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進化し人類の名はヴァンパイア  作者: 夏月コウ
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第二十七話 最強の伝説の始まりの戦い 崩壊編

 【帝国】が作戦の開始を発令し【ギガス級】を進軍させた一時間後くらいの事、アリスは病院を退院した秀一と佳純をディアス城にある第一会議室に呼び寄せていた。だが彼女の姿はまだこの会議室にはない。彼ら二人は官僚が決まって会議になると鎮座している座席に並んで着席している。


 アリスさんはなぜ自分たちをこの場に呼んだのだろうと、考えを浮べつつリラックスしながら一時を過ごしていると第一会議室の扉が開かれる音が響く。秀一はすぐさま座席に座る体制を正しその人物に目をやった。


 その人は秀一達を招集したアリスだった。彼女は決まって会議の際に座っている代表席に腰を落ろす。秀一は単刀直入に彼女が自分たちを呼んだ経緯の説明を求める。彼女は少し眼をきょろきょろさせて躊躇ったのち口を割った。


 「本日御二人を呼ばせていただいたのは他でもありませんが【帝国】についてなのです。先日の日曜日、私の私室のバルコニーに一人の男が現れました。その人物は【帝国】の司令官長門武と名乗っていました」


 「長門武ですか……!」


 「はい。その様子だと彼の事は良く知っていらっしゃるご様子ですね。………今回、彼が私の私室に現れた理由は帝国に対して()()()()()をしろとの事でした」


 アリスは少し俯きつつ答えた。秀一と佳純は驚きを隠せないでいた。それは【帝国】がディアスパーティーに降伏を要求したこともあるが、そうではなく長門武がアリスさんと会っていた事にだった。つまりこのディアスパーティーは既に敵の侵入を許していることになるのだ。それはディアスパーティーの防衛網が役に立っていないということだ。そして恐らく彼がアリスに接触したのは自分との戦闘後の事であろう。と、思うのだった。


 「それで、アリスさんは【帝国】の降伏を承認するのですか?」


 「いいえ。それは断じてあり得ません。私は例えこの身が犯されようともテロリストの要求は飲みません!」


 「それでこそアリスさんです。私も微力ながらもアリスさんの手を貸します」


 秀一と佳純は頷き合いつつ手を貸す事をアリスに宣告すると、次の指示を要求する。


 「それで、アリス。俺と佳純は何をすればいいんですか?」


 「それではお二方には………」


 アリスは言葉にしようとした時だ。会議室の扉が大きく開かれたのだ。アリスの秘書官をしているマリアだった。彼女は何時クールな様子をしているが、今回は違った。焦った様子でアリスに現状を報告した。


 「大変でございますアリス様。アンデットが! アンデットの大群が本パーティーに侵攻してきました。現在西城壁門から侵入を開始しております」


 「な、何ですって!アンデットが! 分かりました。マリア、すぐに市民の避難壕への避難を開始させてください。参謀本部は召集し対策会議を開かせてください。秀一様、佳純様は今すぐにアンデットの侵攻を食い止めてきてください。お願い致します」


 秀一と佳純にアリスは頭を下げて頼み込む。秀一はすぐに返答を返した。


 「了解しました。自分たちに出来ることがあれば何なりといってください」


 「ありがとうごさいます。それでは。マリア、行きますよ」


 「はいアリス様」


 彼女らは早足で会議室を飛び出していった。残された秀一と佳純はお互いの顔を見合わせながら次に行うことを決める。


 「俺たちはアリスに言われたとおりにアンデットの掃討に向かうぞ」


 「うん。分かったわ。でもシュウ、身体は大丈夫なの?」


 「まだ痛む所はあるが、戦闘に差し障る程じゃない。それじゃ行くぞ! 場所は西城壁門の住宅街だ」


 首を縦に振った佳純を見た秀一は、駆け足で会議室を出ていく。無論佳純もそのあとを追った。




              * *




 秀一達がディアス城から出て来た時には既に【ギガス級】によって西城壁門の防衛線は突破されていた。現在もなおアンデットの侵入は続いている。いや止める事などできないでいた。何もできずただ喰われるだけの西城門周辺地域の人々と、東西北の駐屯地から派遣されてきた兵士たちがアンデットの進攻を阻止しようとする姿が西側地域にあった。そして現在もその感染地域は更に大きくなっていき、既に西側地域だけではなくなっており留まる所を知らなかった。


