉を続けようとはしなかった。彼は十席の第八席にして皇族四男である。大東洋吸血鬼帝国軍南米大陸戦略司令官である。歳は美寿穂と同じ十五歳である。論理的思考をしている。真っ白の髪を持ち緑の瞳を持つ。国連軍からは“南米の支配者”と呼ばれている。階級は准将。


 家族の談話は一つの音によって終わりを告げる。〈皇族室〉の扉が開かれる。すると、今度はホログラム投影された人物ではなく生身の人間―――ヴァンパイアが二人現れた。一人は帝国軍の制服だが一般将校の灰色の制服でなく、真っ赤な制服を身に着けている若い女性だった。そしてもう一人の人物は、こちらも同様に軍服を着ているがその色は漆黒に塗られていた。二人が部屋の中に完全に入ると扉が閉められた。二人は隣り合って円卓机と共に設置されている席に着いた。すると、今まで談話をしていた彼らが一斉に立ち上がり、遅れて来た二人に敬礼をし、再び着席した。


 「みんな元気にしていましたか?」


 「「「「「「はい。兄さん」」」」」」


 「それは良かった……」


 微笑を浮べながら彼らの元気な姿に安堵する。彼、武蔵野日向は大東洋吸血鬼帝国初代皇帝である。十席の第一席にして皇族長男で、先程もいったが彼がこの戦争を起こした張本人である。歳は二十歳。切れ長で薔薇色の瞳を持ち黒茶色の髪を持つ。


 「それで、皐月。秀一と佳純はどうしていましたか」


 「はい、陽菜姉様。御二人ともお元気にしていましたわ」


 「そうですか。それなら良かった」


 「でも、日向兄様、陽菜姉様……。二人をこちらに連れ帰ることは出来ませんでした」


 霧島きりしま 陽菜はるなは二人が健在なことを確認すると、それだけで満足する。彼女は大東洋吸血鬼帝国軍本土及び周辺諸国・豪州攻略司令官にして、帝国軍の総指揮官である。階級は元帥。柔らかな金色の瞳を持ち、佳純と同じく真黒な髪を持つ。歳は日向と同じく二十歳。聖女の様な清らかな性格をしている。


 日向は口を開いた。すると、それまでの家族団欒な空間から一転した。そして、武中将が起立した。


 「秀一と佳純の事は置いておいて、各地域の戦略司令官は報告をお願いします。欧州方面司令官の武中将」


 「はいよ。我が欧州軍はディアスパーティー付近までの地域を攻略していますが、……先日のディアスパーティー戦では……屈辱の敗北を喫してしまいました。誠にすみません。しかし、こちらの被害は微少で戦死した者は居ません。ですが皇帝陛下の【ギガス級】を失ってしまいました。かさねがさね申し訳ありません。これからの進攻には若干の変更が生じましたが、概ね計画に変更はありません。今年中、早ければ五月中旬から下旬にはシューベンベルグパーティーを攻略したいと思っています」


 「分かりました。無理はしない様に。では次に北米方面司令官の美寿穂准将」


 武中将が現状報告をすると着席し、次に美寿穂准将が起立して報告を開始した。それからは順に報告をする。


 「北米大陸軍は現在旧カザール国とアガスト合衆国の国境付近まで戦線を伸ばしています。しかし、アガスト合衆国軍と国連軍の防衛網がかなり強固で現在も進行に手間をかけています。しかしながら、あと少しでこの防衛網も崩せます。ですのでもうしばらくお待ちください」


 「はい。我が軍は南米大陸のほとんどをその手中におさめました。残すは中米を攻略するだけです」


 「僕たちの中東とアフリカに向けた軍隊は次々に雑魚どもを一掃しているよ。でも、敵の石油地帯は中々落とせなくてね。今も攻略中。終わったら石油を一杯日向お兄ちゃんに送るね!!」


 「一応私からも。現在本土及びその周辺の占領は完璧に実施できていますが。現在も敵の残存勢力はいます。ですが、然程脅威にはなっていません。現在本土の一部隊をオセアニア州を攻略するために部隊を編成しています。私の方からは以上です」


 全員がそれぞれの状況を報告し終えると最後に日向が口を開いた。


 「君たちのおかげで着実に人類からこの地上を解放できています。私は今年の建国五年目の式典で人類に対し再び正式に宣戦布告します。これはすべて全ヴァンパイアの解放と地球上を汚染するだけしか能の無い人類の殲滅の為です。ですから、あともう少しだけ君たちの力を貸してください。そして、それが報われた時。私達()()()()()が実現します」


 「「「「「「了解しました」」」」」」


 そして全員がその場に立つとそれぞれが保有する()()()()()を手にとり掲げる。そして、宣言した。



 「全てのヴァンパイアを解放する為に。帝国旗を掲げよ」



 戦争は今だ終わる気配を見せないでいた……。

 どうもどうも、夏月 コウです。


 今回は帝国、特に十席の面々が全て出て来た回です。しかし、秀一と佳純には兄弟姉妹が多いですね。みんな個性豊かな人物ばかりだと思いますが。どうでしたでしょう?


 次回はついに最終回です。


 では、また次回に。ではでは

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