 「ごれで西側地域に向かうのはいいけど。どう対処するのシュウ?」


 「それはその場次第だ。まず現場に着いてみないと分からない。が、決まっている事はある。それは、このパーティーの住人を救う事。その為にアンデットを一掃することだ」


 「分かったわ。今はそれだけでいい」


 秀一はディアス城で借りたジープのハンドルを握りながら、佳純に自分たちがやらなければならないことを諭す。佳純もまたそれに疑問を持つことは無かった。


 ジープで走らせていると両側の街道沿いには恐らく西側地域から逃げて来た人々が増えてくる。秀一が走らせている道路には同じ方向に走行している一般車両はないが、片側の車線には列を成した一般車両が渋滞で動けなくなっていた。


 そして更に数分走らせていると街道には侵入してきたアンデットが確認された。アンデット達は今だに逃げ遅れた人たちを襲い、喰らう。秀一はその情景を目にすると頭に血が登る感触を感じた。すかさず佳純に指示を出す。


 「佳純!今のうちに銃器を展開しておけ! さっきマリアさんを通してアリスから連絡があったんだが、この先に防衛線が築かれているらしい。俺たちは今そこに向かっている」


 「でもさっきから少なからずアンデットがいるけどこれって突破されたってことじゃないの?」


 「いや、突破されたにしてはアンデットの数が少なすぎる。恐らくここにいるアンデットは先回りした奴らだろう」


 「それってやっぱり突破されているってことじゃないの……?」


 【軻遇突智かぐつち】を二丁拳銃に変換しながら佳純がいった言葉を秀一は流すと更に続ける。


 「かも知れないが、この先が突破されたらどうにもならんだろ。……大丈夫、アリスならきっと先回りしたアンデットの対処もしてくれるはずだ。俺たちが今からしなければならないのは、どれだけアリスの負担を軽減させるかだ」


 「うん。分かっている。ここは私たちの()()()()()なのだから。ここを失う訳にはいかないものね。頑張るよ」


 「いいぞ佳純、その意気だ。………見えた!! すぐに降りれるようにしておけ」


 道の先には複数にバリケードが施され、数両の戦車が道を塞いでいた。兵士たちが所持する銃器からは常に発砲が繰り返され、時にはロケットランチャーの弾頭がロケット推進で飛翔し、固まったアンデットの群団に撃ち込まれる。そのアンデットたちは身体をバラバラに吹き飛ばされる。傍から見たら酷い様にも見えるが、今の兵士たちにはそんな感情は起きない。むしろ嫌悪と憎悪が入り混じった感情が彼らを支配している。


 秀一はジープをバリケードの数メートル前に止まると二人はジープのドアを開き、それを閉める事無く走り出す。秀一は拳銃を取り出し、手近なアンデットの頭を撃ち抜く。佳純も同様だ。二人は兵士たちの間をすり抜けて先方に躍り出た。兵士たちは何が自分の横っ面を通って行ったのかを理解できずキョトンとしていた。


 秀一は自分の所持する拳銃の銃弾が撃ち終わるとホルスターに戻し【悪鬼神火】を抜刀する。秀一は止まることなく確実にアンデットの急所である首を斬り落すか、或いは頭を割ったりして無力化する。秀一は更にアンデットの敵中に突撃する。佳純は白兵戦を繰り広げる秀一が対処できなかった、彼の危険な位置にいるアンデットを屠り、また自分にも危険が及ぶとそれも対処する。兵士たちは唖然としていた。何だこれは……とあんぐりと空いた口が塞がらないでいる。


 秀一は進撃を止めることはない。端から見たらあんなに動いているのによく疲れないなと思わせるほどに行動を止めようとしない。少年と少女が戦闘に介入してから、兵士たちが苦戦していたアンデットの群団は見る見るうちに殲滅されていく。


 アンデットの群団が最後の一つの群れになるよう追い込むと秀一はかたを付ける。【悪鬼神火】を横凪ぎしたのだ。


 「〈九頭竜院流剣術一ノ型・烈風〉」


 放たれた魔力で圧縮した空気はアンデットの一群を凪ぎ払った。アンデット一体一体の身体はバラバラに砕けちり、辺りはアンデットであったであろう物体が残されるだけになった。


 その光景を目にした殆どの兵士が思ったことであろう。アンデットよりも恐ろしいのはコイツらなのではないか、ということを。秀一は【悪鬼神火】を鞘に納めると、この場の現場指揮官であろう兵士の元に近寄る。


 現場指揮官の兵士は自分の目の前に現れた化物しゅういちに一瞬怯んだ。秀一はうん?と少し首をかしげるがそれは側に置いて言葉にした。


 「ここら辺のアンデットは粗方片付けたと思います。自分たちはこれからもっと西側地域に進んでいきますが、あなた方はこれからどうするつもりですか?」


 「……あ、ああ。俺たちの部隊はこのまま防衛線を上げるつもりだ。まあ、これも君たちのお蔭でもあるのだがね。私が言える立場でもないが、頑張ってくれ」


 「はい。そちらも気を付けてください」


 軽い対談の後、秀一と佳純はジープに戻りそのまま走り去っていった。兵士たちはそろって彼らをヒーローとだ思っていた。


 「隊長、凄いですね。彼らはたった数分であれだけ俺たちが苦戦していた奴らに勝ったのですから」


 「ああ。あれが彼らハンターの力か。よし、みんなこのまま我々の隊は防衛線を押し戻すぞ。彼らの努力を無駄にするな」


 「「「「「おおお―――!!」」」」」




              * *




 アンデットの侵入が始まって一時間ほどが経ったころ、既に夜の帳は降りていた。西側地域の中心部では多くの場所で出火が相次いでいた。普段なら人工の光が街を映し出しているのだが、今夜は炎がその代わりをつとめていた。


 全方向にアンデットが必ずいる状態の場所に、秀一と佳純は自ら飛び込んでいく。アンデットは秀一が選んでいなくても近くに寄ってくる。戦争は数だ。と言うが、秀一と佳純にはそんな理論は通じない。何故なら彼らはこの戦場の中で最も頂点に立つ存在だからだ。秀一と佳純はこの戦場に到着してから既に三つのアンデットの一群を葬っている。無論これはどちらかが欠けていては出来ない事だ。つまる所彼らは二人で一つの軍隊と言っても過言ではない。しかしそんな二人《軍隊》にも限界はあるが……。


 「佳純!次も援護頼む」


 「了解!!」


 アンデットに突っ込む秀一とそれを援護する佳純の一体感のある動きは、アンデットが一掃されていく様子を際立たせる。アンデット一体に要する時間は一秒もない。それどころか一太刀で二体三体と斬り捨てていく。まさに神業だ。最後の一体を屠った。


 

 ―――銃声の後の剣劇。



 銃弾は秀一に向かうが佳純の銃技で撃ち落とされる。次の剣技を同じ技で相殺する。


 「「〈九頭竜院流剣術一ノ型・烈風〉」」


 秀一は一気に佳純の居る所まで跳躍する。すると二人の人物が姿を現した。


 「三日ぶりだな。兄さん」「佳純お姉さま。お元気で何よりですわ」


 「長門 武……山城 皐月……」


 

 「さあ、二回戦といきますか!!」


 

 両陣営の戦いは再開された。

 どうもどうも夏月 コウです。

 

 最強復活!!


 秀一と佳純改めて言いますが……貴方たち強すぎ!!?皆さんはどうでしたか?今回も楽しんでいただけたのであれば幸いです。


 次回の崩壊編もお楽しみください


 ではではまた次に。

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